(500)日のサマー
2009年アメリカ映画。日本では2010年公開。
(C) 2009 Twentieth Century Fox
運命なんて信じない女性と,彼女に恋をした運命を信じる男性の話。彼らが出会った日から500日目までの二人の様子を描く。
あらすじ
1日目
主人公は,ニュージャージー出身でグリーティングカードを書く仕事をしているトム・ハンセン。彼はイギリスのポップスに染まった影響で,運命の人に出会うまで本当の幸せは来ないと信じて育った。
ヒロインは,ミシガン州出身のサマー・フィン。彼女には運命を信じる気持ちは無かった。
トムがサマーに出会ったのは,1月8日。その瞬間彼には分かった。彼女こそ運命の人だと。
これは彼と彼女の物語。あらかじめ言っておくが,ラブストーリーではない。
290日目
トムの妹が彼の友達に呼ばれて,トムに会いに来ていた。彼は何かショックなことがあり,皿を割りまくっていた。
彼が言うには,サマーとすべてうまくいっていたのに,「気持ちがすれ違っているから,もう会わない方がいいと思う」といきなり言われたらしい。
友達や妹は「次の女を探せ。海には他にもたくさん魚がいる」などと言って励ましたが,トムは「諦めたくない,よりを戻したい」と言った。
1日目
会議に出ていたトムは上司の新しい秘書として,サマーを紹介された。
3日目
トムはサマーが嫌な女だという噂を聞いた。顔は可愛いが,お高くとまった高慢な女で,そんなやつどうだっていいと思った。
4日目
トムはエレベーターでサマーと二人きりになり,話しかけられた。音楽の趣味が合うことが分かり,彼女に運命を感じるようになった。
154日目
トムはサマーに本物の恋をしていた。「彼女の全てが愛しく思えて,彼女を思うたびに彼女が好きな曲が流れる。そして,人生には価値があると思える」とまで言っていた。
22日目
トムは落ち込んで,「僕とサマーは終わりだ」と友達に相談していた。
エレベーターで二人きりになった時,週末はどうだったと聞いたら彼女は「サイコーだった」と言ったことから,トムはほかの男と楽しく過ごしたに違いないと思い,彼女は自分に気がないと決めつけていた。
28日目
サマーを含めた社員全員でカラオケに行き,トムは彼女と話した,彼女は恋人がおらずほしくないと言っていた。誰かの所有物になるのはごめんで,付き合うなんて面倒だと。
愛を信じないサマーと,愛を信じるトムは意見が合わなかったが,他の話題では楽しく過ごせたため,その日別れる時に二人は友達になった。
31日目
職場のコピー室で彼らは二人きりになった。トムはサマーに話しかけようとしたが,急に彼女にキスされた。
282日目
二人は家具店に来ていた。トムは自分の家のようなリアクションで彼女にふざけて見せていたが,無視された。
34日目
家具店に来た二人。ソファに座って自分たちの家ごっこをしてふざけあって,いちゃついている。楽しく過ごしていたが,サマーはトムに
「真剣なお付き合いは求めていないの。それでもいい?」
と聞いた。彼は戸惑っていたが,彼女に合わせてそれでいいと答えた。
彼女と楽しい日を過ごした彼は,いつも通る道がとても楽しく素晴らしいものに感じた。
95日目
彼らは二人で仲良く街を歩いていた。建築家を目指していたトムは,彼女をお気に入りの場所に連れて行き,そこのベンチに座って見える建物についての話をした。
109日目
トム・ハンセンにとってこの夜からすべてが変わった。サマーの家に招かれたことにより,二人を隔てていた気楽という名の壁が,崩れ始めていたのだ。自分だけしか聞けない話をしてくれた彼女を見て,彼はそれに気づいた。
118日目
彼はサマーとのはっきりしない関係のことを妹に相談した。妹は「兄貴は彼女に確かめたいけど,答えに失望してこの数か月の幻想を打ち砕かれるのが怖いんでしょう。弱気にならないで」とトムにアドバイスした。
妹に励まされたトムはサマーに自分たちの関係のことを聞いたが,彼女ははぐらかして,ちゃんと答えなかった。
259日目
自分たちの関係について何も答えないサマーに対して,トムは怒って二人は喧嘩してしまう。
彼女が謝りに来たことで二人は仲直りして,今まで通りの恋人のような話をした。
191日目
美術館に行っていたが二人とも理解できず,映画を見に行って楽しく過ごした。
314日目
サリーは隣におらず,トムは一人で映画を観た。
322日目
トムはサマーが嫌いだと言った。彼女の全てが嫌いで,彼女が好きだった曲も嫌いだと言った。
345日目
トムは紹介された女性とデートをしていたが,まだサマーが好きなのでこれっきりだと女性に言った。
彼女と過ごした時間を思い返してどこですれ違ったのか考えてみたが,はっきりした答えは分からなかった。
450日目
