ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「グラン・トリノ」の感想,あらすじ

グラン・トリノ

2008年のアメリカ映画。日本では2009年公開。原題『Gran Torino』。監督,プロデューサー,主演 クリント・イーストウッド。

 

(C) 2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

昔気質のアメリカ人の老人が隣に住むアジア人の若者と出会い,彼らを世話することで,考え方を改めていく話。

あらすじ

ポーランド系アメリカ人のウォルト・コワルスキーは,若いころに軍人として朝鮮戦争で戦い,それから50年間フォードの工場で働き続けた。彼は戦争から帰って来てから素敵な女性と結婚し二人の息子が生まれたが,退職後の生活は彼にとって気に食わない事ばかりだった。

 

長男が日本車のセールスマンになったこと,孫娘の服装,家の周りがアジアからの移民ばかりになったことなど,昔気質なウォルトはそんな周りの変化が気に入らなかった。そして彼の息子たちも,いつも小言ばかりで頑固なウォルトのことを面倒に思っていたのだ。

長年連れ添った奥さんが亡くなった葬儀の日も,奥さんの知り合いでウォルトを心配する神父に対して,冷たい言葉を言って突き放した。

 

ある日の夜,ウォルトはガレージからの物音で目を覚ました。ガレージに誰かが忍び込んでいると気付いた彼は,銃を持って急いでそこに向かった。大事にしている72年型グラン・トリノを守るために彼は忍び込んだ人間に銃を突きつけたが,逃げられてしまう。

次の日の夜,彼の隣の家にストリートギャングがやって来て,アジアからの移民のその家の者たちと騒ぎを起こしていた。ウォルトは自分が手入れした芝生を踏み荒らす彼らが許せなかったため,銃を突きつけて脅し,喧嘩を止めた。

 

そして次の日の朝,ウォルトが家から出ると,近所の移民の人たちが彼の家の前に花や食べ物などたくさんの贈り物を置いていた。隣の家族が言うには,ウォルトが昨晩彼らの息子を助けたからだそうだ。

隣の家の息子はタオという名前で,彼のグラン・トリノを盗もうとした犯人だった。彼はギャングの命令でグラン・トリノを盗もうとしていたのだ。謝るタオに対しウォルトは,もう一度忍び込んだら終わりだ、と言いきかせて家に入った。

 

その後ウォルトは隣の家の娘 スーとその母親に,車を盗もうとした償いとしてタオを働かせるように頼まれた。ウォルトは気弱でとろそうなタオを働かせたくないと言ったが,強情なスーと母親に負けてそれを受け入れた。

ウォルトは近所の壊れている家の補修を彼にやらせた。自動車工をやっていたウォルトはタオに修理のやり方などを教えていくことで,他のいろんな面倒を見ていくことになった。ガーデニングや男らしい会話の勉強,そして工具ベルトなども買ってあげて,建築の仕事をタオに紹介した。

しばらくすると彼らはすっかり仲良くなっており,ウォルトはタオのデートに大事なグラン・トリノを使わせるほどに彼を信頼していた。

 

タオの仕事も決まり,彼らの生活はうまくいき始めたかのように見えた。しかし,ある日の仕事帰りにタオは,再びギャングに絡まれて怪我をさせられ,ウォルトに買ってもらった工具も壊された。ウォルトはその仕返しに,ギャングの仲間の一人をタオに二度と近づかないように銃で脅した。

ウォルトは,それでタオとギャングの関係を絶ったと思ったが,そのウォルトの行為はその後更なる被害を生むことになった。

 

自分の行動を後悔したウォルトは,決着をつける準備を整えてギャングたちの元に向かうのだった。

感想(ネタバレあり)

ストーリーについて

偏屈なおじいさんが子供と接することで優しくなっていくという,一見よくありそうな話でしたけど,最後のウォルトの行動が彼のそれまでの人生や,タオたちの未来を思わせるものになっていて,とても深く考えさせられました。

 

いろんな人を銃で脅したことや,朝鮮戦争でのことなど,あんまり良くないことで褒められてきた,彼なりのけじめだったんじゃないかと思いました。拳銃や武器の力に頼って来たウォルトですけれど,そのせいで周りの人が被害にあったことで,最後はそれに頼らない解決の仕方を選んだのだと考えました。戦争で人を殺した経験があって,その後に感じるひどい気持ちを知っている彼だからこその行動だったと思います。

 

ウォルトはタオにそんな嫌な気持ちを感じさせないためや,彼が捕まらないためにあの行動をしたのでしょうけど,ギャングたちを警察に逮捕させたことも良いことだと私は思います。

タオにお前の人生はこれからだとウォルトが言ったように,ギャングをしていた彼らの人生もこれからなんですよ。ウォルトが年を取っても若い頃のことを後悔し続けていて,タオたちに会って考えを変えたように,彼らも同じように今回のことを後悔して心を入れ替えるかもしれないんです。まだ若くてその可能性がある彼らを殺す権利なんてウォルトにもタオにも無いわけですから,タオの明るい未来を望んだウォルトが,彼らを殺すという決定をしなかったことは良かったなと思いました。

年寄りのウォルトがタオと出会って変わったように,人間は何歳になってもきっかけさえあれば変われるものだと思います。殺したいほど憎んでいたタオを,ウォルトが止めたおかげで生き延びることができたのですから,ギャングの彼らにはウォルトのように改心して欲しいなと思います。

