インサイド・ヘッド
2002年公開のアメリカ映画。原題は『Inside Out』。ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ,ピクサー・アニメーション・スタジオ製作のアニメーション映画。日本でも同年公開。
(C) 2015 Disney / Pixar. All Rights Reserved.
ライリーという少女の頭の中には,ヨロコビ,カナシミ,イカリ,ムカムカ,ビビリの五つの感情が存在する。そこで彼らが問題を引き起こし,それを解決するために頭の中の世界を冒険しながらライリーと共に成長していく話。
あらすじ
ライリーという女の子が生まれた時,彼女の頭の中にヨロコビという一つの感情が生まれた。そしてライリーが泣き出すと,新たにカナシミという感情も生まれた。ライリーの中の感情は,それから彼女が大きくなるにつれてどんどん増えていった。
例えば,ライリーの安全を守るためのビビリ。そして,ライリーが嫌な目にあわないようにするムカムカ。さらに,彼女が怒った様子を表現するイカリ。
感情たちはみんな,ライリーの体や心を安全にして彼女を幸せにするための役割を持っていたが,彼女を悲しませるだけのカナシミについては,何のために存在するのか,最初に生まれたヨロコビにも分からなかった。
ライリーが毎日何かを経験するたびに,感情たちがいる頭の中の司令部には,ボール状になった彼女の思い出が作られる。それらは経験した時の感情に対応した色をしており,ヨロコビによって大切に育てられているライリーは,毎日ヨロコビの黄色でいっぱいの思い出を作っていた。
普通の思い出は一日の終わりに思い出の保管場所に送られるが,その中でもライリーの人生にとって重要な意味がある特別な思い出は,司令部に保管される。その特別な思い出がライリーの性格を作っているのだ。性格は彼女の頭の中で島としての形で存在し,ホッケーの島,おふざけの島,友情の島,正直の島,家族の島の五つが,現在の彼女の性格のもとになっている。
現在,ライリーは11歳。良い友達がいて素敵な家もあり,これからも彼女の人生は順調だと,ヨロコビは安心していた。しかし,ライリーが父親の都合でミネソタからサンフランシスコに引っ越すことになったことが,感情たちに波乱を巻き起こす。
引っ越し先の家はミネソタで住んでいた家に比べるととても狭く,古いものだった。さらに,家具を積んだトラックも到着せず,両親たちが喧嘩を始めてしまう。
その様子を見たカナシミはライリーを悲しませようとしたが,彼女に楽しい人生を歩ませたいヨロコビはそれを止めて,前向きな考え方をライリーに与えた。
しかし,ヨロコビがライリーに楽しい思い出を思い返すことで彼女を喜ばせていると,急にその思い出が悲しい思い出に変わった。カナシミが思い出のボールに触れたことで,楽しい思い出が悲しいものに変化したのだ。今までに見たことのないその現象を不思議に思いながら,ヨロコビは思い出のボールにカナシミが触れることを禁止した。
そして,ライリーが転校した学校に初めて行く日になった。彼女は両親とふざけ合ってから家を出発して,学校に着くとクラスのみんなに自己紹介をするように言われた。
ヨロコビがライリーの感情を制御して,彼女はミネソタでのホッケーの話を楽しく話していた。しかし,その途中でまたもカナシミがその思い出に触ってしまい,ライリーは悲しくなってみんなの前で泣き出してしまう。その結果,その悲しい思い出は彼女の特別な思い出となって,司令部に出てきた。
ライリーに悲しい性格を作らせたくないヨロコビは,その悲しい思い出が新たな性格を作る前に,思い出の保管場所にそれを送ろうとしたが,カナシミが止めた。すると二人が暴れたことで他の楽しい特別な思い出が棚から落ちてしまい,ヨロコビとカナシミごと思い出の保管場所に送られてしまった。
ヨロコビたちが性格を作る特別な思い出を全部保管場所に送ってしまったため,ライリーの性格の島はすべて動かなくなり,ヨロコビの感情を失った現実のライリーは,いつもとは違いずっと無表情のままになった。
司令部に残ったイカリとビビリとムカムカでヨロコビの代わりを演じようとしたが,うまくできず両親にライリーは心配されてしまう。彼女を心配した父親がふざけてライリーの気を引こうとすると,動かなくなった彼女の性格のもとであるおふざけの島は,思い出のゴミ捨て場へ崩れ落ちて無くなってしまった。
そしめ思い出の保管場所でその様子を見たヨロコビとカナシミは,急いで司令部へ向かい始めたのだ。
