ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「告白」の感想、あらすじ

告白

2010年公開の日本映画。出演 松たか子、岡田将生。監督 中島哲也。原作 湊かなえ。英題は『Confessions』。


(C) 2010「告白」製作委員会

担任をしていたクラスの生徒に一人娘を殺されたシングルマザーの中学校教師が、犯人の生徒たちに復讐をしていく話。先生や生徒や保護者らの告白によって残忍な事件の全貌が明らかになっていき、その後さらなる事件が起こっていく。

あらすじ

とある中学校の1年B組の担任教師、森口悠子は春休み前の終業式のその日、生徒たちにある告白をした。

 

内容は約一ヶ月前にその中学校のプールで亡くなった彼女の娘、愛美に関することだった。警察は愛美が誤ってプールに転落した事故死だと判断していたが、悠子の言い分は違っていた。

悠子は娘がこのクラスの生徒に殺されたのだと、彼らの前で淡々と言い放ったのだ。

 

悠子はすでにその事件の真相を調べ上げており、犯人の二人を見つけていた。そして生徒たちの前で、娘に起こった残酷な事実を語り始めたのだ。

彼女はその二人をA、Bと呼んで犯人の名は公表しなかった。だが悠子の正確な話を聞くと、クラスメイトにはその人物たちの名前がすぐに分かった。

 

そして悠子は騒がしくなった教室の生徒を静かにさせて、彼らにさらなる告白をした。

それは少年AとBが飲んだ牛乳に、HIVウイルスに感染した彼女の元婚約者の血液を混ぜたことだった。

今警察に訴えても、少年法に守られた彼らは事実上無罪になってしまう。二人に自分が犯した罪の重さと命の大切さを実感させるために、それを実行したのだと悠子は語り、その告白を終えた。

 

その後、3月で教師の仕事を辞めた悠子はその中学校から離れたが、少年AとBは新学期になっても彼女の告白の影響を受け続けた。

一人は、真実から逃げるように笑顔で過ごすクラスメイトからいじめを受けることになり、自分を責めて学校に行けなくなったもう一人は、新たな担任となった熱血教師に追い詰められることになった。

 

その後、彼ら生徒たちやその保護者の告白により、恐ろしい事件の全貌が明らかになっていく。そしてそのクラスには、また新たな残酷な事件が次々と起こっていくのだった。

感想(ネタバレあり)

物事を表面や自分の都合のいいところしか見ようとしない、人間の悪い部分などをかなり見せられて、気分が沈んでしまう映画でした。

 

ほとんど感情的にならず丁寧な言葉で事実を語る悠子先生の告白から始まり、その後生徒や保護者の視点で、それぞれの偏見が混じった告白を聞く流れが面白いと同時に、とことん嫌な気分にもなりました。

初めに悠子先生から生徒が行った残酷な行為を聞き、それから他の視点からの告白を聞くことで、先生からは聞けなかった生徒たちの良いところが見られるのかなと私は期待していたのですが、それからもっと残酷な生徒たちの考えが見えてくる展開には、驚かされるばかりでした。同情できる部分もなくはなかったですが、被害者のことを思うとひどいとしか思えなかったです。

あまりにも辛い展開だったので、これ以上見たくないなと思いながらも、その意外な展開に惹きつけられる自分もいました。

悠子先生について

悠子先生を演じていた松たか子さんの淡々と丁寧な言葉遣いで語る演技がとても印象的でした。

直接生徒を傷つけたりはせずにあらゆる手を使って、一番苦しむ形で淡々と復讐をしていく彼女の様子は、見ていてとても怖かったです。最後のシーンはその映像や意外な展開も相まって、特に衝撃を受けました。

 

そして、最初の悠子先生の告白シーンもまた印象的でした。

小説の朗読を聞いているみたいに一方的にずっと同じ調子で語っていたので、私も推理小説を読むように、早くその事件の真相を話してほしいと思いながら聞いていました。どんな驚きの展開があるのか、どちらかと言えば生徒目線で楽しみにしながら観ていました。

しかし途中からは私の予想以上の残酷な行為も、それまでの牛乳について語っていた時と同じような調子で、淡々と話していく彼女の様子がとても怖かったです。

先生にとっては、とても悲しくて怒って当たり前の事件だったのに、犯人の生徒たちにはそれらの感情をほとんど見せず、ただ事実を伝えていく様子が、初めて見た時は全く理解できなくて怖かったです。もっと感情的に話してもらいたいと思いました。

 

しかし、全部観終わってよく考えてみると、自分なりの答えは出せた気がします。

やはり先生は生徒たちに命の重さを実感させるために、復讐を実行していたのだと思いました。殺された娘の母親ではなくて、先生としてそれを教えるためにやっていたから、それまでの自分のルールを守って丁寧な言葉遣いをしていたのではないかと考えました。いろんなことをして生徒を苦しめてはいましたが、そうでもしないと分からないと考えたから、彼らを更生させるために自分も生徒と同じ目線に立って苦しみながらやっていたのだと私は思います。

 

