ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜
2011年公開の日本のアニメーション映画。映画ドラえもんシリーズ第31作。ゲスト声優 沢城みゆき、小林由美子。
(C) 藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2011
1986年公開作「ドラえもん のび太と鉄人兵団」のリメイク作品。北極で巨大ロボットの足を拾ったことをきっかけに、メカトピア星の鉄人兵団が地球を侵略しに来ていることに気づいたのび太たちが、地球を守ろうとする話。のび太たち人間と、ロボットの友情が描かれる。
あらすじ
ある夏の日。
もっとかっこいいロボットが欲しいと言われて、怒ったドラえもんはのび太と暑さから離れるために、どこでもドアで北極に行ってしまった。
その後ドラえもんを追いかけたのび太は、北極でボウリングの球のような青い物体を見つけた。そして球がピピピピという音を発した時、その場に巨大ロボットの足が降ってきた。さらにのび太がそれらを家に持ち帰ると、今度は家の庭に別の巨大なパーツが次々と降り始めたのだ。
のび太はドラえもんからのプレゼントかと思ったが違った。それはドラえもんにも、一切正体が分からない物だった。
のび太は巨大ロボットを組み立てたいと言ったが、その辺で組み立てると近所迷惑になることは明らかだった。なので二人は、ひみつ道具の『おざしきつりぼり』に『逆世界入り込みオイル』を垂らし、他の人間がいない鏡の世界に入ってから、それらを組み立てることにしたのだ。
空から降ってきた部品の中には、コンピューターの部品が見当たらなかった。だがその部分は、ドラえもんのひみつ道具『サイコントローラー』で代用することで、巨大ロボットは無事に組みあがり完成した。それは北極にやって来たことから、サンタクロースをもじって『ザンダクロス』と名付けられた。
のび太たちは鏡の世界にしずかちゃんを呼び、しばらく3人でザンダクロスに乗って楽しく遊んだ。だがその後、ふとしたきっかけで、ザンダクロスがとんでもない威力を持った地球外の破壊兵器だということが分かったのだ。
その危険性を深刻に考えたドラえもんは、ザンダクロスのことも鏡の世界のことも3人だけの秘密にして、関わるのはもうやめるようにのび太たちに言った。
ザンダクロスを失ったのび太はひどく落ち込んでいた。そんなのび太にリルルと名乗る少女が訪ねてきた。彼女はザンダクロスの本当の持ち主であり、それを見つけるためにのび太のところに来ていたのだ。
リルルがとても困っている様子だったので、のび太はザンダクロスを返すことにしたが、それは完全な形ではなかった。のび太はその頭脳である青い球を失くしていたのだ。リルルはそれを許す代わりに二つのことを要求した。一つは『おざしきつりぼり』をしばらくリルルに貸すこと。もう一つは、その日のことを2人だけの秘密にすること。のび太はそれを了承して彼女と別れた。
その後のある日、のび太は裏山でリルルに貸した『おざしきつりぼり』を発見する。そしてドラえもんと共に鏡の世界の様子を見てみると、彼らは驚くべき光景を目にした。
そこではリルルが、地球人捕獲作戦という作戦を実行するための巨大な基地を作っていた。リルルとザンダクロスは、地球侵略を目論む別の星から来たスパイだったのだ。
のび太とドラえもんはリルルに見つかって、ロボットたちに追われる羽目になったが、何とか逃げのびて鏡の世界を閉じることができた。
しかし、問題はそこで終わりにはならなかった。現実世界に残されたザンダクロスの頭脳と話した結果、彼らの星『メカトピア星』の鉄人兵団が、すでに地球に向けて発進していることが分かったのだ。
慌てたのび太たちはメカトピアの地球侵略を止めるため、ジャイアンとスネ夫、そしてピッポと名付けたザンダクロスの頭脳を味方につけて、しずかちゃんの家のお風呂から、再び危険な鏡の世界へと足を踏み入れたのだ。
その後、ドラえもんたちがメカトピアのロボットと戦っていた時、しずかちゃんもまた鏡の世界に入った。そして彼女は、ドラえもんたちとの戦いで傷を負ったリルルを見つける。しずかちゃんはリルルがロボットと知りながら、それでも必死で彼女を助けようとしたのだった。
