ロッキー3
1982年公開のアメリカ映画。日本でも同年公開。監督・脚本・主演 シルヴェスター・スタローン。
『ロッキー2』の続編。チャンピオンになってハングリー精神を失ったロッキーが、アポロと協力してそれを取り戻し、再び栄光を取り戻すために奮闘する話。
あらすじ
ロッキー・バルボアはアポロ・クリードとのリターンマッチに勝利し、新たなヘビー級世界チャンピオンになった。
その後もロッキーは、トレーナーのミッキーの指導の下で試合を続け、10度のチャンピオン防衛を果たした。さらには、チャリティーイベントやテレビにも数多く出演し、国民の人気者となっていったのだ。
だが、ロッキーが豪邸に住みテレビに出ている間にも、世界タイトルを取るために着々と力を付けている男がいた。名前はクラバー・ラング。彼はロッキーがチャンピオンを10回防衛している間に、世界ランキング1位になっていた。
チャンピオンを目指すクラバーは、ことあるごとにロッキーと闘う意思を示していたが、なぜがロッキーがそれに応えることはなかった。
そんなある日、ロッキーのそれまでの功績をたたえて、美術館に彼の像が建てられることになった。その除幕式の場で、ロッキーは自身のボクサー引退を発表したのだ。
しかし、その場に居合わせたクラバーがすぐさま声を上げた。ランキング1位の自分と闘わないままロッキーが引退することが許せなかったのだ。彼はその場でロッキーたちを挑発して、タイトルマッチを申し込んだ。彼の挑発の言葉に怒ったロッキーはすぐにそれを受けたが、ミッキーは賛成しなかった。
ミッキーは、ロッキーには勝ち目がないと考えていた。ロッキーが今まで10回もタイトル防衛できた理由は、ミッキーが弱い相手を選んでいたからだったのだ。
ロッキーはそれを聞いてショックを受けたが、クラバーと闘うためにもう一回だけトレーナーをやってくれるように頼み、ミッキーはしぶしぶそれを受け入れた。
しかし人気者になったロッキーは、以前のような本気のトレーニングをすることはなかった。彼が行ったのは、見学に来た周りの人の対応をしながらの、格好つけたトレーニングだった。
そしてクラバーとの試合当日
ロッキーはいつも通りに、ミッキーと一緒に試合を始めようとしていたが、その直前に控室でミッキーが倒れてしまった。ロッキーは彼がいないままで試合を開始したが、ミッキーの助言を実践できないまま、第2ラウンドで無残なノックアウト負けを喫してしまう。
そして、負けて戻ってきたロッキーの目の前で、ミッキーは静かに息を引き取った。
ミッキーを失ったロッキーは、かつて彼とトレーニングをしていたジムを訪れた。そして、そこで落ち込んでいた彼の前に、彼の宿敵であり元チャンピオンのアポロ・クリードが現れたのだ。アポロはロッキーにこう言った。
「違ったボクシングを俺が教えてやる。二人が組めば世界一のタイトルをもう一度取れる。」
クラバーとの再戦を決めたロッキーは、アポロとともに彼の古巣のジムに向かった。そこでアポロから、ボクシングの基礎から鍛えなおしてもらい、クラバーとの闘いに備えたのだ。
ロッキーとクラバーのリターンマッチ当日
ロッキーを鍛え上げたアポロは、かつて自身がロッキー戦で着けていたものと同じトランクスを渡し、試合後のある約束を取り付けてからリングに送り出した。
そして、アポロのトランクスと彼の技術を身に着けたロッキーの、失った栄光を取り戻すための闘いが始まったのだ。
感想(ネタバレあり)
ロッキーが途中で落ち込み、ボクシングに本気で打ち込めなくなって、エイドリアンたちに励まされて復活する展開は、言うまでもなく前回と同じです。
今回はやはり、それまでほとんどロッキーの引き立て役だったアポロが、とてもかっこよく活躍したのが印象的です。『ロッキー2』ではロッキー大好きおじさんの印象しかなかったですが、ロッキー大好きおじさんのままで、とても懐の深い人になっていて驚きでした。前作では、クラバーと同じくらいロッキーを煽りまくっていた気がしますが、今回の彼はまるで別人のようでした。やっぱり敗北を乗り越えると人は変わるものだなと実感しました。
ストーリーについて
ストーリー的には、これまで再起のきっかけになっていたミッキーがいなくなったという、今までに無い絶望感がありました。しかし、だからこそ、かつての強敵のアポロがそこに現れる展開はとても熱くて最高でした。
