ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「白ゆき姫殺人事件」の感想、あらすじ

白ゆき姫殺人事件

2014年公開の日本映画。出演 井上真央、綾野剛、貫地谷しほり。監督 中村義洋。原作 湊かなえ。


(C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 湊かなえ/集英社

映像制作会社に勤める男が、殺人事件について取材していく話。関係者の曖昧な証言を聞いていく中で一人の女性の姿が浮かんでいくが、証拠もない段階でその女性がまるで犯人かのように全国に報道されていく。容疑者を責めるように加熱する報道とネットの炎上の様子が描かれる。

あらすじ

長野県にある国定公園で、全身十数か所を刺された上に焼かれて黒焦げになった遺体が発見された。

被害者は化粧品会社の美人OL、三木典子。誰の目から見ても美しい彼女が殺害されたその事件は、彼女が勤めていた会社の看板商品『白ゆき石鹸』になぞらえて『白ゆき姫殺人事件』と呼ばれることになった。

そして映像制作会社の契約社員である赤星雄治は、事件が発覚した次の日、大学時代の友人で被害者の後輩社員だった人物から連絡をもらい、その事件についての取材を始めたのだ。

 

赤星は友人の狩野里沙子をはじめ、被害者に関わる数人の社員に取材を行った。するとそのうちに、一人の女性の存在が浮かび上がってきたのだ。彼女の名前は城野美姫。被害者とは正反対のような地味な雰囲気の女性だった。

社員たちの話は少しずつ違っていたが、彼らはみんな事件前後の美姫の怪しい言動を目撃しており、さらに彼女には被害者に恋人を奪われていたという噂まであった。そしておまけに、美姫は事件が起こった次の日から連絡が取れなくなっていたのだった。

 

城野美姫が犯人だと確信した赤星は、まだ証拠が何もない段階にも関わらずテレビ番組で彼女を容疑者として扱って全国に放送した。

彼が直接取材したそのニュースは大好評を得たが、その後赤星がSNSでその事件についてつぶやいていたことがきっかけで、城野美姫の本名や経歴までもが全国に知れ渡ることになってしまった。

 

美姫の知り合いだった人物の中には、その報道やつぶやきに抗議する者もいた。だがその少数の意見で、容疑者として報道された美姫を責める全体の流れが変わることはなかった。

そして、美姫を責めるような報道と炎上するネットの意見はさらに加熱し、厳しくなっていったのだ。

 

赤星はその後、美姫の故郷に向かい彼女の幼少期のことを取材していった。彼はそこで昔の彼女を知る人物たちから、事件につながるかもしれないある事実を聞かされることになったのだ。

 

その後、城野美姫の親友や幼馴染、そして城野美姫本人の記憶が描かれることで、事件の真相が明らかになっていく。

あらゆる証言が交錯する『白ゆき姫殺人事件』の真相は…。また、日本中の多くの意見に苦しめられ続けた城野美姫の本当の姿とは…。

感想(ネタバレあり)

いろんな嘘が混ざった証言を聞き続けているうちに、本当の事件の真相が何なのか、本当の城野美姫がどんな人なのかがとても気になって、美姫さんへの発言が激しくなる中盤から一気に引き込まれる映画でした。

 

自分の都合のいいように作り変えた記憶や嘘の情報を、まるで本当のように自分勝手に語る人物たちを見て、人間は簡単に信じてはいけないものだなというのを改めて感じました。劇中でも嘘の情報に踊らされていたり、名前だけ変えた白ゆき石鹸が良いものとして大ヒットしていた描写がありましたが、そんな情報にあふれた社会だからこそ、それがちゃんと正しいかどうか考えて生活していこうと思わされました。

 

人間の良くない部分をほとんど全編にわたって見せられるのは、同じ湊かなえさん原作の映画「告白」と似ていました。ですが「告白」は良いように解釈しないと優しい展開がほとんど無かったのに対して、こちらはまだ分かりやすい救いの部分があったので、私はこちらの方が全然好きです。

 

美人は性格が悪い、というありがちな考えを否定するものになっていたのも良かったです。事件の被害者の美人は確かに性格が悪かったですが、夕子さんは優しい美人でしたし、美人じゃない人にも良い人と悪い人がいました。美人だろうとそうでなかろうと、良い人と悪い人はいるのだと感じました。

 

ツイッターのつぶやきが表示される演出も、よく知らないのに無責任で自分勝手に話す人が、目に見えているよりもたくさんいるということを感じられて斬新でした。

展開について

美姫さんの知り合いが自分の都合で作り変えた情報を話して、証拠も無いそれを信じたテレビの人間が彼女を犯人と決めつけ、何も知らない視聴者がツイッターで彼女を悪く言うという、なかなか闇を感じる展開でした。そんな勝手な都合に振り回されて苦しむ美姫さんが可哀想に思いました。