のび太とピッポ、そしてしずかちゃんとリルルは、生まれた星や立場は違っても、次第にそれぞれ友情のような関係を築きつつあった。
しかし同時に、メカトピアの鉄人兵団はすでに地球のすぐそばまで迫って来ていた。
のび太たちとロボットの友情、そして地球とメカトピアの歴史の行方は…。
感想(ネタバレあり)
しずかちゃんやのび太の、リルルたちへの優しい行動を見て、他人を思いやる心の大切さに改めて気づかされる温かくて優しい映画でした。
ロボットのアクションなどの映像的に熱い場面もあって、映画ドラえもんという枠でなくても、いろいろ考えながら楽しめる名作だと思います。
私は特に、メカトピア星のロボットたちが人間を捕獲しようとしていた理由が面白いと思いました。ロボットの中にもかつては奴隷や貴族などの大きな格差があって、平等の考えが広まったことで奴隷ロボットが解放されたから、今度は人間を新しい奴隷として使おうとしていたところは、しずかちゃんが言っていたようにまるっきり人間の歴史を繰り返しているようで興味深かったです。
姿かたちや考え方が違っても、いろんな歴史を重ねてきたことや歌が好きなこと、空に輝く星がきれいに思うことなど、ロボットたちと人間で同じ部分がたくさんあることに気づくと、現実での他人との接し方について、これまでよりも深く考えさせられました。
最終的にしずかちゃんは、鉄人兵団を止めるために競争本能があるロボットの頭脳を改造させましたが、のび太としずかちゃんは改造前のリルルたちと友達になっていたので、相手を思って話し合う時間さえあれば、人間はそのままのロボットたちと仲良くなれていたのだと思います。そう考えると少し残念でした。
現実では競争本能を過去に戻って消したりはできないので、競争本能はあるものとして受け入れるしかありませんが、のび太たちのように、自分と違う相手でも自分たちと同じように大事に思えば、競争本能があったとしても分かり合うことができるのだと思います。
やはり頑張って相手のことを思うことが大事だということを、改めて考えさせられました。
私はこの映画のキャラクターの行動は、鏡のようだと感じました。のび太やしずかちゃんがピッポやリルルに優しく接していたら、彼らものび太たちを守るために一生懸命行動してくれましたし、鉄人兵団が地球の都市を攻撃すれば、改良型やまびこ山で攻撃が返ってきていました。主な舞台が鏡の世界だったこともあって、自分の行動を見なおそうと思える素晴らしい映画だったと思います。
ピッポについて
ピッポは旧作には出てこなかったキャラクターでしたが、私はすごく好きになりました。
やはり最後のシーンが一番印象的でした。のび太たちを守るために、一人ザンダクロスで巨大ロボットに立ち向かってボロボロになっていく姿は、とてもかっこよくて悲しかったです。
旧作での鉄人兵団が消えていくシーンでは、リルルと一緒にいたしずかちゃんだけが悲しんでいて、のび太たちは喜んでいたという場面が、私はとても印象に残っています。今作の場合はピッポがいたので、のび太も彼との別れを悲しんでいました。
私は今作の方が好きです。リルルとピッポ、しずかちゃんとのび太は、3万年の時の差があっても違う星の相手を思う心を持っていて、地球の戦場とメカトピア星の研究所で場所や状況が違っても、ロボットと人間は思い合える、ということを感じられた気がしました。
ロボットと人間という問題だけでなく、状況が違っても同じように悲しむのび太としずかちゃんのお似合いな感じもあって、私はあの場面が好きでした。
ピッポとリルルのロボット同士の友情が見られたのも良いところでした。最後の消えていくシーンは、ピッポとリルルが同時に話すことで、悲しさと感動も2倍になった感じがありました。
しずかちゃんについて
やはりこの映画の特徴は、しずかちゃんがかなり活躍するところだと思います。リメイクした今作でも、しずかちゃんの見どころはたくさんあって良かったです。
まずはやっぱり優しかったです。
リルルがロボットで、人間の敵になるかもしれないと分かっていても、初めから助けると決めていて、最後まで女の子の友達扱いをしていた優しい子でした。
しずかちゃんがリルルの着る服を嬉しそうに選んであげているところは、人間同士だと普通の微笑ましい光景ですが、侵略しようとする者とされかけている者というのを意識すると、微笑ましいうえにその優しさに感動もできる場面でした。
