ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「メッセージ」の感想、あらすじ

メッセージ

2016年公開のアメリカ映画。日本では2017年公開。出演 エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー。原題は『Arrival』。

© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

突然地球に現れた宇宙人に対して、言語学者の主人公が彼らの言葉を読み取りながら、その考えを理解していく話。

あらすじ

彼らが現れた運命の日。

高さが450メートルを超える正体不明の飛行物体が、世界の12箇所に突然現れた。そしてその出現に世界中が混乱する中、著名な言語学者のルイーズ・バンクスが、その中にいる彼らとの会話の翻訳を依頼されたのだ。

その後彼女は、理論物理学者のイアン・ドネリー、アメリカ軍のウェバー大佐と共に、モンタナ州へと向かった。世界に12箇所ある、宇宙船が現れた土地の一つである。

 

そこで異星人との初対面を終えたルイーズは、彼らとの対話には音声ではなく、文字を使った視覚でのコミュニケーションが有効だと判断した。そして、共通の語彙を増やすために、イアンと共に小学生レベルの単語から彼らに伝え始めたのだ。するとそのやり取りは、すぐにルイーズたちの翻訳に大きな進歩をもたらした。ルイーズたちの言葉に対し、彼らが円形の不思議な文字をいくつか返してきたのだ。

 

ルイーズたちは彼らを『ヘプタポッド』と名付け、その後何度も対話を重ねていくことで、彼らの文字の研究を進めた。

彼女はそうして少しずつその文字を扱えるようになっていった。だが、その理解を進めていくうちに、ルイーズにはある異変が起こり始めていたのだ。それは、記憶にない少女との思い出が、何度も頭の中に浮かんでくるというものだった。

そして、ルイーズたちが一番聞きたかったことをヘプタポッドに尋ねた時、彼らは意外な言葉を人間たちに伝えた。その言葉は、ヘプタポッドと敵対する気だった人たちを大きく動かし、世界にさらなる波紋を起こしていったのだ。

それでもルイーズは、彼らの言語の意味を最後まで読み取ろうとするのだが…。

感想(ネタバレあり)

最初に観た時には少し難しくて戸惑う場面もありましたが、自分のその気持ちと混乱しているルイーズが重なって、とても先が気になる展開に思えました。そして最後には、彼女がヘプタポッドの思考に気づくと同時に、自分がそれまで不思議に思っていたことの全部がつながって、全てが丸く収まっていくような感じがとても爽快でした。

万事ハッピーではありませんでしたが、私はとても納得できる終わり方でした。1回目は混乱しながら観て、2回目はヘプタポッド側の考え方で観るという楽しみ方もできると思います。見えるものが変わっても、起こる出来事について何も変えられないことは残念に思いますけれど。

 

長細い宇宙船やヘプタポッドについては、これまで想像していた宇宙船や宇宙人とは全然違って、彼らとの考え方の違いを別の場所から感じ取れたような気がしました。中の重力が変化してケミカルライトが壁に落ちたり、壁を歩いたりするところも、普通に驚かされました。

 

そして、全く情報が無く初めて見る言語を理解することの難しさにも、改めて見るととても驚かされました。

この映画を観ると、世界中の言語を当たり前のようにある程度翻訳できる今の状況が、奇跡的なようにも思えます。宇宙人の言語ほどではないにしても、他言語と初めてつながるときにはこんな苦労があったのかと思うと、もう少し感謝しようと感じました。

言語の影響について

ヘプタポッドの言語を理解することで、ルイーズの考えがだんだんと変わっていく場面が、私にはとても印象的でした。言語の持つ力の強さを感じました。

宇宙人と対話をしていた彼女ほど大きな変化ではないでしょうけれど、扱う言語が人間の概念に変化を与えるという話は聞いたことがありました。例えば、英語を勉強して理解した人は、英語独特の概念を直感で感じ取れるようになったりするそうです。

 

また劇中では、攻撃的な言葉ばかりを伝えていたら、ヘプタポッドの考え方も攻撃的になるかもしれない、というようなやり取りがありました。他人からの言葉が個人の考え方に影響を与えるというのは、同じ言葉を使う地球人同士でもよくあることです。

世の中には、心無い人の言葉で深く傷ついて落ち込んだり、逆に激励の言葉によって元気づけられたりした経験がある人がいると思います。私自身も、優しい言葉をかけられただけでポジティブになりますし、ひどいことを言われ続ける環境に居たら、しばらくネガティブになったりします、

