ボス・ベイビー
2017年公開のアメリカ映画。日本では2018年公開。吹き替え声優 芳根京子、ムロツヨシ、宮野真守、山寺宏一。ドリームワークス・アニメーション製作。
(C)2017 Dreamworks Animation LLC. All Rights Reserved.
一人っ子で両親からの愛情をいっぱい注いでもらっていた少年の家に、おっさんのようなスーツを着た赤ちゃんがやって来て騒動を起こす話。
あらすじ
一人っ子で7歳のティモシー・テンプルトン(ティム)少年は、幸せで完璧な人生を送っていた。テンプルトン一家は三人家族で、両親の勤務先は世界最大のペット会社であるワンワン株式会社。彼らは新製品を世に送り出すかっこいい仕事をしていたが、どんなに忙しくても、ティムとの時間だけはしっかり作っていた。
しかし、ある日を境にティムの人生は大きく変わってしまう。ティムの家に突然赤ちゃんがやって来たのだ。両親がティムの弟と言うその赤ん坊は、スーツを着込み、ブリーフケースを持って、タクシーでやって来た。
それからというもの、赤ちゃんは夜中でも構わずに泣き出して、ティムの両親をこき使い続けた。そして、ティムの両親はその赤ちゃんにかまってばかりで、彼の相手をあまりしなくなっていったのだ。その生活の中では間違いなく、その赤ん坊がボスだった。
赤ん坊に両親からの愛を奪われ、不満を募らせたティムは、どこか怪しげな行動をしている赤ん坊のことを調べ始めた。そしてある夜中、ティムは赤ん坊の部屋で驚くべき光景を目にしたのだ。なんと赤ん坊が、おじさんのような声で誰かと電話で喋っていたのだ。赤ん坊の見た目で大人びた言動をする彼は、自分のことをボスと名乗り、ある任務のためにテンプルトン家に来たと語った。
そして、いがみ合っていた二人は、お互いの利益のためにその任務を協力して行うことになった。彼らはその旅で、それまでは知らなかった大事なことに気づいていく。
感想(ネタバレあり)
見た目は赤ちゃんで言動はおじさんというボス・ベイビーのキャラクターはもちろん面白かったのですが、それに加えてストーリーの展開もとても丁寧で分かりやすくまとまっていたので、本当にファミリー映画のお手本みたいだと感じました。
物語の中で、盛り上げるところや感動させるところには、必ずと言っていいくらい、それより前のシーンで使った物や言葉を伏線として持って来ていたところは、その感動が分かりやすくて良かったです。彼らがそれまで築いてきたものの大切さを、簡潔に表している感じがしました。
さらには、派手なアクションシーンなども多くて、子供も飽きにくいだろうと思わせる作りになっていました。
どんでん返しや予想を裏切るような展開はほとんどないですし、ディズニー映画で見たような気がする展開ではありましたが、細かいところまで丁寧で、子供から大人まで楽しく観れる映画だと思いました。
声優さんについて
視覚的だけではなくて、聴覚的にも良かったと思います。
私は特に、ティム役の芳根京子さんの声がすごく好きです。とっても可愛くて優しそうで、自然な少年声でした。細かいことを言うと、『赤ちゃん』の言い方がいちいち可愛いなと思いました。私はこれを観るまで、芳根さんのことは好きでも嫌いでもなかったのですが、一気に好きになりました。
私は最後の、ティムからの手紙のシーンが一番好きで、かなり感動してしまったのですが、その感動の半分は芳根京子さんの声のおかげだと思います。そのシーンの、
『僕と一緒に年をとろう』
映画「ボス・ベイビー」ティムのセリフ
という言葉に私はとても胸を打たれました。それまで最悪の意味で使っていたのと同じ言葉を、真逆の良い意味で使うというのはよくある手法かもしれませんが、芳根さんの、あの綺麗で可愛くて優しそうな声で言われると、何回でも言ってほしくなりました。
ボス・ベイビー役のムロツヨシさんの声も、ちょっと憎たらしい感じがすごくマッチしていました。個人的には、驚いたときなどの不意に出ている声が完全におじさん声なのが面白かったです。途中からはちゃんと可愛く感じてきました。
その他の脇役のゲスト声優さんもまったく違和感はありませんでしたし、重要な脇役には人気の声優さんを使っているところも、私には安心感があって良かったです。隙が無いなと思いました。
表現について
日常に当たり前にあるものを面白おかしく表現しているのが、素直にすごいなと思わされました。
例えば、赤ちゃんが泣き出して、お母さんが持っていたミルクをあげる時に、
奴は来た時から人を怒鳴りつけ、こき使った。
映画「ボス・ベイビー」のナレーション
とか、小さいテーブルに座って泣き出してしまった赤ちゃんと、そこに集まる両親のことを、
奴は家のど真ん中にオフィスを構え会議を開いた。
映画「ボス・ベイビー」のナレーション
とかです。私はそんな表現を考えたこともないですけれど、言われてみればそうとも思えて面白かったです。
やはり、みんなの身近にある日常のことを面白く表現するのが、多くの人に楽しまれる方法の一つなのだろうと思います。ディズニー映画でもそんな感じが多い印象がありますが、世界的にヒットする作品は、こういう表現がすごくうまいと思います。
この作品の売りの一つでもある赤ちゃんの描写も面白かったです。
最初のシーンの、赤ちゃんたちがベルトコンベアみたいなものの上に乗っていて、流れ作業みたいにおむつを着けられたり、家族と経営に振り分けられるところとか、どんな風に考えたらそんな発想が生まれるのか、不思議に思ったくらいでした。
ボス・ベイビー自体もそうですが、単体でぶっ飛んだ発想に見えても、ちゃんと全部使ってまとめているのもすごかったです。
気になった点について
強いて気になった点をあげるならば、空港で仲直りするきっかけが突然だった気がしたところと、エルヴィスたちの存在理由です。しかし子供が仲直りするきっかけなんて、現実の子供でもよく分からないものですから、そういうものだと思って受け入れました。エルヴィスについては、最後まで何かの伏線かと思っていましたが、結局よく分からなかったです。でも、動きや声は見ていて面白かったので、分からなくてもいいやと思いながら見ていました。
まとめ
ボス・ベイビーのキャラクターが強いのはもちろん、ストーリーも丁寧に分かりやすく作られていて、ファミリー映画のお手本のような映画でした。子供から大人まで、飽きずに見られるような演出があって、その発想には驚かされました。
声優さんも皆さん自然で、キャラクターにとても合っていたと思います。私は芳根京子さんの声がとても好きになれました。
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