ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「八日目の蝉」の感想、あらすじ

八日目の蝉

2011年公開の日本映画。出演 井上真央、永作博美。監督 成島出。原作 角田光代。


(C) 2011「八日目の蝉」製作委員会

父親の不倫相手に赤ん坊の頃誘拐された女の子が、大人になって誘拐犯と過ごした時間を思い出していくうちに、彼女から受けた思いに気づいていく話。

あらすじ

1985年、神奈川県で生後4ヶ月の乳児が連れ去られる事件が発生した。乳児の名前は秋山恵理菜、会社員の丈博とその妻の恵津子の間に生まれた子だった。

犯人は丈博の不倫相手だった女性、野々宮希和子。彼女は過去に、丈博との間にできた子供に対して妊娠中絶手術を行っており、子供が産めない体になった女性だった。

 

恵理菜を誘拐した希和子はその後、自分の子につけるはずだった薫という名前で彼女を呼び、警察の目から逃れながら薫を育てていった。

そして恵理菜が4歳になった頃、あるきっかけで希和子は警察に見つかり、彼女は逮捕されたのだ。

 

その後恵理菜は実の両親のもとに帰ってきたが、戻ってきた恵理菜は完全に希和子を母親だと思い込んでおり、恵津子たちに心を開こうとはしなかった。

そしてそれは21歳の大学生になっても変わらなかった。恵理菜は大人になっても恵津子たちを本当の家族だとは思えず、そんな自分を責めながら孤独に過ごしていたのだ。

大人になった恵理菜はある日、自分が妊娠していることに気づく。その相手は家庭を持ち生まれてくる子の父親にはなれない不倫相手の人だった。彼女は自身を誘拐した希和子と同じ状況になってしまったのだ。

 

恵理菜は希和子のようにならないためその子を産むことに決めたが、普通の家庭で育っていない彼女は、ちゃんと子供を愛せる母親になれるかどうか不安に思っていた。

しかしそんな時、恵理菜は彼女の誘拐事件を調べていたフリーライターの安藤千草と出会う。

 

彼女は親切にしてくれる千草とともに事件の過去を調べていくうちに、希和子と過ごした4年間について思い出していく。そしてその間に希和子から受けていたある強い思いにも、しだいに気づき始めていくのだった。

 

乳児を誘拐して4年間育てた希和子の思いとは…。そして彼女の気持ちに気づいた恵理菜の最後の決断は…。

感想(ネタバレあり)

社会的には悪いことだと分かっていても、娘を何よりも愛する母親としての希和子さんの姿と、その愛を受けて悩んだ末の恵理菜の行動にとても感動させられました。

希和子さんがしたことは確かに悪いことなのですが、薫を本当に愛して、薫に愛されてもいた彼女を見ていると、とてもそれが悪いこととは思えなくて複雑でした。ずっと一緒にいてほしいとまで思ってしまいました。

 

恵理菜が誘拐犯の希和子さんを憎めない気持ちも、実の母親を母親として素直に思えない気持ちも、話が進んでいくうちにだんだんと分かってきて、辛い気持ちにもなる映画でした。しかし最後には、それがあったからこそ見えたものもあったのだと、前向きになれたので良かったです。

登場人物について

やはり薫のことを常に思っていた希和子さんの優しい姿がとても印象的でした。

初めて見る物を怖がる薫に何度も『ママがいるから怖いことなんてない』と言って元気づけているところや、薫にいろんな綺麗なものを見せるために頑張って働いている様子は、希和子さんが本当の優しいお母さんにしか見えなかったです。

特に、終盤の希和子さんが捕まる場面と写真館の場面が良かったです。

自分が危機的状況にあるのにもかかわらず、自分の身よりも薫のことを心配したり、写真を撮る前に大好きな薫に思いを伝えるところは、母親の強い愛を感じてとても感動しました。

 

そして21歳になった恵理菜については、希和子さんのことを悪く言っている様子が、見ていて辛かったです。

あんなに大事にしてもらい、お互いに一緒にいたいと思い合っていた希和子さんのことを、自然に嫌いになれるはずないし、憎みたいと思うわけもないのです。周りの状況を見て、大好きだった相手を憎まなければいけなかったのだと想像すると、とっても辛いだろうし、とても可哀想に思いました。

 