ヨロコビとカナシミは道中で,小さいころのライリーの空想の友達であるビンボンに出会い,彼に案内してもらいながら司令部に戻ることにした。彼ら三人は,様々な危険な目にあいながら,空想の国イマジネーションランド,こどもの国,夢の制作スタジオなどを通過して司令部を目指したが,なかなか辿りつかなかった。
その間にも,ヨロコビを失った現実世界のライリーは友達や家族との関係がうまくいかず,頭の中から友情の島,ホッケーの島が無くなってしまう。
性格を失っていくライリーを見ていた司令部のイカリたちは,無くなった特別な思い出を再びつくるために,家出をしてミネソタに戻るという考えを思いつき実行した。
その過程で頭の中では正直の島が崩れ落ち,ヨロコビとビンボンは思い出のゴミ捨て場へと落とされてしまう。そこで楽しかった昔の思い出を振り返ることで,ヨロコビはあることに気付き,ビンボンとともに脱出を試みる。
そして家出の計画が進むにつれて,最後に残った家族の島までも崩壊し始める。それを見て焦ったイカリたちは計画を中止させようとするが,性格の島のほとんどを失ったライリーは魂の抜け殻のようになり,感情たちの言うことを聞かなくなっていた。
そこへビンボンと別れてカナシミと合流したヨロコビが司令部に戻って来た。イカリたちは待ち望んでいたヨロコビに助けを求めるが,ヨロコビは緊急事態のライリーの感情操作をカナシミに託すのだった。
感想(ネタバレあり)
ストーリーについて
これからは自分の感情をもっと大事にしようと思えるような,とても心にしみる温かい話でした。頭の中の世界もとても楽しい世界でワクワクでしたし,最後のシーンではライリーの身を心配してドキドキもさせられました。いろんなものが詰まっているストーリーだったと思います。
一般的なイメージではやっぱり,楽しいことが良くて悲しいことが悪いとか,ポジティブが良くてネガティブが常に悪いとか,そんなイメージがちょっとはあると思います。しかし考えてみると,途中でカナシミが『犬が死んじゃう映画,面白かったよ。』と言ったみたいに,悲しかったからこそ印象深いこともあるし,思い返せばいい思い出になっていることもありますね。それにヨロコビが見つけたみたいに,悲しい思いをしたからこそ嬉しいことがあったり,共感できるということもあります。
だから私は自分が感じる正直な感情に,無駄なものなんてきっと無いんだなと感じました。今の自分が感じた悲しい気持ちや怒った気持ちは他人に見せたくないような嫌な感情です。でもそれを受け入れることで,その感情が後で良いものになったりしていくんだと思います。ライリーのように私もきっと,そうすることで心が成長してきたんだと思います。悲しい感情とかをポジティブな考え方に変えることは,その成長を妨害することなんじゃないかなと私は考えました。
今の自分の感情は今しか感じられないものなので,悲しみでも怒りでもムカムカでもビビリでも,これからは楽しいことに変換することに逃げずにしっかりと受け入れて,その感情を大事にしたいなと考えました。そしてこれからも,自分の感情と共に成長していけたらいいなと思います。
それに小さい子と接する機会があると,ものすごく感情表現が豊かで感情がコロコロ変わるので,ごくたまに面倒だなと思うこともあるんです。でもこの映画を見た後だと,これも感情を受け入れていることで成長している途中なんだなと考えることで,とても温かい目で見ることができますよ。
ディズニーの公式サイトの紹介には,
観終わった時、あなたはきっと、自分をもっと好きになっている―。
と書いてあったんですけど,私もディズニー側の予想通り,まんまと自分の感情が好きになりました。もしも本当に感情が,あんな風に親みたいに自分を見守ってくれているのかと思うと,本当に自分の感情がありがたいと思いますし,どれもかわいいキャラクターだったのでこれからはもっと大事にしたいと思いました。
それに,どれも大切で重要なものだと思うと,ラストのシーンで新たにできた性格の部分にヨロコビが言った
『私はどれも,とても綺麗で素敵だと思う。』
というセリフにとても共感します。
本当にこの映画を観て,自分の感情の全てをとても綺麗で素敵なものだと思えました。自分に自信が無くなった時には,また観ようと思える素敵な映画だったと思います。
頭の中の描写について
いろんな夢のある世界を描いてきたディズニー,ピクサーの製作だけあって,頭の中の世界もとても楽しくてワクワクする描写になっていました。本当に頭の中がこうなっていればいいのになと思うような,理想的な楽しい世界だったと思います。