しかし、その優しさはリルルに対してだけではなかったです。私が驚いたのはのび太に対する優しさです。
普通なら、自分の家のお風呂を勝手に鏡の世界の入り口にされたら怒りますよ。怒らないにしても、「使うときは許可ぐらい取ってよ。そもそもあなたたちの誰かの家にお風呂はないの?」と帰ってきたら文句を言おうと思うくらいでしょう。
しかしこの映画のしずかちゃんは優しいですから。
『のび太さん。約束を破ってここに来るなんて、何かあったのかしら?』
映画「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜」のしずかちゃんのセリフ
と言って、怒るどころかまず、のび太の心配をして鏡の世界に入ってから、歩いてのび太を探し始めたのです。もはや感動を通り越して尊敬しました。この映画のしずかちゃんは女神のような優しさです。
そして、今作のしずかちゃんはとてもたくましくて頼りになる人でもありました。
まずは、約束を破って鏡の世界に入っていたのび太を心配して、一人で鏡の世界に行った時です。その後しずかちゃんは、ビームで車を吹き飛ばすようなロボットが徘徊する町を、ロボットから隠れながら歩いて裏山まで行き、リルルを下敷きにしていた岩を動かして、さらにそのリルルを再びロボットの目をすり抜けながら自宅の二階の部屋まで運びきるという、とても大変な作業を一人でやってのけているのです。
さらに終盤のシーンでも、その芯の強さは遺憾なく発揮されていました。
「何かあったらこのスペアポケットを使って。」と言われて、ドラえもんにスペアポケットを渡されたしずかちゃんは、戦場に行かずにリルルと部屋に残ったわけです。
そしてその後しずかちゃんはリルルと二人で、入り込み鏡とどこでもドアを使って本物の世界ののび太の家に行き、のび太のママに「急いでますので失礼します。」という軽い挨拶をしてから、のび太の机のタイムマシンを使って3万年前のメカトピア星に行くという一連の行動を起こします。
私はその行動力がすごいと思いました。ドラえもんと同じ家に住んでいて何度もタイムマシンもスペアポケットも使っているのび太なら普通かもしれません。ですが、別々に住んでいるしずかちゃんが、スペアポケットから出したいろんなひみつ道具を駆使して、タイマシンで3万年前に、しかも知らない星にドラえもん無しで行くというのは、なかなかにハードルが高い行動だったのではないかと思いました。
優しいことにもつながりますが、困っている人を助けるためなら、やれることは全力でやりきる強い子だなと感じました。こんなに優しくて強い子なら、のび太のいいお嫁さんになるのも納得です。
あとは、しずかちゃんがロボットに襲われるギリギリでのび太が空気砲を撃って助けるシーンと、気を付けてねと言ってのび太を戦場に送り出すシーンも好きです。
その他
今作は、ドラえもんがピッポにロボットとして見られていたことも面白かったです。当たり前のように、ロボットのドラえもんと人間ののび太たちが友達として仲良くしている姿を見て、葛藤するピッポが印象的でした。
リルルもピッポが出ていたことで旧作とは少し違った感じになっていましたが、私は今作の方が好きです。
ピッポと友達だったという設定もあって、優しい感じのあるキャラクターになっていました。
また、私がリルルの声優の沢城みゆきさんの声が好きというのも、キャラクターを好きになった一因でもあると思います。綺麗な声ですが、序盤は少し怖くもあり、でも終盤は優しく感じて最高でした。沢城みゆきさんは男の子声もかっこよくて好きなので、男の子役でまた出てほしい気持ちもあります。沢城さんの鬼太郎はすごくかっこいいです。
まとめ
のび太たちの行動を見て、他人への行動について考えさせられましたし、映像的にも派手で楽しめるところがあるので、映画ドラえもんとしてではなくても普通に面白い名作だと思います。
しずかちゃんの活躍が他の映画と比べるとかなりある映画なので、しずかちゃんファンは必見の映画です。
声優さんが好きというのもありますが、ストーリー的にも旧作よりも熱い展開が多いので、私は今作の方が好きです。
この作品を観た人へのおすすめ