アポロがとても頼りになる人になっていてかっこよかったです。彼がロッキーに『違ったボクシングを俺が教えてやる』と言った瞬間に、もうそれからの流れがはっきり予想できたくらいでした。これから、あの音楽を流しながらアポロの技術を身に着けて、それを使ってクラバーにリベンジして逆転する展開になるのだろうと、確信できました。実際、ほとんどそんな展開になってくれるところも、安心して楽しめるこの映画の良いところの一つです。
私が一番印象に残ったのは、最後の最後の、ロッキーとアポロが二人きりで試合をするシーンでした。二人の拳が当たる瞬間に、映像が止まって終わる演出がかっこよすぎて痺れました。最初に見た時は、あまりのかっこよさに巻き戻して何度も見てしまったくらいです。二人であの試合をするためだけに、ロッキーを鍛え上げたアポロの心意気もとてもかっこよかったです。このシーンは『クリード チャンプを継ぐ男』でも話題に上がっていたと思います。
ロッキーたちについて
アポロが活躍したという理由もありますが、私はこの映画に関してはロッキーにあまり良い印象がありません。
『ロッキー』、『ロッキー2』と比べると、急に人格が変わったなという思いがありました。これより前はもっとおっとりしていて、他人に優しかった気がします。普段はのんびりしていて優しいけれど、エイドリアンが応援してくれるボクシングになると、とても真摯に向きあっていく姿勢がかっこいいと思っていたのですが、それが変わってしまっていて少し残念に思いました。ミッキーとアポロはハングリー精神を無くしたと言っていましたが、これはハングリー精神がどうこうの問題ではないと思います。明らかに以前よりもはっきりした性格に変わっていました。『ロッキー2』の時から調子に乗る人ではありましたが、アポロに勝ったからといって、そんな変わり方するかな?と疑問に思ってしまいました。
私が今回のロッキーの行動で一番許せなかったのは、一回目のクラバーとの試合に向けてトレーニングするシーンで、周りに格好つけてばかりで真面目にトレーニングしていなかったところです。クラバーとの試合を反対していたミッキーの意見に逆らって、自分で決めた試合なのに、あの態度は無いです。何よりも、全力で指導しようとしていたミッキーが可哀想でした。あれが最後になるなんて酷いです。その後、アポロの元でハングリー精神を取り戻すのですが、だからと言って私はあれを無かったことにはできませんでした。真剣にトレーニングしていなかったことをもっと後悔してほしかったです。
2までのロッキーなら、そんなことはしないだろうと思いました。これはハングリー精神を無くしたせいかもしれません。
この時のロッキーは私はあまり応援できなかったです。一人で一生懸命トレーニングしていたクラバーの方に勝ってほしいとすら思いました。
そもそも私は、クラバーのことも嫌いじゃないです。全力でチャンピオンを目指していて、お金なんて関係なくひたすら強さを求めている彼の姿は、単純にかっこよかったです。ロッキーを挑発して試合を挑むときも、『俺に闘うチャンスをくれ』と言って頼んでいるくらいでしたから、本気でロッキーと闘いたいだけで、悪い男ではないのだろうと感じました。
アポロはクラバーのことを口の減らないガキ、みたいに言っていましたが、『ロッキー2』の時のアポロもロッキーに同じようなことを言っていましたからね。ロッキーが言うならともかく、アポロは人のことを言えないだろうと思いながら見ていました。
でもやっぱり、ロッキーの最大のライバルはアポロだと思います。クラバーにはロッキーは余裕をもって勝っていましたが、アポロの時は本当に一秒の差でしたから。そして何よりも、あの最後のシーンが最高だったので。
まとめ
大筋は前作とあまり変わりませんが、アポロとの関係がとてもかっこいい映画でした。ロッキーの性格の変化が少し気になりましたが、エンタメ映画としてとても楽しめる熱いストーリーだったと思います。
ロッキーとアポロの最後のシーンは、本当に何度も見たくなるくらいかっこよかったです。アポロは次で最後なのが本当に惜しいキャラクターです。
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