WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜
2014年公開の日本映画。出演 染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明。監督 矢口史靖。
(C) 2014「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」製作委員会
ひょんなことで林業の仕事をすることになった都会育ちの青年が、ケータイの電波も何もない田舎で暮らすことで、その土地の人々や林業の魅力に気づいていき、自分の進路を見つけていく話。
あらすじ
大学受験に失敗した平野勇気はある日突然、新たな林業の担い手となるための研修生の募集に応募した。都会育ちで毎日遊び歩いていた彼が林業を始めると聞いて周りは驚いていたが、その理由は単純明快なものだった。それは、パンフレットに写っていた女性がきれいだったから、というだけであった。
そうして、ケータイの電波も届かない田舎での、彼の一年間の研修プログラムが始まった。最初の一か月は資格を取るための基礎講習、それを終えてから職場に出て、11ヶ月の現場研修を行うというものであった。
本職の林業家たちの厳しい指導を受け、勇気は最初の一か月のうちに逃げ出しそうになった。だが、パンフレットに載っていた綺麗な女性に一度だけ会えたこともあって、彼は再び彼女に会いたい思いで、一か月間耐えきったのだ。
講習を終えた勇気は、講習施設よりもさらに山奥にある神去村の中村林業という会社で働くことになった。そして神去村に住む野生的な会社の先輩、飯田与喜の家で居候しながら、残りの11ヶ月を過ごすこととなったのだ。
林業家として厳しい先輩のもとで働く生活は、勇気にとってはつらいものだった。だが、電車もバスもないド田舎の神去村には、そこから逃げる手段すらなかった。
しかし、そこで暮らしているうちに良いこともあった。例のパンフレットに写っていた女性、石井直紀が同じ村に住んでいたのだ。勇気は小学校の教師である彼女に近づこうとするうちに、村の子供たちとも仲良くなり、他の大人たちとも自然に打ち解けていった。
そして林業からも逃げずに続けたことで、彼は100年以上先の未来を作るその仕事にも、魅力を感じるようになっていたのだ。
まだまだ力不足な場面はあるが、中村林業の親方や与喜は、勇気のことを仲間だと認めるようになった。だが、まだ勇気のことをよそ者だと言い、よく思わない者も住人の中には何人かいた。彼らは、神去村で48年に一度行われるお祭りにも、勇気を参加させることに反対していたのだ。
しかしその後に起きた村の騒動をおさめたことで、勇気は村人に見直されることになり、正式に祭りへの参加が認められた。
だが、祭りで行われる神事の内容を目の前にした勇気は驚き、誰もが思いもよらなかった騒動を巻き起こしていくことになるのだった。
林業家としての彼の未来、そして勇気と直紀の恋の行方は…。
感想(ネタバレあり)
予想を大きく裏切られることや、意外な展開はほとんどありませんでしたが、怒られながら頑張って仕事をしていくうちに、少しずつ山の男になっていく勇気の姿は自然に応援できました。
林業のことは私もまったく知りませんでした。なので、劇中の勇気と一緒にその奥深さを知って驚いたり感動もできて、設定に入り込んで楽しめました。コメディの部分もたくさんあり、とても観やすい映画でした。
人間も言ってみれば自然の一部なので、木と同じようなものだと感じました。100年以上大事に手入れされたことで立派に育っていた木と同じように、勇気も与喜さんたちに一年間大切に育てられたから、最後は立派に木を愛する人間になれたのだと思います。どちらもすぐに成果が見られるものではありませんが、与喜さんたちが諦めずに熱心に世話をし続けた結果です。
なかなか木と同じくらいの期間で世話をするものは無いと思いますけれど、成果が大きなものほど成長に費やす時間が長いものだとも思います。
自分の日常生活の中でも、結果が出ないで焦ってしまうことは多々ありますが、気長に、なあなあでやっていこうと思わされました。なあなあで続けていくことで、見えてくるものもあるかもしれません。
キャラクターについて
与喜さんをはじめとした神去村の人たちは、口調が乱暴だったり、かなり癖が強かったりしましたが、見ているうちにだんだんと良さが分かってくるような、いい人たちでした。
よく知る前のイメージは乱暴だったり大雑把な感じでしたが、徐々にその優しさや温かさ、奥深さを感じてくるあたりは、私の中の林業のイメージと重なるように思いました。
中でもやはり伊藤英明さんが演じていた与喜さんが、とても渋くてかっこよかったです。見た目ももちろんかっこいいですが、それに加えて中身がとても好きでした。
ぱっと見た感じでは一番乱暴でしたが、所々で周りの皆を気遣うような行動をしていたギャップが良かったです。さらに、勇気のことを使えないとかボロクソに言っておきながらも、最後までずっと見捨てずに指導していて、みんなの前で勇気のことを「ちゃんと山の男だ」とはっきり言ってくれた時は、めちゃくちゃカッコよかったです。
そんな林業への情熱あふれる渋さがあっても、お昼のお弁当が無いことですごく怒ったり、勇気と直紀さんとの仲をとても楽しそうに茶化したりする、小学生みたいな可愛げもあるところも、また良かったです。最後の別れのシーンで泣くほど悲しんでいたのも最高でした。
私にとっては、いろんな魅力あふれる最強のキャラクターでした。親方のトラックに走って追いついて飛び乗るところは、あのシーンだけ『ミッションインポッシブル』みたいで面白かったです。
直紀役の長澤まさみさんも、とても可愛いうえに、強い女性で良かったです。
最初は与喜さんと同じく、気が強くて厳しい人のイメージがありましたが、学校の子供や村の人たちにはとても可愛くて明るい笑顔を見せる優しい人でした。気が強いのは変わりませんが、自分にとっての大切なものをずっと大事に思い続けられる、芯の強い女性だったように思いました。
『海街diary』では田舎があまり似合わないようなかっこいい女性を演じていましたが、ここでは田舎を大切に思っている、また違うタイプのかっこいい女性でした。
しかし、私は長澤まさみさんのことが好きなので、最後はもう少しだけ勇気とのシーンがあっても良かったなと思いました。勇気が田舎から去るときの直紀のシーンはかなりあっさりしていたので、再会のシーンも欲しかったです。もう少しだけ田舎の長澤まさみさんを見たかったです。
林業について
林業について知るきっかけになって、素直に勉強になる部分が多かったです。映画を観るまでは少しも知る機会が無かったことだったので、驚かされることばかりでした。
その中でも木を切る場面が、私は特に強く印象に残りました。最後までチェーンソーで切るのではなくて、くさびを打ち込んで倒していくこと自体を初めて知りましたし、本当にゆっくりゆっくり倒れていくので、映画の画面的にも緊張感がありました。そして大きな木でも小さな木でも、切り口を大きくするだけで、やることはほぼ同じなのも興味深かったです。みんなで役割を分担して大きな木を切るときの、木が倒れる迫力もすごかったです。
また、漁業での魚の競りの様子はテレビなどでもたまに見かけますが、林業でも同じようなものがあることも、初めて知って少し驚きました。
全体的に、観る前に思っていたイメージよりもずっと背負うものが大きくて、大変でかっこいい仕事でした。
まとめ
林業というそれまでまったく知らなかった業界がテーマだったので、学びながら成長していく主人公と、同じような気持ちで応援することができました。
神去村のキャラクターも魅力的で優しい人ばかりで、笑える要素もあって見やすかったです。林業の仕事の勉強にもなって、興味深かったです。
すぐに成長がみられないことがあっても、なあなあで、気長にやってみようと思わされました。
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