キャラクターについて

序盤のウォルトは,差別的な発言やジョークをすごく言っててイメージはちょっと悪かったです。でも悪いことや汚い言葉を使いながら,優しい行動をしている彼を見てだんだん好きになっていきました。

ウォルトが最後まで,タオのことを無理に子ども扱いしたり甘やかしたりしないところが私は好きでした。普通は子供の前だと,悪影響を与えないように良い言動をするように心がけますけど,全然そんなことをしなくて普段通りにふるまっているところは,何にも媚びている感じが無くて,渋くてカッコ良かったです。子供や孫みたいな雰囲気にもならず,タオを子供ではなく,対等な一人の人間として見ているところもいいなと感じました。

それから,老眼鏡をかけて新聞を読むシーンはすごく老けて見えるんですけど,拳銃を持つとやっぱり怖くてさすがだなと思いました。

 

ウォルトも優しくてよかったんですけど,私はスーも良いキャラクターだったなと思います。

独特な風習のある民族で育ってそれを理解していながら,その伝統とは違うアメリカの一般的な文化も受け入れられているところが,すごく柔軟で賢い女の子だなと感じました。違う人種で差別的な発言をするウォルトにも,偏見を持たずに上手く付き合えててすごいなと思いました。

偏見を持たずどちらとも仲良くできて,風習をうまく説明できる彼女みたいな存在が,異文化を繋ぐきっかけになるんでしょうね。しかし,スーがとてもいい性格の女の子だったので,ギャングの仕返しのシーンはとても衝撃でした。タオの気持ちも分かりますし,ウォルトの気持ちも分かりますし,客観的に見ているので神父の気持ちも分かって,それからどうなっていくんだろうと,とても不安な気持ちになりました。

それから,スーの日本語吹き替えの声はすごく好きでした。

 

彼らを見ていて,やっぱり表面的なイメージで相手を決めつけることは良くないなと感じました。ウォルトがそうだったように,最初のイメージが悪いからと言って,全部悪いとは限りませんね。ウォルトとモン族の人がパーティで仲良くやっていたみたいに,付き合ってみると意外とうまくやれたりするんだと思います。もちろん人によって合わないこともありますけど,スーのように偏見を持たずに,まず相手を知ろうとすることが,異文化と上手くやっていくためには大事だなと思いました。

教育について

この映画の主人公のウォルトは,あんまり良くない言葉づかいをしていました。それを子供たちが真似をして,元々やっていた本人のウォルトが注意していた場面が,私はとても印象に残っています。

 

そんな彼を見て,彼みたいな悪い言葉づかいで子供と接するような人も,少しは必要なんじゃないかなと思いました。彼みたいな悪い見本を見せることで,子供は世間にそういう人がいるという事が分かるし,そんな言葉を使って注意されることで初めて,良いことと悪いことの区別がつくのだと思います。

教育に大事なのは,悪いことを子供から隠すことではなくて,子供にそれが悪いと認識させることだと思いました。

 

ウォルトは確かに昔,戦争で人を殺したし差別的な考え方をしていたかもしれませんけど,それを若い人に隠していたらそれを変えようとする考えは生まれませんよね。まず悪いことを知らないと,それを無くそうとは思えませんから。ウォルトのように自分がしたことを悪いと認めたうえで,これからの人に見せてこんなことをするべきではないと注意しないと,きっといずれ同じことを繰り返すと思います。

親や世間が,そんな悪いことを教えてくれる人や情報を,少しでも悪影響を及ぼすものとして子供から遠ざけ続けていたら,根本的なものは無くならないし,むしろ悪化するかもしれないです。

 

何が言いたいのかというと,子供に悪影響だからといって何でもかんでも規制しないでください,という事です。子供に悪影響だと判断した人たちがなぜそう思ったのかというと,それを知っているからなわけですよ。子供世代にそれを隠したままにすると,今度は孫世代に教える人がいなくなりますよ,という事です。規制して隠すより,見せてそれがなぜ悪いことなのかを教えないと,将来的に意味がないと思うんです。

それに子供に悪影響だというのなら,表面的なイメージで規制するのではなく,ちゃんと調べてから規制するべきだと思いますよ。この映画で言うと,ウォルトが使う差別の言葉が相手と仲良く接するための冗談であったように,イメージが悪くても子供の将来に必要な知識というのはあると思います。そういうことを調べないと,規制自体が子供に必要な知識を奪う悪影響なものになっていくと私は思います。

 

もちろん程度はあります。程度が一番難しくて一番大事です。

この映画でも,ウォルトが仕返しをやりすぎたせいでスーが被害にあったとも見れますから。でもそれが面倒だからって,全部OKだったり全部NGにしてしまうと,後々大変だと思います。

何にしても,相手にとって良いことを考えることが大事だと思います。

まとめ

昔気質のウォルトがタオやスーと出会って,優しくなっていく様子は安心して見れましたけど,クライマックスの展開は彼の人生に関わるもので,とても重くて考えさせられました。何歳になっても人は変われると思います。彼のように子供でも一人の人間として,しっかり向き合える人は,やっぱりかっこいいです。

何でも表面的なイメージで決めつけるのは良くないです。これからはもっと相手のことを知ってから判断しようかなと感じました。

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