 

しかし、それぞれの関係者が語るその不確かな情報を聞いて、嘘はどれなのか、そして本当のことがどこにあるのかを推理するのは割と楽しかったです。

状況から考えて美姫さんを悪く言うのは仕方ないにしても、一人だけ不自然に典子さんを良く言い過ぎていて、疑われないようにしているみたいで怪しいと思った人がいました。そして結局はその人が犯人で、予想が当たって嬉しかったです。

 

ですが、事件を楽しもうとするこんな気軽な感情を持った人が、ネットで自分勝手に呟いて美姫さんを傷つけていたのかもしれません。

映画だから良かったけれど、現実の事件では実際に傷つく人間が生きています。なので証拠も無いのに無責任に推理して決めつけたり、お祭り気分で楽しむようなことは、現実ではやってしまわないようにしようと思わされました。

 

関係者の話をテキトーに聞いていた赤星さんたちや視聴者では導き出せない結論を、警察がちゃんと最後には出してくれるところは、本気の捜査の大切さも実感させられる展開だったと思います。

やっぱり無関係な素人が無責任に推理とかして判断するのは良くないです。名探偵のコナン君ですら、ほとんどの事件では関係者になって推理しているわけですから。

登場人物について

証拠も無いのに怪しいから犯人と決めつけたり、無責任なことを言って他人を傷つけたり、意地悪な人も多くて、嫌な感じを受ける人物が多かったです。

 

それは「告白」も同じ感じでしたが、こちらはかなり好きになれた人物もいました。

特に私は貫地谷しほりさんが演じていた夕子さんがとても好きでした。乱暴な言葉遣いでも10年以上前から会っていない美姫さんのことをずっと大事に思っていて、最後にろうそくの光で彼女への本気のメッセージを届けるところがすごく感動しました。

そしてゲームをしながらでも、赤星のツイッターアカウントを把握していて、人が嘘の記憶を語ることを注意するところはかなりかっこよかったです。

 

また、大学時代の親友の前谷みのりさんも良かったです。ほとんどの人が何も知らないで美姫を悪く言う中で、何よりも彼女の身を心配する抗議の手紙をテレビ局に出すところは、とても優しくて好きでした。

先を越されたくないという言葉を聞いて美姫はがっかりしていたみたいですが、張り合ってくれるというのも、いい友達だと思います。いろんなことで張り合いながら成長していけばいいと思いました。「ドラゴンボール」の悟空も、クリリンやベジータがいたから強くなれたのです。

もし本当に美姫のことを下に見ていたのだとしても、そんな感情を持ちながらでも倫理的に正しい行動をするというのは、たとえ偽善でも絶対に凄いことだと私は思います。しかし、私の中では夕子のキャラクターが良すぎてちょっと霞んだ感じがありました。

もちろん、優しくて最後まで前向きだった美姫も好きでした。

役者さんについて

美姫役の井上真央さんが、役にとてもぴったりな雰囲気に見えて驚きました。

元気な役だと菜々緒さんに負けないくらいにとても可愛いのですが、地味な役をしている時はちゃんと地味な感じに見えるのはさすが女優だなという感じでした。

しかし、親友といる時の笑顔を見せる彼女はやっぱり可愛くて、微笑ましい部分もありました。

最後に赤星と話す時の儚げだけど優しくもある表情も良くて、井上真央さんの新たな良さを発見できた気がしました。

 

夕子役の貫地谷しほりさんのやさぐれ感も最高でした。以前に私がテレビで貫地谷さんを見たときは気さくで優しそうな美人という印象だったのですが、それとは真逆のような夕子もまたかっこよくて良かったです。

言動は投げやりだけど、美姫のことを誰よりも思っているという優しさのギャップと、それまでの私の貫地谷さんのイメージとの差がとても印象的でした。

 

そんな癖のある役を演じていた二人が最後に言葉を交わさず、お互いの部屋のろうそくの光を見て泣きながら心を通わせるところは、二人とも好きな私にとっては最高でした。

まとめ

証拠もない情報や自分の都合のいいように作り変えた記憶を本当にように語る人物たちを見て、人は簡単に信用してはいけないなと思わされました。そしてそんな勝手な都合に振り回されて苦しむ美姫の姿は、見ていてかわいそうでした。

人間の嫌な部分を描いているところは同じ湊かなえさん原作の映画「告白」と似ていましたが、こちらはとても好きになれる良い人もいたので、私はこちらの方が好きです。

特に井上真央さんと貫地谷しほりさんは、私の中のそれまでのイメージとはまったく違った魅力が見られたのでとても良かったです。

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