イマジネーションランドで,三次元のキャラクターがどんどん点と線だけに近づいていくというシーンは,その過程や背景と並べた時の違和感が3Dアニメーションならではなのかなと感じて面白かったです。
それに,夢の製作スタジオも作りが細かくて面白かったです。スタジオが並んでいる中で,壁に夢の内容が映画ポスターみたいに貼られてあって,本物みたいだなと思いました。あれもきっと,人によって舞台だったりドラマの制作現場だったりするんでしょうね。
他の人や他の動物にも,みんなライリーと同じように頭の中の感情がいるのを見せるところも面白かったです。大人の頭の中の感情は,やっぱり長く生きているだけあって,ライリーよりもみんな落ち着いてて,仲良しな感じでした。ライリーの中の感情たちも成長していくにつれてこうなっていくのかなと思いました。
頭の中の楽しい描写の中でも,私が特に気に入ったのは思い出の保管場所にいた記憶を消す人たちです。あの人たちが無意味にガムのCMソングを司令部に送っているのを見て,私の長年の謎が解けました。
私も長年なぜか特に思い出があるわけでもないのに,耳に残っている曲があって不思議に思っていたんです。頭の中の人たちが意味も無く悪ふざけで送っていたんですね。納得です。もしもあんな愉快で面白い人たちが送っていたんだと考えると,いくらでも流していいよと思えました。
気になった点
私はこの映画のことは大好きなんですけど,気になっている点も少しあります。
まず,序盤のカナシミへのヨロコビの対応が酷いことです。ヨロコビがすごいポジティブシンキングという設定なら,カナシミのネガティブささえも前向きに考えてほしかったです。
途中でカナシミの大切さに気付かせることを強調するために,序盤でカナシミに冷たい態度をとっていたのかもしれませんけど,もっと違うやり方もあるんじゃないかなと思いました。特に,その円の中から出ないでねと言うところは,いじめにしか見えないです。そんなやり方をせずに,触らないようにビビリに見ておいてもらえばいいのにと思いました。
一回目の視聴の時はそうでもないんですけど,二回目以降になるとカナシミにも愛着がわいていますから本当にかわいそうでした。分かりにくい表現になりますけど,カナシミに対するヨロコビの態度が冷たくて悲しいです。ムカムカもしますし,イカリもちょっとわきます。ビビリはしません。
でも二人の,全く逆だけれど打ち消さずに強調し合うみたいな関係性は,個人的にはとても好きです。
二つ目は,ビンボンの別れのシーンのことです。
記憶から消されるという悲しいシーンなのに,とてもあっさりしていました。そもそも,ビンボンのライリーとの思い出を語るシーンもとてもあっさりしています。
頭の中の話なので気にすることでもないのかもしれませんけど,記憶から消されるはずなのに,消えた直後にヨロコビがビンボンのためにもライリーを助けるよ,みたいなことを言ったのが少し気になりました。でもその後は,ヨロコビがビンボンについて語るシーンは一切無かったので,きっと彼はその後みんなから忘れ去られたのだと思います。それはそれで悲しいです。ビンボンは消えたので何も言わないから,何も語られないと言う状況がとても悲しいです。
私はロケットで飛ぶシーンで,そのまま一気に司令部まで上がる展開でも良かったと思います。でもやっぱり,『ライリーのためなら死ねるタワー』も面白くていいですね。頭の中の楽しさを表した最後としてはあれもいいと思います。大人数を犠牲にしていましたけど,ライリーの理想の男子だけあって有言実行で良い人たちだったと思います。
そして最後に気になったのは,ムカムカの存在です。最初に名前を見た時はイカリとかぶっていないかなと思っていました。しかし,実際見てみるとイカリは全くかぶっていませんでした。でも,ムカムカしているという印象もそんなにありませんでした。英語版では『Disgust』で『嫌悪』らしいのですけど,その印象も無いです。
私の中の彼女の印象は,利口で優しいとてもいい子でした。ライリーがおしゃれな友達と仲良くできるように気遣っていたり,表現できないけど両親に対する愛情を持っていたり,イカリをうまく利用して司令部の窓を破ったりする様子を見てそう思いました。
私の印象での彼女の名前は『ムカムカ』ではないです。『ツンデレ』,もしくは『テレヤ』です。
まとめ
自分の感情を好きになって大事に思うことができるような,とても温かい話でした。頭の中の描写もとても楽しいもので,映像的にも見ていて少しも飽きません。自分に自信が無くなった時には,また観ようと思える素敵な映画です。
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