アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜
2013年のイギリス・アメリカ合作映画。
(C) Universal Pictures
過去に戻る力を持った男性が,何度もその力を使ってやり直しているうちに,人生の大きな秘密に気づいていく話。
あらすじ
主人公ティム・レイクは,気になる女性にはあまり積極的になれないが,普通の心優しい男性である。
彼は両親と妹のキット・カット,それからおじさんのデズモンドの4人で21歳になるまで平凡で幸せに暮らしていた。
21歳のある日,彼は父親に呼び出された。心して聞いてくれと前置きしてから,父親はこう言った。
「我が家の男はどういうわけか奇妙な力を持ち合わせており,それは一族の秘密といえる。その秘密というのは,我が家の男は時空を旅できることだ。」
その話を聞いたティムは父親の笑えない冗談かと思ったが,父親もその兄弟も過去に行っていたということを話し始め,冗談ではないと言い張るため,そのやり方を聞いた。
父親が話したやり方は実に簡単だった。タンスやクローゼットなどの暗いところに入り,こぶしを握り締めて戻りたい時間のことを考えるだけ。目を開けると過去に戻っているらしい。
まだ信じていなかったティムだったが,それを試しにやってみると,過去にも戻ることができた。彼は大みそかのパーティの日に戻り,近くにいた女の子とキスをして元の時間に戻ってきた。
頭が混乱しているティムに父親は,
「この能力は心からののぞみを叶えるために使うんだ。」
と話し,ティムは彼女がほしいというのが一番の望みだと父親に告げた。
そしてその夏,出会いが待っていた。
その女の子はシャーロット。キット・カットのハンサムだけど嫌な彼氏ジミーのいとこで,彼女が2か月間彼の家に滞在することになったのだ。
ティムは彼女との生活でうまくいかないことがあったら,過去に戻ってやり直しながら,2か月間を過ごした。
そして,彼女と別れる前日の夜に告白をしたが,最後の夜に言うなんて付け足しみたいで男らしくないと言われて断られた。それを言われた彼は,すぐにクローゼットに入りシャーロットが来てから1か月の日に戻って告白した。しかし彼女は,
「8月が過ぎて私がいなくなる前の晩にもう一度してくれないかな?」
と言って断った。
彼が敗れ去ったこの恋から学んだことは,
過去に戻れても人の気持ちは変えられない,ということだった。
そして次の日,彼は未来と彼女を探すため,実家を離れてロンドンに引っ越した。彼は父親の友人で劇作家のハリーの家に下宿することになった。
しかし,ロンドンでも出会いは無かった。彼が働くことになった法律事務所は男ばかりで,弁護士として昼も夜も働く日々で忙しかったのだ。
ところが思いがけずミラクルが起こった。いつもはつるまない同僚と行ったレストランでメアリーという女性に出会った。おとなしめで優しい二人は気が合って話も盛り上がった。そして別れ際に電話番号を交換し,また会う約束をして帰った。
ティムが上機嫌で家に帰ると,ハリーが何やら騒いでいた。彼が書いた演劇の初演が,主演俳優のセリフ忘れで失敗したらしい。ひどく落ち込んでいたハリーを見てティムは,過去に戻って公演を見に行った。そして俳優にカンペを見せることで劇を成功させることができた。しかし,劇を見に行ったことで同僚とレストランに行った過去が無くなってしまったため,彼の携帯電話からメアリーの番号が消えていることに気付いて,ティムは落ち込んでしまう。
翌日の新聞で,メアリーが大ファンだと言っていたモデルの写真展があることを知り,きっと彼女が来るはずだと思ってティムは,何日もそこで彼女を待った。
そして彼女は来た。彼のことを覚えていない彼女と再び出会い,仲良くなったティムだったが,前に会った時にはいなかったはずの彼氏が今の彼女には,いることを知る。
そこでティムは,メアリーが彼氏と初めて出会った1週間前に戻った。メアリーと先に会って今の彼氏と出会わなくすることを思いついたのだ。
彼は消えた未来でメアリーが言っていたモデルについての知識を彼女に話して気を引き,食事に行った。もともと気が合っていた彼らはそこで楽しい時間を過ごし,付き合うことになった。
