君の膵臓をたべたい
2017年公開の日本映画。出演 浜辺美波、北村匠海、小栗旬。監督 月川翔。原作 住野よる『君の膵臓をたべたい』。
(C)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (C)住野よる/双葉社
人気者のクラスメイトの女子の日記を拾ったことで、膵臓の病気を抱えている彼女の秘密を知ってしまった主人公が、余命わずかの彼女との日々を二人で仲良く過ごしていく話。12年後の主人公の回想として語られ、昔は気づかなかった新たな事実が判明していく。
あらすじ
かつての母校に勤める高校教師の【僕】は、ちゃんと生徒と向き合えていないことなどを理由に、その仕事を辞めることを考えていた。そんなある日、彼はその学校の図書館が取り壊されることを聞かされる。
彼にとってその図書館はとても思い出深い場所だった。12年前その学校で図書委員をしていた【僕】は、そこにあった膨大な本のラベルを、仲良しだったある女子とともに二人で整理していたのだ。
彼は現在の図書館の本を整理しながら、12年前の彼女との記憶を思い起こしていった。
山内桜良と【僕】の関係は話したこともない同級生だった。
他人に興味が無く友達もずっといないクラス一の地味な男子であった【僕】に対して、桜良はいつもクラスの人気者の明るい女子だった。二人は全く接点が無かったのだ。
しかしある日、【僕】は病院で『共病文庫』と書かれた一冊の本を拾った。それは膵臓の病気を患った桜良の日記だった。彼はそれを見たことで、あとわずかしか生きられない彼女の体の秘密を知ってしまったのだ。
そしてその次の日から【僕】の日常が大きく変わった。
桜良がなぜか図書委員に立候補したことによって、【僕】は図書館の本を彼女と一緒に整理していくことになったのだ。桜良はその後いつもの笑顔でからかうように、【僕】のことを明るく振り回し始めた。
次に桜良は、死ぬまでにやりたいことを【僕】とともに実行し始めた。彼らは二人っきりでお泊まり旅行をしたり、美味しいラーメンを食べに行ったりすることで、お互いとの距離を縮めていったのだ。そうして二人は、次第に相手を大切な存在だと思うようになっていった。
だが、彼らが仲良く過ごしたそんな日常は、ある日突然終わった。
【僕】は彼女の死を12年経った今でも引きずっていたのだ。しかし、図書館の整理をしていた大人の【僕】は、そこに隠されていたあるものを見つける。それは12年前には気づけなかった、桜良の本心にまつわるものだった。
彼女からの12年越しの大切な思いを知った【僕】の決断とは…。
感想(ネタバレあり)
みんなを愛してみんなに愛されていた桜良と、誰とも関わらないでたった一人で生きていた【僕】が、一緒にまどろっこしい日常を過ごすうちにお互いの存在を大切に思っていく様子が、とても綺麗で愛しく感じました。
そして終盤で二人が相手へのその複雑な思いを、同じ『君の膵臓をたべたい』という言葉で伝えていたことが分かる場面では、とても感動して泣かされました。
お互いに尊敬し思い合っていた二人が会えなくなってしまうのは悲しかったですが、それだけではなかったです。一緒に前向きに生き続けたいと伝え合っていた最後の二人の言葉を聞いて、自分もこれからは前向きに、今の瞬間を大事に生きようと思えるような良い映画でした。
『君の膵臓をたべたい』という言葉について
やはり、『君の膵臓をたべたい』と伝え合っていた二人の最後のやりとりが印象的でした。
【僕】のメールと桜良の手紙には、相手への尊敬の気持ちや亡くなった後の気遣いなど、いろんな感情が込められていましたが、それを二人だけに通じる『君の膵臓をたべたい』という言葉のみで表していたことが、とてもロマンチックでした。
【僕】からのメールと桜良からの手紙で、終盤に二回それを読まれる場面がありましたが、どちらも良かったです。【僕】の方は初めは他人に興味がなかった彼の成長を感じましたし、桜良の方は本当は怖いはずなのに自分が死んだ後の【僕】のことを思いやる優しさを感じました。しかし何よりも、桜良が彼と一緒に生き続けたいと思ってそれを書いていたことに一番感動しました。
その後桜良たちに起こったことや、それまでの二人のやり取りを思い出すと、私もありふれた言葉じゃ足りないくらいのいろんな感情が込み上げてきて泣きました。
