ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「ドリーム」の感想、あらすじ

ドリーム

2016年公開のアメリカ映画。日本では2017年公開。原題は『Hidden Figures』。

(C) 2016Twentieth Century Fox

1961年のアメリカでNASAのマーキュリー計画を支えた三人の黒人女性の実話を基にした物語。当時の人種差別や宇宙開発の様子が描かれる。

あらすじ

1961年。アメリカとソ連が宇宙開発で激しく争っていた時代。

バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所には、ロケットを打ち上げるために必要な計算をしている黒人女性たちのチームがあった。当時のバージニアは人種分離が基本であったため、黒人の彼女たちは環境や給与の面でとても苦労していたが、そこでは20人の優秀な女性たちが誇りをもって国のために尽くしていたのだ。

 

そしてある日、その中でも特に秀でた数学の才能を持っていたキャサリンが、その能力を買われて、スペースタスクグループ(STG)に異動になった。彼女はそこで働く初めての黒人女性となった。

計算係として配属されたキャサリンは、その場の誰よりも数字に強く才能もあった。しかし、その活躍は、やはり人種と性別の壁に阻まれることになった。

その建物内には白人用のトイレしか無かった。彼女が用を足すためには、800メートルも離れた敷地の反対側にある黒人用のトイレに行くしかなかったのだ。さらには、主任エンジニアのポールも、女性である彼女を信頼していなかった。彼は、計算に必要な書類のほとんどの部分を、機密事項として黒く塗りつぶしてキャサリンに渡していたため、彼女はまともに仕事もできなかったのだ。

そして、他の部署にいた彼女の友人たちも同様のことに悩まされていた。

エンジニア志望のメアリーは、上司にその知識を認められエンジニア養成プログラムへの参加を希望したが、それには白人用の高校で講座を受講する必要があった。チームのリーダー的存在であったドロシーは、管理職への昇進を申請していたが、黒人グループに管理職は置かないと言われ拒否されていた。

もちろん、彼女たちはその理由を尋ねたが、その答えは、規則で決まっているからと言われるだけだった。

それでも彼女たちは諦めず、自分の能力を発揮するために先を読んで行動し続けた。

 

そうして、彼女たちは徐々にその能力を認められ、キャサリンはついに、アメリカ初の地球周回軌道に関する重要な計算を任されるようにもなった。

しかし、前例のない立場の彼女には、まだ頭を悩ませる場面が多かった。女性であるという理由で重要な会議に出席できず、ロケットの軌道計算が遅れていったのだ。

その後も、彼女たちは宇宙飛行士の命を守るためにできる限りのことを尽くし、計算をつづけた。アメリカ史上初、前例のない偉業に挑み続けた彼女たちの結末は…。

感想(ネタバレあり)

理不尽な環境にあっても文句を言うだけではなく、先を読んで行動して、その実力を認めさせていく彼女たちがとてもかっこよかったです。やはり、優秀なことに人種や性別は関係ないのだと感じました。

この映画を観なければ、おそらく知ることはなかった方たちなので、観ることができて良かったです。私たちが生きている現在は、彼女たちのような人が、苦しみながら頑張って積み重ねてきた結果なのだと思うと、もっと今の環境を大事にして頑張って生きねばと思いました。

 

人種分離については話には聞いたことがありましたが、実際に映像でその様子を見ると、思っていたよりもとても居心地悪そうで驚きました。特に、キャサリンが共用のコーヒーを注いでいるだけで、周りの白人の男性がジロジロ見てきていた場面は、いたたまれなくて胸がきゅーっとなりました。そしてその後のシーンで、コーヒーカップも白人と非白人で分けられるようになったのを見た時には、普通に悲しくて、何だか申し訳なかったです。

しかしNASA以外で酷いことを言われた時に、ただ我慢するだけではなくて、ちゃんと怒って理論的に言い返す姿は、スカッとして良かったです。

登場人物について

規則をただ守って差別する人と、目的のために自分でやるべきことを考えて行動する人の差が、とても印象的でした。頭の良い人は、その場のルールや雰囲気に黙って従うだけではなくて、その意味を自分で考えて、間違っていると思うことは変えようとしていました。劇中でもドロシーたちの行動で十分語られていましたが、やはり日々目まぐるしく変わっていく世界では、考え方をその変化に合わせて変えていける人が、本当に優秀なのだと改めて思いました。

特に、STGのチーフでケビン・コスナーさんが演じていたアル・ハリソンさんは、そういうところがとてもはっきりしていて良かったです。みんなが当然のように白人と非白人を分けている状態で、その状況が仕事にとって不利だと分かると、すぐに物理的にぶち壊しに行く潔さが素晴らしかったです。インテリなのに意外と乱暴なやり方をするのも、本気具合が伝わって来て良かったです。さらに、

