ファースト・マン
2018年公開のアメリカ映画。日本では2019年公開。出演 ライアン・ゴズリング。監督 デイミアン・チャゼル。
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人類で初めて月面を歩いたニール・アームストロングの半生を描いた映画。宇宙飛行士になる以前からの家庭での姿や、訓練の様子などがニールの視点で実話を基に描かれる。
あらすじ
1961年。
空軍でテストパイロットをしていたニール・アームストロングは、愛する娘が亡くなったことをきっかけに、NASAの宇宙飛行士募集に応募することを決めた。それは、NASAの二度目の有人宇宙飛行計画である、ジェミニ計画に参加する飛行士の募集だった。
ジェミニ計画とは、人類を月面着陸させるアポロ計画に必要な技術が、実際に可能かどうかを確かめるための計画である。それらの計画は、アメリカとソ連が激しい宇宙開発競争をしていたその時代、先を越されていたアメリカが、ソ連の技術に追いつき追い越すために立てられたものだった。
NASAの宇宙飛行士に選ばれたニールは、妻のジャネットと長男を連れてヒューストンに引っ越した。そして、その後は年単位での過酷な訓練が続いたのだ。
彼にはその間で宇宙飛行士同士の親しい仲間ができたが、その後の訓練などで何人も亡くしてしまった。ニール自身は常に冷静だったため、危ない目にあっても何とか最悪な事態は免れていたのだが、彼を家で待つジャネットにとっては、その状況は気が気ではなかった。
そして1966年、ニールの功績によってジェミニ計画は完了し、アメリカの宇宙開発はアポロ計画へと移行した。
1969年。
税金を使って結果を出さないアポロ計画が非難を浴びる中、月に着陸する予定のアポロ11号の船長にニールが選ばれた。
そして出発の日。多くの犠牲者を出してきたプロジェクトを背負うことになったニールは、二度と会えないかもしれない家族にその思いを伝え、月へ向かったのだった。
彼の家族と世界中が見守った、人類史上最も危険なミッションの結末は…。
感想(ネタバレあり)
ニール・アームストロングさんが、人類史上初めて月面着陸をする偉業を成し遂げた、ということくらいは、観る前からさすがに私も知っていました。しかし、着陸するまでの過程をニールの目線から丁寧に見せられることによって、漠然と世界初だからすごいと思っていた偉業の、本当のすごさを感じられた気がしました。
私がこれまで、歴史上の人物としてニール・アームストロングさんを見ていた時は、彼のことを感情をほとんど出さずにミッションをこなしたすごい人だと思っていました。けれど、仕事以外の彼の顔を描いていたこの映画を観ると、それが少し変わりました。奥さんや子供には優しく接していて、仲のいい同僚とは笑いながら話している、普通な人の部分がありました。
当たり前ですが、偉人でも親しい人が亡くなったら悲しむし、悔しく思ったりもする普通の部分があるのだと感じました。歴史上の人物として見ていると忘れがちですが、彼に近い目線で映画を観ると、それを改めて気づかされました。そんな普通の父であったニールが、親しい人を何人も亡くした計画に、大きな責任を背負ってまで命がけで参加するのは、単純にすごい勇気だと思いました。
そして、今日一緒にいた友人が明日死ぬかもしれないという、死と隣り合わせのような状況で、本当に宇宙開発が行われていたことにも驚きました。知識として知ってはいても、本人目線の映像で観ると実感がわいて、ショックも受けました。
名言について
『人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である。』
ニール・アームストロング
という有名な言葉がありますが、この映画を観ると、この言葉についてもまた考えさせられました。
世界初の偉業を成し遂げた時ですら、自分を人類代表の小さな人間として見ていたのが、とても謙虚で素晴らしいと思いました。自分だけではなく、それまでに亡くなった方たちや、同じ計画で一緒に頑張って来た人たちなどを含めた、すべての人類の力で、そこまで来たと考えていたのでしょう。
ソ連と競争していた時代で、アメリカとしてはソ連に勝つために月に行かせたのに、個人でもアメリカでもなく『人類にとって』と言ったのが、宇宙から地球を見られる宇宙飛行士っぽい言葉で、私は好きです。やはり地球を外から見ると視野も広がるのでしょう。いつも冷静に判断を下していた彼らしいとも思いました。
映像などについて
やはり、月面着陸するシーンが私には印象に残りました。ニールが手で着陸船を操縦して、少し間違えたら生きて返れないという状況で、月面がちょっとずつ近づいていく描写は、見ていて本当にドキドキしました。本当にじわじわ近づいていたので、画面の臨場感も相まって怖かった場面でもありました。
その他にも、ロケット発射のシーンや航空機などの迫力がある映像や音を、たくさん見て感じられました。それに、月面はとてもきれいに見えました。
しかし、航空機を操縦するシーンや激しい訓練のシーンは、カメラワークもかなり激しくて少し酔ってしまいました。リアルに近づけていると言えばそうかもしれませんし、本物のニール・アームストロングさんは、少し酔ってしまうどころではなかったのでしょうけれど、乗り物酔いしやすい方などは体調が悪いときは避けた方が良いかもしれません。
映像や音響は迫力がありましたが、物語自体は割と地味な感じがしました。あんまり派手にできない題材だとは思いますが。私は『ラ・ラ・ランド』の方が好きです。観る前から私がニール・アームストロングさんの史実のことを、割と知っていたからかもしれません。
まとめ
今まで歴史年表の文字としてしか見ていなかった出来事の、現実を見られたような気になりました。本当に死と隣り合わせみたいな状況で訓練していたようで驚きました。
歴史上の偉人でも、普段はそれほど多くの人と変わりないということも改めて感じました。映像は綺麗でしたし、音も迫力があって良かったです。
それでも私は『ラ・ラ・ランド』の方が好きです。
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