二ツ星の料理人
2015年公開のアメリカ映画。日本では2016年公開。出演 ブラッドリー・クーパー。
Artwork (C) 2015 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.
パリのレストランでトラブルを起こして逃げ出した二ツ星の天才料理人が、再起をかけてロンドンでレストランを開き、ミシュランの三ツ星を目指す話。
あらすじ
アダム・ジョーンズはかつて、パリのレストランでシェフとして働いており、思いのままにその才能を発揮して高い評価を受けていた。しかし、酒、薬、女など、あらゆる面での問題を起こし、そこから逃げ出したのだ。
それから三年。
酒も女も断ったアダムは、再起を図るためロンドンにやって来た。
そして、フランスにいた時の友人であり、ロンドンでレストランを経営しているトニーの元を訪れたのだ。悪名高いアダムと再会したトニーはいい顔をせず、アダムをすぐに追い出した。だが、アダムは強引な手段を使って、トニーの店を乗っ取ったのだ。
ミシュランで三ツ星をとり、そこを世界一のレストランにすることをトニーと約束して、アダムは自分の厨房で働くシェフを集め始めた。パリの同じ店で修行していたミシェル、アダムを尊敬していたデヴィッド、他店から強制的なヘッドハンティングをしたエレーヌなど、できる限りの腕のいいシェフをそろえた。
レストランの改装も終え、ついに彼の店はオープン初日を迎えた。だが、その日は散々な結果になった。
アダムが集めたシェフたちは、彼が思うような完璧な仕事をこなすことができなかったのだ。しかし、シェフだけの問題でもなく、アダムが考えたメニューバランスも悪かった。さらには、彼が第一線で活躍していた頃とは、味の流行や一般的な調理方法が変わっており、アダムのやり方はもはや時代遅れとなっていたのだ。
絶対の自信があった料理に失敗したアダムは、エレーヌたちから最新の調理について一から学び、新しいやり方でレストランの営業を再開させた。
そのおかげで世間からの評価は持ち直したが、アダムはまだ満足していなかった。
彼が望むのは二ツ星の批評ではなく、完璧な三ツ星の評価だった。誰よりも完璧を追い求めるアダムの前には、その後も多くの困難が待ち受けるのだった。
そしてある日、彼の店にミシュラン調査員と思わしき客がやって来た。アダムは信頼のおける部下とともに作った渾身の料理を、彼らに提供するのだが…。
感想(ネタバレあり)
気楽に観れそうな映画かと思って観たのですが、意外と緊張感のある調理シーンがいくつもあって、引き込まれて見せられました。ところどころで料理への愛も感じられましたし、周りの優しい気持ちを大事にしようと思える良い映画でした。
初めは自分の才能だけを信じて自分勝手にやっていたアダムが、挫折するたびに周りの人に慰められて、少しずつ変わっていく様子が、とても優しい展開で良かったです。
特に、ライバル視していがみ合っていたリースが、最後にアダムを助けるところが一番良かったです。いろいろ文句を言いながらも、実力は認めていて期待している優しい気持ちが見えて感激しました。それに気づいて、すぐに変わろうと決意するアダムも偉かったです。
やはり才能がある人は、みんなに好かれて期待されるものなのだと改めて感じました。
個人的には、パリにいた時のアダムのことやマックスについても、もう少し掘り下げるエピソードが欲しかったです。
料理への愛について
アダムの料理への愛が感じられる場面がたくさんあったところも、私は好きになりました。
高級レストランだけではなくて、安いハンバーガーなどの大衆料理も食べて勉強していたり、他のみんなが帰った後もエレーヌと新メニューの制作をしていたところを見ると、彼の腕は才能だけではなくて、本当に料理が好きで努力した結果の実力なのだろうと思わされました。
部下のシェフに怒鳴るシーンは、少しやりすぎとも思いましたが、それも料理への思いの強さが現れているところだと感じました。そこまで思っていないと、本当の一流料理というのは作れないのだと思います。
問題はアダムが、他の人をまともに見ていなかったり、最新技術の勉強を怠っていたことだと思いますが、その後すぐにうまく利用して店をちゃんと再開できたのはすごいです。それもきっと料理が好きだからこそ、諦めずに勉強できたのだろうと感じました。
それだけ頑張っても彼が考えていた理想には届かなくて、挫折した彼を助けたのが、一緒に下積み時代を頑張ってきたリースだったというのも、とても感動しました。
結局、料理が好きだからこそ、怒鳴られても頑張れるし、そりが合わないライバルの料理の良いところにも気づけるし、挫折してもまた頑張ろうと思えるのだと思います。
料理人でもなんでも、やはり一流の人は、才能も努力も実力も、愛もチームワークも、全部一流なのだろうと改めて思わされました。
怒鳴るシーンについて
厨房でアダムが他のシェフに怒鳴りつけるシーンは、『ハングオーバー』と『アメリカンスナイパー』でしか、まともにブラッドリー・クーパーさんを見たことがなかった私には衝撃的でした。私の記憶では優しくて爽やかな笑顔を浮かべていたあの人が、別人のように激しく怒ってて、とても怖かったです。『セッション』に出てきたフレッチャー先生を思い出しました。
吹き替え版でアダムを演じていたのは声優の東地宏樹さんだったのですが、私は吹き替え版のほうが怖く感じました。元からブラッドリー・クーパーさんの地声よりも低くて強そうな声なので、平然としている場面では良い声に思えますが、怒鳴るシーンは本当に迫力があって怖かったです。もちろんブラッドリー・クーパーさんの演技も相まってのものですが、本当に鬼が声を当てているのかと思いました。
やっぱりブラッドリー・クーパーさんは笑顔が一番です。東地宏樹さんの声も強そうで、ブラッドリー・クーパーさんにも負けないくらいかっこよかったです。怖かったですが。
まとめ
周りの優しい気持ちを大事にしようと思える良い映画でした。料理への愛も感じられる優しい映画だったと思います。アダムがシェフに怒鳴るシーンは私にとっては衝撃的でした。
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