 

そう考えると、劇中で言葉を『武器』と言っていたことにも大いに頷けました。他人の心を変えられるほどの大きな力を持つ『言葉』というものは、下手に使えば他人を傷つける武器になり、上手く使えば他人に大事な想いを伝える便利な道具にもなるものです。名探偵のコナン君も

『言葉は刃物。使い方を間違えるとやっかいな凶器になる。』

名探偵のコナン君のセリフ

とどこかで言っていました。

そんな他人を変えるほどのものを使って暮らしているのですから、これからは慎重に、他人を悪く変えたりすることが無いように正しく扱っていこうと、私は思いました。

ノンゼロサムゲームについて

劇中でルイーズたちは、ものすごく苦労してヘプタポッドの言語を理解しようとしていました。そしてその結果、人間は便利な共通言語を得られて、ヘプタポッドたちも将来的には助かったという、ノンゼロサムゲーム(非ゼロ和ゲーム)になっていました。

 

私は結局、日常生活でも相手のことをしっかり考えることが大事なのだと思いました。

目先のことだけを考えると、数の力で自分たちの考えを押し付けたり、武力や権力で相手を否定したり傷つける方が簡単なこともあるかもしれません。しかし長い目で見ると、自分に無い考えを理解することは、回りまわって自分のためになると思います。というより、個人的に私はそう思いたいです。

 

目の前の相手が自分と同じ考えに従って生きているとは限りません。しかし、今の瞬間を頑張って生きていることは、どこ生まれどこ育ち、どんな考えでも同じだと思います。宇宙語を理解して3000年後の未来を見ろとは誰も言いませんが、わざわざ頑張っている他人を傷つけて10年後敵に回すリスクを負うよりも、力になれるように理解して味方につけた方が、誰にとっても得だと思います。

ですが、現実はそううまくはいかないことも分かっています。現実は、みんながヘプタポッドのように友好的に待ってくれるわけではないため、武力の準備をすることがどうしても必要になってきます。

しかしそれでも、確実に武器を向けられるまでは、私は言葉で相手のことを理解しようとしていたいと思います。それが、様々な苦労を経てノンゼロサムで積み上げられてきた、大切な言語を使う私たちの役目の一つなんじゃないかと、私は勝手に思いました。

原作読者との評価の違いについて

原作を読んだことが無かった私は、この映画単体でとても面白い映画だと思いました。しかし、原作を読んだ方にとってはいろいろ不満もあったそうです。意見を読ませてもらった中には、なるほどと思わされるものがいくつもあって、私も今度原作を読んでみようと思いました。

そしてその調べ物の中で、私は違う意見に触れて新しい思考を持つという、ルイーズが劇中で行っていたことを、一人で身をもって体験した気になりました。

 

言語以外のあらゆる面の技術でもおそらく、ルイーズとヘプタポッドのように、違う意見と触れて理解し合う、ノンゼロサムゲームを繰り返して発展してきたのだと思います。(私の場合は自分で得した気になっただけですが、相手も別に損をしていないので、ノンゼロサムです。)

私もそんな歴史の途中にいる人間として、今を大事に、日々別の考えを学んで成長していかねばと感じました。

同じ宇宙に住むヘプタポッドと地球人の間で、こんなに違ってたくさん学ぶものがあるように描かれているのですから、同じ地球に住む人間でも考え方は違って当たり前で、そこから学べるものもいくらでもあるでしょう。せっかく今を大事に生きているのですから、どんどん新しいことを知っていかないと、脳のスペースがもったいないと思いました。

まとめ

一回目は難しく感じるところもありましたが、それが全部分かって丸く収まるところは本当に爽快で、すぐにもう一度観たくなりました。大きく分けて二つの視点で観られる映画なので、一回目が楽しめた方は、二回目も同じくらい楽しめると思います。宇宙船の描写なども、彼らとの違いを表しているようで良かったです。

知らない言語を理解する大変さも驚きでした。これだけ苦労して受け継がれてきたものなのだから、正しく使わなければと思わされました。

上の感想の文章にもその台詞を一部変えて書いていますが、謎の宇宙人の言葉を受けて世界のみんなが反応していく様子は、ロバート・ゼメキスさんの映画『コンタクト』に似た印象を受けました。どちらもハマる人は何回でも見られるほどハマるでしょうけれど、そうでない人は全然ハマらない映画だと思います。SF映画を観なれているなら、どちらもすごく面白く感じるでしょう。

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