ぼくは明日、昨日のきみとデートする
2016年公開の日本映画。主演 福士蒼汰、小松菜奈。監督 三木 孝浩。
(C)2016「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」製作委員会
同い年の女性に運命を感じて一目ぼれした大学生の主人公が、彼女との愛を育みながら、その運命に悩み、成長していく話。キャッチコピーは『たった30日恋するためにぼくたちは出会った』
あらすじ
1日目
美大生の南山 高寿はいつもの大学までの電車の中で、同じ車両に乗っていた女性に唐突に恋をしてしまった。
今まで誰とも付き合ったことがなく奥手な彼は話しかけるのをためらったが、同じ駅で降りたことをきっかけに、勇気を出して彼女に話しかけた。
「一目ぼれしました」
突然そんなことを言った彼に対しても、彼女は気持ち悪がることはなかった。彼女が乗る電車が来るまでの時間、ホームの椅子に座って高寿の話を聞いてくれたのだ。
彼女の名前は、福寿 愛美。高寿と同い年の二十歳だった。高寿は簡単な自己紹介を済ませると、昔の話などを続けて話そうとしていたが、彼女が乗る電車が来てしまってそれが遮られてしまう。
「また会えるかな?」
愛美との別れを名残惜しく思った高寿が、電車の方に向かう彼女の背中にそう尋ねた。すると、彼女はなぜだか涙を流しながら振り向き、
「会えるよ。また明日」
と答えて電車に乗った。
2日目
高寿は昨日と同じ電車に乗って愛美を探したが、その姿は見当たらなかった。それを残念に思いながら動物園に行き、学校の課題の絵を描いていると、そこに愛美が現れて話しかけてきた。
突然現れた愛美に、高寿は昨日話そうとしていたことの続きを話した。5歳の時に橋から落ちて死にかけたこと。その時通りすがりの女の人に助けてもらったこと。すると偶然にも、愛美も同じように5歳の時に死にかけたことがあると、彼に話した。
愛美の連絡先を聞いて分かれた高寿は帰宅した後、友人の上山の助けを借りながら、電話で彼女をデートに誘った。明日がいいと答えた彼女の言葉に驚くも、高寿はそれを受け入れた。
3日目
上山のアドバイスを受けて、高寿は愛美とのデートに向かった。
二人はその中で、同じものを素敵と思い、同じものを美味しいと感じて、共に楽しい時間を分かち合った。
一緒にイルミネーションを見て良い雰囲気になると、高寿は愛美に「付き合ってください」と告白した。愛美はまた涙を流しながら、それを受け入れた。
『また明日』それが彼らの合言葉のようになり、二人はそれから毎日のようにデートした。初めて名前で呼び合った時、初めて手をつないだ時、初めてキスをしたとき、愛美は高寿との仲が進展するたびに、涙を流していた。
15日目
愛美が高寿の家で過ごした後、彼は彼女が部屋に手帳を忘れていることに気が付いた。
その中身は、一見するとただの日記のようだったが、よく見ると奇妙な点があった。その日記は、ページが進むごとに、15日後から1日ずつ日にちを遡るように書かれていたのだ。
高寿が不思議に思いながらそれを見ていると、愛美から電話がかかってきた。
「私、あなたに隠してることがある。明日全部話すから」
一方的にそう言われた高寿は、納得できずにさらに愛美に質問したが、それ以上の言葉が返ってくることはなかった。
次の日、学校の教室で待つ愛美のもとに向かった高寿は、彼女から予想だにしない事実を聞かされることになる。彼は愛美とすれ違い始める運命に苦しめられながらも、彼女の本当の気持ちに向き合っていくのだった。
感想(ネタばれあり)
二回三回と見たくなるような凝った演出に加えて、劇中の時間の経過に福士蒼汰さんと小松菜奈さんの演技の変化がマッチしているところも、とても良かったです。物語の序盤と、中盤以降の雰囲気の違いもとても楽しめました。ですが、私がこの映画で一番衝撃を受けたのは、タイトルにもなっていて劇中に何度も出てくる二人のデートシーンでした。
二人のデートについて
この映画を映しているモニターが、いつもより強く光っているのではないかと錯覚するほどに、二人が楽しそうに過ごすデートシーンがとても微笑ましかったです。その様子が見られただけでも、この映画を観て良かったなと思わされました。
福士蒼汰さんほどのイケメンと、小松菜奈さんほどの美人が、あんなに幸せそうにしていると、お似合いすぎてもはや嫉妬する気も起きませんでした。イルミネーションの場面なんて、まるで二人のためにそれがあるのが当然のように見えました。完全に目の保養です。ありがとうございました。