「NASAでは全員が同じ色だ。」

映画「ドリーム」のアル・ハリソンのセリフ

というセリフのセンスも良かったです。

現在はきっと、昔よりも世界の変化のスピードは早くなっていると思うので、私もそんな変化には注意して対応していきたいと思いました。

 

時代の流れで考え方を変える人とは少し違うかもしれませんが、私はジョン・グレン宇宙飛行士もかなり好きでした。NASAの研究チームで働いていた人は、自分たちが実力を発揮するためや、効率のためにルールを変えようとしているという印象があって、能力が無い人には厳しそうだと感じました。しかし、グレンさんは能力のあるなしに関係なく、誰にでも優しそうな人でかっこよかったです。カリスマ性というのはこういうところに出るのだろうと思いました。

キャサリンの夫になったジムも、インテリ側ではないですが優しそうで良かったです。プロポーズの時に、これから家族になる子供たちも一緒に集まって、子供たちの質問に優しく答えながら結婚を申し込むところが、私は好きでした。

ちなみにですが、1961年当時に実在していたNASAには、劇中にあったような人種分離の施設はもう無かったそうです。やはり、NASAで働くような頭の良い人は、行動が速くて、差別をする人も少なかったのでしょう。

タイトルについて

この映画は、日本公開前にサブタイトルのことで批判されて、結局サブタイトル無しの『ドリーム』で公開されたらしいのですが、私はこのメインタイトルの方に少し違和感を感じてしまいました。

夢の要素がある映画は数えきれないほどある中で、あえて『ドリーム』というシンプルなタイトルをつけられているのですから、本編では、よっぽど夢がキーポイントになっているのだろうと思って観たのです。しかし、観た個人的な感想としては、そうでもなかったなと思いました。宇宙開発自体が人類の夢かもしれませんし、彼女たちは自分の力を発揮するために頑張っていましたが、タイトルを『ドリーム』のみにするほど目立ってはいなかったように感じました。

サブタイトルありきで『ドリーム』とつけたのなら、サブタイトルを無くすときにメインの方を問題にしなかったのか、少し気になりました。

劇中で気になった点について

理解しなくても全然楽しめる物語でしたが、最初に観た時には、キャサリンが今何のために計算しているのかがあまり理解できませんでした。『アポロ13』や『オデッセイ』のように宇宙飛行士を地球に帰す話なのですが、その二作と違って、キャサリンは劇中で複数の作戦に関わっていたので、ロケットの名前や飛行士の名前が多く出てきて少し混乱しました。内容の割に、説明が少なかったように思いました。

私は『オデッセイ』に出てきたリッチ・パーネルという人の説明がスマートで大好きです。リッチ・パーネルは絶対外さないすごいやつです。

 

とても細かいことですが、メアリーの裁判所のシーンで、少しだけ気になることがありました。メアリーは『最初に何かするのは大事です、今日扱われる案件の中で、あなたが前例となり、今から100年後も語り継がれるものが他にありますか?』みたいなことを言って判事を説得したのです。しかし、それでOKを出してしまう判事は正直どうかなと思いました。判事がもともと良いと思っていることなら、前例が有っても無くても通せばいいのですが、前例が無いということを理由にして法律を捻じ曲げてしまうのは良くないのではないかと思ってしまいました。説得するためにいろいろ調査してきたメアリーは頭が良くてすごいとは思いますが、私はすっきりしませんでした。

そしてさらに細かいことになりますが、ドロシーの行動についても、気になることがありました。図書館から盗んだFORTRANの本はちゃんと返したのかなということです。黒人用の本棚に無かったので、勝手に持ち出したことについてはまだ良いとしても、NASAのコンピュータ室に持ち込んで返さないのは良くないです。図書館の本はみんなで共有するために税金で買っているものであり、勝手に持ち出すのは他の人が学ぶ機会を奪うことにもなるので、1日でも早く返した方が良いと思いながら観ていました。それこそ、他の人の『ドリーム』を奪ってしまうかもしれない問題です。おそらく返した設定なのだとは思いますが、持ち出す描写しか無かったので少しだけ気になりました。

上に書いた、細かい部分に関しては実在した彼女たちとは無関係な創作部分だと思いますし、普通に観ている人は気に留めないことだと思います。私は少しだけ気になりました。

まとめ

差別を受ける環境にあっても、先を見据えて行動し続ける彼女たちの姿に驚かされました。観なければ知ることはなかったであろう方たちなので、この映画を観ることができて良かったです。人種分離の様子にも驚きましたが、今の世界も彼女たちのような誰かが頑張った結果だと思うので、大切にしていこうと思いました。周りに流されるだけではなくて、自分で考えて行動することが大事です。

気になるところも無いことは無かったですが、分かりやすいサクセスストーリーな流れで面白かったです。割と厳しい環境から始まりましたが、途中からは上がる一方だったので、後半は安心して楽しめました。

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