モーグリ: ジャングルの伝説
2018年Netflix公開の映画。出演 クリスチャン・ベール、ケイト・ブランシェット、ベネディクト・カンバーバッチ。
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ジャングルで動物たちに育てられた少年が、周りとの違いに苦しみながら自分の居場所を探していく話。
あらすじ
とある運命の夜。
トラのシア・カーンが、古くから続くジャングルの掟を破り、人間の村を襲った。
そして一匹のクロヒョウが、生き残った一人の子供を、自分が暮らすジャングルに住むオオカミの群れの元に連れて行ったのだ。
その子を見つけたオオカミたちと群れのリーダーのアキーラは、その子をオオカミとしてみんなで育て、つけ狙うシア・カーンから守っていくことを決めた。
ジャングルがその小さな生き物に希望を託した夜だった。
それから数年後、少年はモーグリと名付けられ、自分を拾ったクロヒョウ、バギーラの背に乗ってジャングルを駆け回れるほどに成長した。
モーグリは周りのオオカミと違う見た目で仲間外れにされることも多かった。だが共に育った家族のオオカミやクマのバルー、バギーラなどに励まされ、彼らにジャングルでの生き方を教わりながら暮らしていた。
しかしある日のこと。モーグリの実の親を殺したシア・カーンが、彼を狙って戻ってきたことが分かった。老いたアキーラの力が弱まっていることに気づいたのだ。
オオカミたちの中には、人間のモーグリがいるせいで群れ全体が危険にさらされていると考えて、彼を追い出そうとする者もいた。そしてバギーラは、モーグリの身の安全のために、彼をシア・カーンの手が届かない人間の村へ行かせることを提案した。
だが、モーグリの可能性に期待を寄せていたアキーラは、群れのもっとも古いしきたりで彼の運命を決めることにしたのだ。
それは走りの試験。獲物としてバギーラに追い立てられ、走って無事に逃げられたら合格。捕まったら落第。合格すれば狩りの群れに参加でき、周りに仲間だと認めてもらえる。しかし、それに合格しない限りは狩りの群れへの参加は許されない、というものだった。
足でほかのオオカミたちに勝てないモーグリは、手を使った走り方を練習して試験に挑んだ。特訓の成果もあってかなり健闘したが、ゴール直前で惜しくもバギーラにつかまってしまう。
その後、群れを追われたモーグリは、バギーラに言われたように人間の村に行くしかなくなった。そして人間に保護され、村で生活するにつれて、彼はその生活に馴染んでいった。トラを狙っていたハンターにナイフを使った狩りの仕方を学び、人間の友達もできた。
そんな時、村で楽しく過ごしていたモーグリの元に、ジャングルで一緒に過ごしていた一匹のオオカミがやって来た。力を付けたシア・カーンに群れを乗っ取られ、生き残るためには人間のモーグリの力が必要だということだった。しかし、人間の村に新たな居場所を見つけていたモーグリは、それを断って村に残った。
だがその後、人間のとある事実を知ってしまったことで、モーグリはそれまでのジャングルの掟とも、人間のしきたりとも違う新たな考えをもって、ある行動に出る決意をするのだった。
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モーグリ: ジャングルの伝説 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
感想(ネタバレあり)
ディズニーアニメの『ジャングル・ブック』を少し見た記憶があったため、動物たちとワイワイしながら子供が冒険するイメージで観始めたのですが、意外とワイワイしていなかった上に、モーグリ以外の人間も結構出てきて驚きました。
しかし、人間として生まれてオオカミとして育ったという特殊な環境のモーグリが、オオカミとしても人間としても完全に馴染めない中で、自分だけの生きる道を見つけ出すという話の軸は、多様性などを考えるようになった今風の話で、とても良かったです。
動物がメインになる話ですけれど、人間がそれほど悪く描かれていなかったことも私は好きでした。むしろ途中までは優しい印象しかありませんでした。
トラはもちろん悪いですが、オオカミたちもモーグリを追い出していますから、悪いところがあるのはお互いさまでしたね。観た人がどちら側にいるのがいいか考えさせられるところも、また良いと思いました。
動物たちのアクションシーンももちろん迫力があって楽しめました。
動物たちについて
動物たちは俳優さんがモーションキャプチャーで演じられているそうなので、とても表情豊かで親しみやすいキャラクターになっていました。リアルではないのかもしれませんが、私はリアルのオオカミやトラをまじまじと見たことがないので、違和感はそれほど感じませんでした。本当にモーグリ役の子と並んでいるように見えました。
特に、クロヒョウのバギーラの毛並みがとてもきれいで、できるならちょっと触ってみたくなりました。バギーラはキャラクターもかっこよかったので、とても好きになりました。
彼がモーグリのことを特別だと言い続けていたから、モーグリは最後に決断できたのだと思います。
かっこいいクロヒョウだなとは思っていましたが、クリスチャン・ベールさんが演じていたことには、見ている時にはまったく気が付きませんでした。それを意識して見たら、そんな気もするってくらいでした。
ベネディクト・カンバーバッチさんについては、意識してみても見た目はあまり分かりませんでした。
気になった点について
全体的に楽しめましたが、途中に少しだけ気になった点がありました。
中盤でモーグリが人間の村に入って、初めてハンターのロックウッドさんが話すシーンです。そこで、ロックウッドさんはオオカミたちが話していたものと同じ言葉で、モーグリに話しかけるんです。
あれ?としばらく思いました。もしかしたらこの人は凄腕のハンターで、オオカミ語を話すことができるのか、それともオオカミたちが元から英語を話していたのか。そんなことを考えながら見ていました。
しかししばらく見ていると、モーグリとロックウッドさんがまともに会話して意思疎通をしている様子が全くなかったので、おそらくは観る人に分かりやすくするため、動物語を英語に翻訳して流しているという設定だったのだと思います。
なのでモーグリはたぶん、ロックウッドさんの言っていたことをちゃんと理解できていなかったのでしょう。もちろん、あんなに表情豊かな動物たちと一緒にいたので、表情とか言い方で何となく察してはいたと思いますが、ちゃんと言葉で意思疎通ができていたら、結末はまた違ったかもしれません。
細かいことを言えば、最後のシーンでシア・カーンが象にボコボコにされていたのも、少し残念に思いました。もしモーグリが象の輪の外にいたら、モーグリが何もしなくても死んじゃうんじゃないかと思いました。そんなことをしたら、ストーリーが破綻してしまいますが。やっぱり基本的に大きいほうが強いのだなと感じました。
それから、バギーラのモーグリの呼び方が、字幕では『弟よ』になっていたところが、吹き替えでは『リトルブラザー』だったのも気になりました。理由は良く分からないですが、特殊な撮影をしてそうなので、ヒョウの口に合わせるのが難しいのかもしれません。
まとめ
ディズニーアニメの『ジャングルブック』とは違うところがありますが、考えさせられる部分があって、私は面白かったです。動物たちも表情豊かで親近感湧きましたし、迫力もありました。
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