私にも尊敬する人や大切に思う人はたくさんいますが、私もいろんな人の膵臓をたべたい、いろんな人に自分の膵臓をたべさせたいと思わされました。
キャラクターについて
可愛い浜辺美波さんが演じる桜良と、イケメンの北村匠海さんが演じる【僕】が、一緒にデートしている姿がとても微笑ましかったです。天真爛漫な笑顔で【僕】をからかう桜良と、戸惑いながらもそれに付き合ってあげる優しい【僕】の仲良しな関係は、見ていて癒されました。
特に九州へのお泊り旅行が、二人とも常に楽しそうで良かったです。中でも、ホテルの夜に真実と挑戦ゲームをして、クラスで誰が一番可愛いと思うかを聞いた時の、【僕】をからかう桜良と慌てる彼はどちらもとっても可愛かったです。
しかし、その旅行の二人の描写が最高だったおかげで、北海道への旅行の期待も私の中でかなり高まっていたので、その直前に彼女が意外な原因で亡くなってしまうのは驚きました。その時、【僕】に会いにいく浜辺さんの満面の笑みがとっても爽やかで可愛かったのもあって、すごくショックでした。
桜良については、【僕】をからかう時の言動が少しあざとく感じる場面もありましたが、終盤にそれらの言動が、彼との日常を過ごすために頑張っていた結果でもあったことを知ると、とても健気に感じてますます彼女が可愛く見えました。
散った後にまた暖かい季節に咲いて人を驚かせる桜のように、桜良が自分が死んだ後の【僕】たちに向けたサプライズを仕掛けていたのも健気で良かったです。
浜辺美波さんの桜良はもちろん可愛かったですが、北村匠海さんが演じていた【僕】も、彼女に負けないぐらい可愛く見えたのも印象に残りました。桜良が入っているお風呂場に洗顔クリームを持って行くとき、目を瞑って入ってドンと置いてからそのまま去って行くところが、とても良い子で可愛かったです。
二人ともお互いのことや生きることについてを真面目に考えていた良い子だったので、彼らの膵臓もたべたくなるほど好きになれました。
その他について
【僕】をからかいながら楽しそうにしていた桜良の心境を共病文庫で知るシーンは、それまで隠れていた彼女の純粋な思いにとても感動させられました。そして怖い気持ちを隠してでも、頑張って彼との時間を楽しもうとしていた彼女が、その何よりも楽しみにしていたことができないまま亡くなってしまったことを思うと、悲しくて泣けました。
劇中で桜良が言っていたように、いつ死ぬか分からないのはみんな同じなので、たとえまどろっこしいことがあっても、自分で選んでたどり着いた今の日常を大切にして楽しもうと思わされました。
【僕】役の北村匠海さんが共病文庫を読んで泣くシーンは、その悔しさや悲しさなどに共感できてもらい泣きしました。大人の【僕】役の小栗旬さんも、その大人しめな演技が北村匠海さんの【僕】に重なって見えて良かったです。最後の大人の【僕】が桜良を図書館で見るシーンは、彼女を本当に大切に思っていた彼の気持ちを感じられた気がして安心しました。
この映画の浜辺美波さんは顔の輪郭が少しふっくらして見えるのと、口角が上がった時にほっぺたがはっきり丸く出る感じが、可愛くて好きでした。彼女の見た目や声の透明感があったからこその、あざとすぎない絶妙なバランスを保っていたキャラクターになっていたのではないかと感じました。
映像の面でも、背景に桜が咲いている中で桜良と【僕】が映っているシーンなど、綺麗なところがあって、印象深かったです。
まとめ
桜良が亡くなってしまうところはとても悲しかったですが、それだけではなく、二人が『君の膵臓をたべたい』と伝え合って前向きに生き続けたいと思っていたのを見て、私も自分で選んだ今の時間を大切にしようと思える映画でした。
二人の複雑な思いを、彼らだけが分かるその短い言葉で表すところがとてもロマンチックでした。仲良しな彼らの関係はとても微笑ましく二人とも良い子だったので、私も彼らの膵臓をたべたいと思うほど好きになりました。
桜良役の浜辺美波さんの笑顔や声の透明感が役にぴったりでとても良かったです。北村匠海さんと小栗旬さんの【僕】の演技にも何度も胸を打たれました。
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