その後も,時が過ぎていくうちにどんどん仲良くなり,メアリーの家で一緒に暮らすことになった。
やがて彼らは結婚することになり,子供もできた。
結婚式の日,ティムは過去に戻ってやり直すことで,同僚やハリーにスピーチを頼んだが誰もうまくできず,結局父親に頼むことになった。父親は簡単なスピーチをうまくやり遂げたが,納得できない彼は,過去に戻ってやり直した。父親の2度目のスピーチは,ティムの父であることを誇りに思っていることがみんなに伝わる感動的なスピーチになった。
その日は大雨で,ティムたちを含めた出席者は全員びしょ濡れで予定とは違ったものになった。しかし,メアリーたちはその状況も楽しんでいたため,ティムは過去に戻って日を改めようとはしなかった。
その後,ティムとメアリーの間に女の子が生まれ,ポージーと名付けた。
彼は今の人生に幸せを感じて,もう過去に戻る必要などないと感じていた。
しかし,ポージーの1歳の誕生日パーティの時に考えが変わった。妹のキット・カットが彼氏のジミーと喧嘩した影響で事故にあってしまったのだ。
ティムは事故を防いだ後,キットと一緒にジミーと出会う前の過去に戻って彼らが付き合わないように過去を変えた。その結果,キットはティムの友人と付き合って幸せそうに過ごすようになった。
それを見て安心した彼だったが,家に帰って子供の世話をしようとすると娘のポージーが見たことのない男の子に変わっていることに驚いた。過去に戻ってそのことについて父親に聞くと,子供が生まれる前に戻ると子供ができるタイミングが変わって,違う赤ん坊が生まれると,ティムに告げた。
ほぼ万能とも思えた能力の意外な弱点を知った彼は,改変した過去を元に戻しキットが事故にあう未来を選んで,自分でジミーと別れる決断をさせた。
そして子供がもう一人増えて4人家族になったころ,父親がガンであと数週間の命だという連絡があった。原因かもしれないタバコを止めるとティムたちが生まれなくなるかもしれないため,変えることができないらしい。
そしてティムの父親はティムに幸せになるための秘密を二つ教えた。
一つは他の人たちと同じように普通の生活をしなさいというものだ。普通の生活をほぼ同じ過ごし方でやり直すこと。彼はそれを実践した生活を送って,1回目では気付かなかった日常の素晴らしさに2回目で気づくことができた。
父親が亡くなってからしばらくすると,メアリーが3人目の子供がほしいとティムに話した。もう一人子供が生まれると過去に戻って父に会うことができなくなるため,彼は悩んだが,父も喜んでくれると思い,それを受け入れた。
もうすぐ生まれそうだという日になって,ティムは父が生きていた時に戻った。彼の様子を見て,これが最後になることを悟った父親は,何かやり残したことは無いこと聞く息子に対してある提案をした。
感想(ネタバレあり)
ストーリーについて
話の大筋に思っていたよりもタイムスリップ要素が無かったですけど,日常生活で前向きになれる良い映画だと思います。
前半はメアリーと出会って結婚するまでのラブストーリーのようなもので,人生の過ごし方を描いたものでした。
私は後半の方が好きです。悪いことばかりの日でも,見方によっては素晴らしい日だというメッセージがあって,今日という日を大切にしようと思いました。むしろ,自分に時を越える能力が無いからこそ,良いことも悪いことも起きる,かけがえのない今を無駄にしないで大事にしようと思いました。
前半では,恋人と仲良くなるためや知り合いのために能力を使っていたティムが子供が生まれてからは子供のために能力を使わなくなったり,昔は自分の読書のために能力を使っていたティムのお父さんが,子供たちのために使っていたりする姿を見て,子供って人の気持ちや行動を変えるほどの大きなものなんだなと改めて気づかされました。それは能力があっても無くても同じだと思います。
メアリーについて
メアリーがとても良い子で,好きになりました。
特に,自分の両親にティムが初めて会ったときに,ティムにされた質問を全部メアリーが答えて
「私は彼が大好きよ。ママとパパにも好きになってほしい。」
と本人がいる前で言ったり,