ですが、そんな素敵な二人のことをとても気に入っていたからこそ、私にとって彼女が正体を明かした後の展開はかなり辛いものになりました。
ストーリーと設定について
切なかったです。愛美がことあるごとに泣いていたので、何か裏があるのだろうと思っていましたが、まさかあんな悲しいことになるとは思っていませんでした。あのまま当たり前のように、二人が楽しそうに仲を深めていく様子を見ていたいと思っていた私には、あの展開はとてもショックでした。
愛美の気持ちを考えると、とても悲しかったですね。特に最後の10分は、本当に見ていられないくらい切なかったです。それまでの時間で、愛美の境遇を想像して、勝手に悲しい気持ちになってはいました。ですが、実際に映像でそれをさらに見せられるのは、また違った衝撃で、見ていてさらに悲しくなりました。
高寿のほうが30日目まで愛美に他人扱いされることがない分、少しは楽な気もしますけど、相手に無理をさせていたと考えると、それもまた辛いですね。
もし、二人の運命が同じ方向に流れていたら、ほかの普通のカップルと同じように、思い出を共有できて、同じ時間をずっと過ごせていたのかもしれない。と、この映画を観終えた直後の私は、安易にそう考えました。ですが、よく考えるとそうではないですね。
そこを変えただけでは上手くいかない、というのもまた、この設定がよくできているなと思わされた点の一つでした。
時間が違う方向に流れていたからこそ、二人は5歳の時の命の危機を乗り越えられて、二十歳の時に再会できたのです。もし二人が同じ世界にいたら、二十歳の時に会えないどころか、二人とも5歳の時点で死んでいたかもしれないのです。
それに気づいたら、同じ時間は過ごせないけど、端と端を結んだ輪になって繋がっているという彼らの関係は、二人にとってはベストなのかもしれないなと思わされました。
物語の主題とは大きく外れてしまうかもしれませんが、二十歳の30日間が過ぎた後の二人には、私はそれぞれ別の人と出会って結ばれてほしいと思いました。
二十歳の自分と楽しい日々が送れるように、5歳の相手の命を助けるまでならば、お互いのことだけを考えていても良いと思います。ですが、問題はその先です。彼らが40歳になるときには、どちらにとっても相手が存在しなくなってしまうのです。あんなに悲しい分かれ方をしたのに、それからさらに、死ぬまで存在しない相手のことを想い続けるなんて、悲しすぎます。
もちろん、高寿と愛美が一緒になれるならそれが一番ですけれど、無理なら別の相手と幸せになってほしい。それぞれの30日目が終わって別れた後、二人がどちらも泣いている姿を見て、私はそう思ってしまいました。
自分のことながら、私が恋愛映画を観てそんなことを思うのはとても珍しいです。きっとそれだけ感情移入できて、登場人物のことが好きになれる作品だったのだと思います。
登場人物について
この映画は登場人物がみんな良い人で、すごく好印象を持てました。
高寿と愛美が優しい人なのはもちろんですが、私は東出昌大さんが演じていた高寿の友達の上山も、すごく優しくてかっこよくて好きになりました。
出てくる場面は割と少ないです。何なら出なくても話は成立しそうな人物ですが、その少ない場面で高寿にかけていた言葉がとても良くて印象的でした。
例えば
「自分の好きなものを見せろ。それを一緒に楽しめないなら、付き合っても意味がない」
とか、
「月と地球もある意味すれ違ってるって言えるよな。同じ距離をひたすらぐるぐる回って永遠に近づけない。これが恋人同士だったらマジつれーよな。お前らは会って話せるんだからさ、ちゃんと話せよ」
(「月は毎年4センチずつ離れて行ってる」との高寿の言葉に対して)
「じゃあなおさら今だな」
とか。
一般論とも受け取れる言葉ですけど、その時の高寿と愛美にぴったりの言葉をかけてあげていて、とてもできた人だなと思いました。
他にも高寿が愛美に電話をかけるときに、隣で話す内容を書いてあげてたところもとても良かったです。やっぱり、モテる男は女の人だけではなくてみんなに優しいものなんだと、改めて思わされました。
まとめ
主演二人のデートの様子がとても楽しそうだったからこそ、その運命のすれ違いにはとても心が苦しくなりました。劇中で上山さんが言っていたように、私の周りの人物は幸いにも、月と地球ほど近づくのが難しい関係ではないと思うので、すれ違った時にはちゃんと話してみようかなと思いました。小松菜奈さんは白いコートがとても似合っていました。
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