誘拐されたことでいろいろ諦めていたような恵理菜が、最後に希和子さんとの記憶を思い出して正直な思いを口に出すシーンは、感動すると同時に少し安心しました。彼女がお腹の中の子供へ愛を伝える場面は、まるで薫に語りかけていた希和子さんのようで、希和子さんの愛は恵理菜の心にしっかりと残っていたんだなと感じました。

希和子さんの行為は法的には正しいことではありませんが、薫に託した母親としての強い思いは正しい形で恵理菜に伝わって、受け継がれていったのだと思います。それに気づいた彼女はきっとお腹の中にいる子どもを、強く愛して育てられるのだろうと思いました。

実の母親は可哀想ですが、永遠に別れるかもしれない誘拐した子だったからこそ、とても強い愛が薫に伝わったのかもしれません。

 

本当の思いを隠すのが当たり前になって、諦めているような井上真央さんの演技は見ていて悲しかったですが、泣きながら笑顔で子供への思いを口にするところは、愛に溢れていてとても良かったです。

薫のことを一番に思う永作博美さんも良かったです。優しくて強い母親像に感動させられました。

脇を固める小池栄子さんや森口瑤子さんたちの演技もとても良くて、いろんな登場人物の描写が繊細に描かれていたと感じました。

『八日目の蝉』について

タイトルの『八日目の蝉』は、他の人とは違うものが見えていて、孤独に感じている人間のことだと私は思いました。

この映画はほとんどの人が特殊な体験をしていたので、多くの人が八日目の蝉だと言えるのかもしれませんが、私は恵理菜のことだと思うのが一番しっくりきました。

 

誘拐されて大切に思っていた人を憎まなければならなくなった恵理菜は、いろいろな苦しい思いをしたのでしょう。けれど希和子さんと見た景色や彼女から受けた愛は、他の人には見られないようなきれいなものだったと思います。そしてそれを自分の子どもに伝えられるというのも素晴らしいことだと感じました。

特殊な経験をしていた他の登場人物たちも、それぞれが他人には見えないようなものを見てきたのだと思います。

 

そして現実に生きている方たちにも、一般的とは言えない特殊な経験をした方はたくさんいると思います。その方たちのそれぞれが、他人には見られないものを見てきているのかもしれないと思わされました。

それはとてもきれいなものかもしれませんし、そうでないものかもしれませんが、その何かを見たからこそ、次の世代や他人に伝えられる素晴らしいことはあるのだと思います。

 

誘拐した子に深い愛を与えていた希和子さんや、苦しい経験をしても誘拐犯から受けた愛を自分の子どもに伝えようとしていた恵理菜を見て、どんな過去を持った人でも、それを生かした素晴らしいことを次の世代に伝えられるのだなと感じました。

いろいろ複雑なことを思う話でしたが、いろんな経験をした人はそれぞれ違ったものを他人に伝えられるので、人間はみんな素晴らしいと思える話だったと私は思いました。

その他について

長時間に渡って母親としての優しい希和子さんの様子を見せられるので、私は彼女に同情してずっと薫と一緒にいてほしいとまで思ってしまいました。ですが感動が少し冷めた後冷静に考えると、実の母親の恵津子さんがとても可哀想だったなと思います。

みんなに辛い過去や良くない部分はありましたが、恵津子さんは娘を誘拐されて、娘に母親扱いされなくなるほどのことはしていないんじゃないかなと思いました。

 

恵理菜はその過去があったから、希和子さんのように子どもを深く愛して、子どもにいろんなものを見せようと思えたわけなので、視聴者としてはそれは感動的でしたが、改めて考えるとやっぱり恵津子さんが一番可哀想だと思います。

恵理菜は何も悪くないということは、間違いなく言い切れます。

まとめ

希和子さんと薫の関係は良くないことだと分かっていても、二人の間にあった親子の絆が悪いものだとは思えず複雑な気持ちになりました。

特に娘のことを思う希和子さんの母親としての強い愛情にとても心を打たれました。法的には良くないことかもしれませんが、その思いがちゃんと恵理菜に伝わって良かったと思いました。

いろんな特殊な経験をしている方は現実にもいるかと思いますが、人とは違ったものを見てきたからこそ、それぞれ違った形で素晴らしいものを伝えられることもあるのだと思います。

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