大雨で予定が狂ってしまった結婚式についてティムに雨が降らない日の方が良かった?と聞かれたときに
「全然そんなこと思わない。これからいろんな日があると思う。楽しもう。」
と言ったときにすごく前向きでまっすぐに気持ちを伝えられるいい子だなと思いました。
主人公が最後に言っていた
「今日が人生最後の日だと思って毎日ベストを尽くして楽しんでいる。」
というのを結婚式の時点でもう彼女はやっていたような感じなのも良かったです。
こんなに良い子な彼女がそばにいたからこそ,ティムは能力を使わない生活をすんなり楽しめるようになれたのかもしれません。
気になった点
この映画の結婚式からの話の展開はとても好きだったのですが,前半のティムがメアリーにプロポーズするまでの話は少し気になるところがあって,面白いんですけど私はあまり好きにはなれませんでした。
それは,ティムがタイムスリップ能力を便利に使い過ぎていたことが原因だと思います。
ティムは一度偶然メアリーと出会って気が合ってから,ハリーの劇を成功するために彼女との出会いを無かったことにしたんです。しかし,彼はその劇の成功の状態のまま彼女と再会して,彼女に気に入られるためや仲良くなるために能力を最大限に利用したんです。1回行った未来での彼女の発言を自分で言って気を引いたり,うまくいかなかったことはやり直して能力を何度も使うし,恋人になるはずだった人との出会いも邪魔するんです。
それでいいの?って思いました。そこまで能力を利用するのなら,もう能力があったから彼女と結婚できたようなものなんじゃないの?って思います。
そもそも自分の本当の気持ちや行動は1回目でしか現れなくて,2回目以降はうまくやるためだけの行動になると思うため,自分を相手に分かってもらうための行動は,たとえうまくいかなくても繰り返すべきではないと思います。
しかし,そんなことを考えるのは私がタイムスリップものについて異常なこだわりを持っているからかもしれません。
私が考えるベストなSFものの恋愛要素は,「ドラえもん」ののび太としずかちゃんなんです。
のび太はドラえもんからすごいひみつ道具を貰って,それを使ってみんなの気を引こうとします。最初はうまくいきますが,だいたい途中で失敗します。みんなはそれでのび太から目を離しますが,しずかちゃんだけはそれで落ち込むのび太を見て励ましたりするんです。
結局のび太が道具をうまく使えても使えなくてもしずかちゃんは優しく見守ってくれていて,二人の仲が良いことに便利な道具は全く関係ない,という状態がすごく好きなんです。
でもこの映画だと,ティムは彼女とのうまくいかないことを繰り返し過ぎていて,能力があったから仲良くなったと見られてもおかしくない状態だと思います。最初にシャーロットの気持ちが過去を変えても変わらなかったことから,実際はそうではないのかもしれませんけど,能力を使ってたことを思い返すと,後半ちょっともやっとします。
メアリーのご両親や初恋の人との会話で気まずくなった時に能力を使うのはいいですけど,メアリーとの仲を進展させるためには使わない方が私好みではあったかなと思いました。
それから良くない考えかもしれませんけど私は,過去を変える系のタイムスリップは最終的に使った人に後悔してほしいんです。
過去を変えるという事は,変えた時間を無かったことにすることで,うまくいかなった時に励ましてくれた人の気持ちなどもすべて無駄にしてしまう行為なんですよ。そんなことをしてしまったと気付いて,最終的には反省してほしいです。
ティムも最後にはずっと能力を使ってないと言っていましたから,反省していたのかもしれませんけど私にとってあれじゃ足りません。
いろいろ文句を書きましたが後半の展開はやっぱり良いので,タイムスリップ要素やその都合のよさを気にしない人だったらとても楽しめる映画だと思います。
まとめ
過去をやり直す主人公の姿を見て,自分の人生の過ごし方について考えさせられるとても良い映画だったと思います。しかし,前半はタイムスリップをしないで,メアリーと平凡な出会いや過ごし方をした方が私の好みではあったかなと思いました。
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