この世界の片隅に
2016年公開の日本のアニメーション映画。主演 のん。
©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
太平洋戦争中に,広島市内の江波から呉の家に嫁いだ女性の話。
戦時中の大変な状況の中でも普通に笑顔で暮らしていた彼女たちの生活が,戦況が悪化するにつれ戦争の厳しさに影響されていく。それでも周りの人たちに励まされながら,前を向いて普通の生活をしていく人々の様子が描かれる。
あらすじ
昭和8年(1933年)。
広島市の江波に住んでいた8歳の浦野すずはボーっとしている子で,絵を描くのが好きな普通の少女だった。すずは18歳まで家のことを手伝いながら兄妹や両親たちと楽しく過ごしていたが,ある日彼女に縁談の話がやって来た。
縁談相手は江波からおよそ20キロ離れた街,呉で海軍の書記官をやっている北篠 周作という人だった。すずは知らない人相手の話に少し戸惑ったが,流されるがまま彼と結婚して呉に行くことになったのだ。
昭和19年(1944年)。
呉に嫁いだすずは,優しく気遣ってくれる周作やその両親がいる北條家で暮らし始めた。
戦時中で食糧などが不足する時期だったが,彼女はうまくやりくりする方法を勉強したり,近所の人に聞いたりして,うまくいかないことがありながらも何とか暮らしていたのだ。
苦労しながらも,面白い出来事が起こったりして普通の楽しい毎日を過ごしていたすずたちであったが,戦況の変化によって彼女らの生活の中に戦争のことが多く入ってくるようになる。そして笑顔が絶えなかったすずの周りも,少しずつ変わっていくのだった。
感想(ネタバレあり)
ストーリーについて
すずさんが戦時中の大変な時期でも普通に生きている様子を見て,日々の生活の大切さを考えさせられるいい映画でした。
戦争映画として見ると,おもしろいシーンや周作さんとのラブラブなシーンもあって,あまり暗くなくてかなり見やすかったと思います。
序盤ですずさんが料理を勉強したり,絵を描いて憲兵さんに疑われたのをみんなにバカにされたりして,楽しそうに暮らしている彼女たちの姿を見ていると,楽しそうに頑張るすずさんをもっと応援したいと思いました。しかし,だからこそ,後半になって戦況が悪化するにつれて,すずさんが笑って過ごす描写が少なくなっていく様子がとても寂しくてつらかったです。
戦争映画は「永遠の0」みたいに戦地に行く人やその奥さんが主役で,戦争で人が亡くなることの辛さや戦争の悲惨さをたくさん描いているものが私がこれまで観た中では多かったですが,この映画は日本に残っている家族の普通の面白い生活をたくさん描いていることが印象的でした。
戦時中の軍人ではない人も頑張って生活していて,今と同じように笑顔で暮らしていたりしてたんだなと初めて気付かされました。
それに戦争の悲惨さだけではなく,戦争が起こったことによって楽しい生活が無くなることの悲しさみたいなものを描くことで,今の若い人にも伝わりやすい話になっているのではないかと思いました。戦争を経験していない人にその辛さは伝わりにくいかもしれませんけれど,すずさんのように自分の今の普通の生活が無くなっていくと考えると,経験者ではない私も悲しく感じました。
当たり前のように普通に笑えて,普通に怒ったりできる日常は,実はとても貴重なもので,これからも大切にしていこうと思わされました。
周作さんについて
私がこの映画で好きになった人物は,すずさんの夫になる周作さんです。
周作さんがすずさんに対してとても優しくてかっこよかったです。ずっと昔からすずさんのことが好きで,一人で呉に来たすずさんを優しく気遣う姿や,急にデートに誘ったりする姿を見て,いい旦那さんだなと思いました。
二人が仲良くなっていく様子や夫婦げんかしている姿がとっても微笑ましくて,見ててニヤニヤしました。特に,すずさんが広島に帰るって言い出した時に周作さんが言った
「わしは楽しかったで。この一年半。あんたのおるうちへ帰れて。あんたと連ろうて歩くんも、ひらひらしゃべるんも。あんたは違うんか?ずっと知らん家のまんまか?」
映画「この世界の片隅に」 北條周作さんのセリフ
というセリフは,周作さんがすずさんのことを好きな気持ちが分かってとても良かったです。
戦時中を生き抜いた人の話なので厳しいシーンもありましたけど,この二人は嫁いでから最後までずっとラブラブで「恋愛映画だったかな?」って思うくらいドキドキなシーンもあったので,甘々なラブストーリー好きな人でも楽しめるかもしれません。
いろいろ辛い目にあったすずさんでしたけど,最後にはうまく立ち直れたのは優しい周作さんたちがいたからだと思います。
「ありがとう,この世界の片隅にうちを見つけてくれて。」
映画「この世界の片隅に」 北條すずさんのセリフ
というすずさんのセリフを聞いた時は,それまですずさんに優しくしていた周作さんのいろんな場面を思い出して,私からもそれまですずさんを支えてくれた周作さんにお礼が言いたい気分になりました。見終わる頃にはそれくらい二人のことが大好きになってました。
右手を失って家のことができず肩身の狭い思いをしていた時に、周作さんやお義姉さんがかけてくれた優しい言葉は、本当にすずさんの救いになったのだろうと思いましたし、観ていた私にとっても救いでした。
周作さんだけではなくて,すずさんの幼馴染の水原さんも面白くて優しい人で良かったです。小野大輔さんの広島弁が最高にかっこよくて好きです。
しかし,水原さんと本音で話しているすずさんを見てやきもちを焼く周作さんと,それに怒るすずさんが一番かわいかったです。
まとめ
戦争中でも普通に笑顔で暮らしているすずさんたちを見て,自分の今の生活の大切さについて考えさせられるいい映画でした。
戦争の描写があるので,暗い話じゃないかと思う人もいるかと思いますが,前半のすずさんたちの生活はとても楽しそうでしたし,すずさんと周作さんはずっとラブラブで微笑ましかったです。後半は見ていて辛いシーンもありましたけど,終り方はちょっと安心するような感じでとても良かったです。
すずさんを演じていたのんさんも,予告ではどうだろうと思ったんですが,最後にはこの人しかいないなと思うぐらいピッタリな声に感じられました。
やっぱり戦争の映画は敬遠されがちですけど,この映画はすずさんが楽しいことや悲しいこと,嬉しいこと,辛いことなどを通して成長していく姿を見る映画だと思います。
とても良い映画なので,いろんな人に勧めてもらって,いろんな人に見てほしいです。
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