ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「舟を編む」の感想、あらすじ

舟を編む

2013年公開の日本映画。出演 松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー。監督 石井裕也。原作 三浦しをん『舟を編む』。


(C)2013「舟を編む」製作委員会

言葉に対するセンスを見出されて辞書編集部に配属になった主人公が、個性的な編集部のメンバーと協力しながら、新しい辞書を作っていく話。口下手な主人公が、恋をした相手に気持ちを伝えるための言葉を探す様子なども描かれる。

あらすじ

一九九五年。

出版社の玄武書房に勤める馬締光也(まじめ みつや)は、ある日言葉に対する天才的なセンスを見出されたことによって、辞書編集部に配属されることになった。

 

そこで進められていたのは、『大渡海』という中型辞典を作る企画だった。

辞書編集部のメンバーは、監修者の松本教授とともに集めた100万以上の言葉の中から、辞書に載せる約24万語の見出し語を選定し、今を生きている人たちに向けた辞書を作ろうと考えていたのだ。

10年以上の長い時間をかけて作業をしていく辞書編集は、単純な作業が多く厳しいものだったが、馬締はその世界に魅力を感じすぐに没頭し始めた。

 

そんな時、馬締は下宿先の大家の孫、林香具矢に出会い彼女に一目惚れしてしまう。

口下手な彼はその後、辞書編集部のメンバーの力を借りて少しずつ彼女との時間を過ごしていった。だが、香具矢にその気持ちをうまく伝える言葉はなかなか見つからなかった。

 

そして同じ頃、辞書づくりにも大きな問題が発生する。『大渡海』の出版中止が会社の中で噂され始めたのだ。

電子辞書が普及し始めていたその時代に、出版までに長い時間がかかり赤字が続く紙の辞書を作り続けることを、会社の上層部は良く思っていなかった。

馬締たち辞書編集部は、これまでよりも現代に踏み込んだ内容である『大渡海』の長所を局長に伝え、編集を続けさせてもらえるように説得し始めるのだったが…。

 

今を生きる新たな辞書『大渡海』が完成する日は来るのか…。そして、馬締光也の恋の行方は…。

感想(ネタバレあり)

今まで考えたこともなかった辞書づくりについて初めて知って、まずその大変さや壮大さに単純に驚かされました。『大辞林』の完成に28年かかっていることを聞いた時は、思わず声が出てしまうくらいびっくりしました。

 

そして同時に、それに込められていた編集者さんたちの熱い思いに気づいて感動もさせられました。

特に、『恋』の語釈をその時香具矢に恋をしていた馬締が書いていたり、『ダサい』の用例に西岡さんのダサいプロポーズの実体験を載せていたところが好きでした。

実際にそれを経験した時の本音から出た、その時の二人にしか書けないような語釈だったので、大渡海はまさにその時代に生きた人の本当の気持ちが閉じ込められた、生きた辞書になっているなと感じられました。

そして当時の彼らが感じていたその思いが、紙の辞書になって何十年何百年先に残っていくというのは、とてもロマンがある熱いことのようにも思いました。

 

正直なところ、この映画を観るまでは辞書なんてどれも同じようなことが書かれているものだと思っていました。ですが、その何十万もある見出し語の全てに、当時それを作った人の人生の一部や、言葉の意味を正確に伝えたいという思いが込められていることを知ると、それぞれが少しずつ違う辞書というものが、すごく面白く感じられました。

私は馬締さんのように辞書をたくさん集めるほどのことはしないと思いますが、人を繋げるために辞書を作ってくれた編集者さんの思いを無駄にしないためにも、これからはそれらを使って、広大な言葉の海を上手に渡っていきたいと思わされました。

そしてできるなら、その裏にある編集者さんの人生や考え方などを少しでも感じ取って、そこも楽しめるようになれたらいいと思います。

 

物語については、喋るのが苦手な馬締さんが辞書を作るために一生懸命に頑張る姿が、自然に応援できて良かったです。そして周りの人も、最初こそ馬締さんに良くない印象を持つことはあっても、すぐに彼の良さが分かって協力し始める優しい人ばかりでした。

意外な展開やすごい勢いを感じる場面はあまりなく一歩一歩真面目に進んでいくような、全体的に静かな映画でしたが、ほとんどストレスなく観られる温かい話でした。

言葉について

やはり辞書を作る人たちの話なので、彼らの言葉についての思いがとても強くて印象的でした。


中でも私は、小林薫さん演じる荒木さんが馬締に言った

「長年こういう作業をしていると面白いもんで指紋がなくなる。自分の指先が言葉に触れる。世界に触れる喜びってのかな。辞書編集者の醍醐味だ。」

映画「舟を編む」の荒木さんのセリフ

というセリフが、かっこよくて好きでした。言葉集めや見出し語選定などの作業で指紋が無くなることを、『指先が言葉に触れる』、『世界に触れる喜び』という綺麗な言葉で表現できるというのが、長く辞書編集の仕事をしてきた荒木さんの努力の成果を示しているように感じました。それを優しく言う小林薫さんの静かな演技もまた良かったです。

 

その他では、加藤剛さん演じる松本先生が、辞書のことを広大な言葉の海を渡る舟に例えて、穏やかで丁寧な言葉だけど熱く説明するところもかっこよかったです。

 

また、宮崎あおいさん演じる香具矢が、馬締からの告白の言葉を自分だけが読みたいと思っていて、その後彼の口からの言葉で聞きたいと言っていたところも、二人とも可愛くて良かったです。さらには、その一連の流れで店の大将の人の良さまで感じられてほっこりしました。

 

いろんな形での言葉への強い思いが、あらゆる場面であふれているようだったので、全部を書き留めたいくらいに思えました。

登場人物について

私はオダギリジョーさんが演じていた西岡さんのことがとてもかっこ良く感じました。

 

人付き合いが上手い自分とは違うタイプの馬締のことを初めは変な感じに見ていましたが、彼が努力していることを理解すると、すぐに親身になって応援してあげるところが、とてもかっこ良かったです。そして本気で辞書を作りたがっていた馬締のために自分が異動になって、その後も宣伝部として大渡海出版への力になっていたところも最高にイケメンでした。

『イケメン』という言葉は、顔だけではなく生き様などのかっこよさを表す場合がある言葉になっていますが、西岡さんはそのどちらの意味でもイケメンだったと思います。

まとめ

それまでは全く知らなかった辞書づくりについて知って、その大変さや込められた熱意に感動させられました。

『大渡海』には本当に編集者たちの心や人生の一部が込められていたように感じられたので、これから現実の辞書を読むときも、もっと隅々まで大切に読みたいと思わされました。

登場人物たちの言葉についての思いも、深いものを感じて良かったです。オダギリジョーさんはイケメンでした。

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