トムはサマーと離れたことで,妹に励まされた。妹の
「サマーのこと運命の人だと思ってる?違うよ。今度思い出すときは良く考えた方がいい」
という言葉を聞いて,彼はサマーとの間に起こっていた事実に気付く。
感想(ネタバレあり)
ストーリーについて
日常生活で起こることに運命や奇跡のように大した意味なんて無いから,深く考えずに楽に暮らそうと思える映画でした。
パッケージの見つめあう二人の写真を見て,
この二人が恋に落ちて,結局運命感じて結婚したりするのかな
とか思っていたら大間違いな映画でした。でも,いい映画でした。
二人が合わなくなった後と,仲良くなっていく過程だけを見せていって,その間を見せないことで,トムが何で振られたかがすごく気になる展開になっていました。
ただ,トムが回想してますから,全然サマーに距離を置かれる要素が無くて,途中ではサマーは自分勝手な人だな。と思っていました。しかし終盤では,トムが良く思い出すと,いろいろと価値観があっていなかったり,すれ違っている部分もあって,サマーの行動は当然だったなと思い直しました。
自分が好きな人とのことを思い出すのに,悪いことを思い出そうとはしませんから,仕方がないのかもしれませんけどね。
終わってみると,勝手に自分がすごく彼女と気が合ってると思ってた勘違い男の話でした。
男の人と女の人ってこういうことがあるってよく言いますよね。男の人は意外とロマンチストで,別れた後しばらくは前の相手を引きずるけれど,女の人は別れると割とすぐに立ち直るみたいなことです。
例えばおじいさんとおばあさんになるまで夫婦だった人で,奥さんに先立たれた旦那さんはショックでふさぎ込んでしまって,早く亡くなってしまうけれど,旦那さんに先立たれた奥さんは意外とすぐに立ち直って,その後の人生を楽しんで,長生きするケースが多いと言う話を聞いたことがあります。
こういう話もあることから,やっぱり運命とか奇跡とかは,そんなに深刻に考えない方がいいと思いました。
この人と会ったのは運命で,いなくなったら生きていけないと思うよりも,運命なんて無くて,今の相手と会ったのは単なる偶然で,たとえ今の相手がいなくなったとしても,他の相手や他の楽しいことができるだろうと考えるほうが,前向きでいい考えですよね。
私もこれからはそういう考えでいこうかなと思いました。
それから劇中で言っていたように,確かに歌謡曲や映画などが,日常生活に深い意味を思わされるきっかけになっているのかなとは思いました。
「誰かのために生きている」とか「誰かを守るため,そのために生まれてきた」とか,そんなことを本気で言っている人がいたらこれからは,生まれてきたことに大した意味なんて無いんだから,難しいこと考えずに,死ぬまでなるべく楽しく生きようよ,と言ってあげようかなと思います。
あと,ラストシーンでトムが偶然出会って話しかけた女性の名前が「オータム」だったのも面白かったです。運命を深く考えすぎるには良くないですけど,この関連する名前の女性に出会ったことは運命なのかと思いましたね。
彼女に出会って「1日目」という文字が出てくる演出も良かったです。何よりもトムが前向きになってくれたみたいで良かったです。
キャラクターについて
トムの妹がすごくいい役だったと思います。
「キック・アス」のヒット・ガール役をやっていたクロエ・グレース・モレッツさんが演じていて,とても可愛かったです。しかし可愛いのにお兄さんにしっかり考えるアドバイスをして,すれ違いに気付かせるきっかけを作ったり,励ます言葉をかけてあげてたりしていて,彼女の優しさと頼りになる姿が見られたのが良かったです。
それから名前が分からないんですけど,トムの友達役も良かったです。10代のころから同じ人と一途に付き合っている人です。彼が中盤で理想のタイプについて語っていたセリフにちょっとドキッとしました。次のセリフです。
細かいことを言えば,僕の理想のタイプの女っていうのは,かなり巨乳なんだよな。それで髪型もこう,もうちょいスポーティな感じでさ。だけど,正直言って,ロビンは理想の女なんかよりずっといい。本物だ。
「(500)日のサマー」のセリフ
このセリフは,結構いいと思います。だって,自分の頭の中で描いた理想よりも,恋人の方がいいって言ってるんですよ。
こんなことを好きな人に言われたら男性でも女性でもきっとドキッとすると思いますよ。
私もこんなこと言われてみたいと思いました。
まとめ
パッケージを見ると,普通のラブストーリーっぽいですが,全然違いました。しかし,今の状況について難しく考えず,楽に前を向いていこうと思わせられるいい映画でした。
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