そして最後のシーンについては、悠子先生は爆弾を修哉のお母さんのところに置いていないのだと思いました。多分、母親が爆発に巻き込まれたと思わせるように嘘をついて、修哉に犯した罪の重さを感じさせようとしていただけだと思います。

そもそもお粗末と言われたポシェットを作っていた13歳の中学生に、あんなに本格的な爆弾が作れるものかというのを、私は疑問に思いました。

 

しかし、先生の最後のセリフをどう解釈するかによっては、本当に彼女が心から彼らに復讐をしようと思って、母親のもとに強力な爆弾を置いていたとも考えられます。

私は思いやりのあるキャラクターが好きなので、私もB組の生徒たちと同じく、考えたくない残酷な真実から目を逸らしているだけかもしれません。

実際それまでの過程で直樹のお母さんや美月さんは亡くなっているので、その事態を招いた悠子先生が良い人とは言えないのですが、それでも私は彼女にも良いところがあったのだと思いたいです。真実から逃げ出したB組の生徒たちのことをあんまり悪く言えないと、自分でも思いました。

その他のキャラクターについて

どうしてそうなったのか、何が原因かを考えずに、他人のせいにしたり忘れてしまったりする生徒たちやウェルテルなど、いろんな登場人物から嫌な感じを受けました。

しかしその一方で、共感する部分がないわけでもなかったです。私も怖いことは考えたくなかったりしますし、自信がないことについては他人の言葉にすがってしまうこともあり、自分が大事にしているものなら悪い面は見たくない気持ちもあります。そう思うと、嫌な感じを受けている登場人物のような一面が、自分にもあるのかもしれないと思ってしまって、自分の未熟さを見せつけられるようでさらに気持ちが沈んでしまいました。

せめて自分はこうはならないように、他人に優しく生きられるように、彼らを反面教師にしてやっていこうと思います。

難しいことや辛いことは、他人のせいにしたり考えない方が楽なのは間違いないですが、正しいことをするためには、自分には都合の悪いことで辛くても、物事が起きた本質や理由をちゃんと考えなければならないなと、改めて思わされました。

 

生徒やウェルテルが現実から目をそらして楽しい雰囲気を作っている中で、悠子先生は現実を受け入れてもなお、感情的にならず自分の教師像を貫いていたところを見ると、彼女はとても強い人だったのかもしれません。

悠子先生は決められたルールや自分の中の理想の教師を本気で貫いていただけでしたが、それで生徒の恨みを買ってあんな結末になっていたのが、単純に可哀想でした。

生徒たちの両親の接し方なども、何かが違っていたら変わっていたのかもしれないと思うと、本当に人を育てるのは難しいなと思わされました。実際に生徒と向き合っている学校の先生や子供たちの親などは、やっぱりすごいと思います。

その他について

自分のクラスで起こっていたことをすぐに忘れて楽しそうにクラスメイトをいじめ始めた生徒たちも、自分が満足するために関係ない他人を傷つけた修哉たちも、本当に自分勝手で見ていて嫌な気持ちになりました。

正直、観ている時の気分が良い映画ではないので、観るたびにもう二度と観ることはないだろうと思っています。

しかし、予想を軽く上回る衝撃的な展開と松たか子さんたちの演技の印象がとても強いので、嫌な感じを忘れた頃に目に入ったら、私は怖いもの見たさでまた観てしまうのです。そしてまた気持ちが沈むというサイクルを繰り返しています。もはや好きなのかもしれません。精神衛生上良くないと思います。

 

橋本愛さんが演じていた美月が比較的好きでした。ルナシーに憧れていたり、ウェルテルに関して冷たい考えをしている場面もありましたが、そんな思いを持ちながら実際には誰も傷つけないという勇気も持っていた彼女は、他の生徒と比べたらとても強い子だと感じました。

しかし、橋本愛さんだけが普通に優しくて可愛いので唯一の救いだと思って見ていると、死んでしまった時がとてもショックでした。

まとめ

人間の悪い部分や残酷なところをかなり描いていて、暴力的で血が出る場面も多いので、私はあまり好きな映画ではありません。観ると気持ちが沈んでしまいます。

ですが、予想を超える展開や松たか子さんなどの演技の怖さはとても印象的でした。観終えた直後は二度と観ないと思っていても、その衝撃を思い出して、怖いもの見たさでまた忘れたころに観てしまいます。

 

教育の難しさについて色々考えさせられる話でした。実際に子供たちを育てているお母さんお父さん方や先生たちは本当にすごいです。

悠子先生は本当に優しい人で、心を鬼にして子供たちに命の重さを感じさせようとしていたのだと私は思いました。しかし、それも劇中の生徒のように見たくない残酷な真実から目を逸らしているだけかもしれません。

さまざまな残酷な行為を見られましたが、それを反面教師にして、彼らのようなことはやってしまわないようにしようと思わされました。

同じ湊かなえさん原作の映画の「白ゆき姫殺人事件」も人間の悪い部分を描いていましたが、あちらの方が分かりやすい救いがあって私は断然好きです。

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