ジョーカー
2019年公開のアメリカ映画。日本でも同年公開。出演 ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ。監督・脚本 トッド・フィリップス。
© 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & © DC Comics”
貧しく孤独であっても世界に笑顔を届けようとしていた心優しい一人の男が、「バットマン」の悪役、ジョーカーになっていくまでの話。
あらすじ
ゴッサムシティの片隅に住むアーサー・フレックは、コメディアンになることを夢見る心優しい男だった。彼は貧しい生活の中でも、共に暮らす母親を助け、人々を楽しませるためのピエロメイクの大道芸人をして暮らしていたのだ。
しかし、社会はそんなアーサーに冷たかった。世間は、貧しくて弱くコメディアンになる夢を持った彼を、笑い者にして馬鹿にしたのだ。そしてさらには社会までもが病気を持っている彼を見放した。
そんな状況でも、アーサーは笑いを絶やさず過ごしていた。だが、ある出来事をきっかけにして、彼はゴッサムに混乱を招く大きな事件を起こしてしまう。そしてそれが、悪のカリスマジョーカーを生み出す引き金となっていくのだった。
世界に笑顔を届けようとしていた心優しい人間が、狂気溢れるジョーカーに変わってしまった原因とは…。
感想(ネタバレあり)
とっても悲しくて衝撃的で複雑な映画でした。
私はこれまで、バットマンは「ダークナイト」をテレビで見たくらいでしか知らなかったので、ジョーカーはバットマンを困らせるためにめちゃくちゃなことをする、めちゃくちゃ悪いやつだという印象しかありませんでしたが、そのイメージがこの映画を観て一気に覆りました。
今作でも結局悪いことはしていましたが、社会のせいでもあり同情できる面もあって、ジョーカーに対する私の見方が変わりました。これからジョーカーを見る時は、もっと深く見られる気がします。
怖くて悲しいけれど、多くの人が不満を持つ現代社会について深く考えさせられる面もある映画でした。
アーサーについて
人々を楽しませるという立派な夢を持って、その夢やお母さんのために頑張っていたのに、社会から見放されて笑い者になっていたアーサーが、見ていてとても可哀想でした。アーサーを演じていたホアキン・フェニックスさんの笑う演技についても、その中に悲しさや怖さなどのいろんなものを感じられるようで衝撃的でした。
そして、ジョーカーのようになるのは絶対に良くないとは思うけれど、夢のために頑張る人を馬鹿にしたり、酷い目にあっている人を見放すような社会に復讐しようとする気持ちは、分からなくもなくて複雑な思いでした。
現実の社会が、劇中のゴッサムシティと同じように格差も不満も大きい世の中なので、現実の誰がジョーカーになってもおかしくない危険な映画という話に頷ける部分もありました。でも私は、そんな不条理で狂ったような世界でも、自分だけは見放されそうになっている人たちの良いところを笑わずに見られる優しい人になりたいなというのを一番に思いました。
アーサーが悲劇的だと思っていた自身の人生を喜劇だと感じられたように、この映画についても、考え方次第では危険なものからそうでないものまでいろんな見方ができるのかなと感じました。
観る人の現在の環境や世間の状況によって、思わされることが違うのも、また面白いと思いました。私は舞台が現実とリンクし過ぎているように思ったこともあって、アーサーの物語は悲劇的なもののように感じましたが、もう少し現実が優しい世界になれば、私もこの映画を爽快感のあるかっこいいフィクションの映画として観られるのかもしれません。またいつかもう一度観た時に、そんな風に別視点で楽しめるかもしれないと思うと今から楽しみになってきます。ちょっと怖い気持ちもあります。
まとめ
これまではただの悪いやつだと思ってジョーカーを見ていましたが、これからはもっと深く見られる気がしました。劇中に何度もあったホアキン・フェニックスさんの笑う演技には、それだけでいろんな想いを感じさせられて驚きました。
観る人の今の環境や世間の状況によって、思わされることも変わる映画かなと感じました。しばらくしてまたこの映画を観た時に、自分がどう感じるかが今から少し楽しみでもあり怖くもあります。
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