サマータイムマシン・ブルース
2005年公開の日本映画。監督 本広克行。主演 瑛太。
ある大学のSF研究会がクーラーのリモコンを壊してしまった次の日。彼らの前にタイムマシンが出現し,昨日へ行ってリモコンを取ってこようとする話。
あらすじ
2005年8月19日。
とある大学のSF研究会の5人は、夏休みの何でもない普段通りの日常を送っていた。
5人そろってふざけながら大して上手くもない野球をして、散らかったSF研の部室に帰ってクーラーで涼んでから銭湯に向かった。
銭湯ではメンバーの一人が愛用するヴィダルサスーンが何者かに盗まれるという事件が起きたが、それは大した問題では無かった。
彼らの平穏な夏休みを脅かす事件は、彼らが銭湯から帰ってから起きたのだ。
SF研のまとめ役、甲本が部室に帰ると先に戻っていた他の4人は何故かかなり盛り上がっていた。そして、意味も分からず甲本が立ち尽くしているうちに、興奮した部員がクーラーのリモコンにジュースをこぼしてしまったのだ。
何が起こったのか全く理解できない甲本は、ただただ混乱するだけだった。
次の日の2005年8月20日。
クーラーが動かなくなった真夏の部屋で、SF研の4人はその暑さに苦しんでいた。
そんな中、SF研のメンバーが部屋に集まった時に、彼らの部屋に誰も知らないマッシュルームヘアーの男がいることに気付く。その男はすぐに逃げて行ったが、彼がいた場所には謎の機械が残されていたのだ。
それにはまるでタイムマシンのように、月と日にち、未来、過去を示すダイアルとレバーがあった。
彼らはふざけて部員の一人をそれに乗せ、タイムスリップをする真似をさせたのだが、レバーを操作した直後、その機械と彼はどこかに消えてしまった。
慌てるSF研の4人だったが、彼はすぐに元の場所に現れた。彼はそのタイムマシンで昨日に行って、自分たちが野球をしている様子を見てきたようだった。
本物のタイムマシンだという事が分かって興奮した彼らは、とりあえず昨日に行って壊れる前のリモコンを取ってくるという名案を思い付いた。そのタイムマシンに多くの人は乗れなかったため、甲本はリモコンを取ったらすぐに戻ってくるという約束で、とりあえず3人だけ昨日に行かせたのだ。
しかし、昨日に行った3人は部屋で遊んだり、昨日の自分たちを尾行したりしてふざけ始めた。
そして、昨日に行った3人を待っていた甲本たちの前には、タイムマシンが現れた時にその場にいたマッシュルームヘアーの男がやって来た。
彼は田村と名乗り,自分もSF研だと言った。そして、びっくりしないで聞いてほしいと前置きして、こう言ったのだ。
「僕、どうやらタイムスリップして来ちゃったらしいんですよ。」
その後、甲本たちは過去を変えて時間に矛盾が生じたら、この世界の全てが消えるという話を聞いてしまう。そこで、甲本たちも昨日へタイムスリップし、昨日からリモコンを取ってこようとしている3人を止めようと奮闘するのだが…。
感想(ネタバレあり)
ストーリーについて
SF研のみんなが騒ぐ姿が本当に楽しそうで,見てるこっちまで楽しくなってきます。
彼らはそんなにすごいことはしませんし,基本的にはふざけてアホみたいなことをしているんです。しかもドラえもんののび太でも分かるようなタイプスリップの矛盾についての簡単な説明を,彼らの中の何人かはたぶん最後までちゃんと理解できていないです。
しかし,見ているうちに,全然芸を覚えない子犬や小学生が遊ぶ姿を見ているような気持ちになってきて微笑ましく感じます。
今まで描いてきた何気ない場面を使って,辻褄がだんだんあっていく様子が面白かったです。
特に,終盤のロッカーに入るまでのやりとりのシーンは,序盤で意味が分からなかった場面がどんどん分かってきて,とてもワクワクしました。そして結局タイムマシンを使わずに,普通に1日過ごして戻ってきたのにはびっくりしました。
しかし,ヴィダルサスーンが盗まれる話は,2回目を見たりして振り返ると,タイムスリップものでこんなくだらないエピソードがあってもいいのかと思うぐらいくだらないと思いました。
でも,それも良いです。タイムマシンを使っても彼らの楽しそうな日常はそんなに変わらない。どんなことがあっても,その状況を楽しむ彼らの仲の良さはやっぱり,見ていて楽しいです。
かといってこの映画,友情ものとも違う気がします。私が考えるこの映画のジャンルは,日常系タイムトラベル映画です。
個人的に,最後の名字の話を出す甲本が好きです。劇場版のジャイアンがたまに見せる優しさでかっこよく見えるみたいに,くだらないことをしてふざけていた甲本が,柴田との将来のことをそんなに本気で考えていたのかと思うと,急に彼への見る目が変わって,彼を応援したくなります。
タイムトラベル要素について
この映画はタイムスリップもので,SF研の人たちはタイムマシンを何度も使いますけど,過去は何も変わっていません。未来もおそらく変わっていません。
タイムマシンがあって,それを使うことを含めて決められた時間の流れを辿って行っただけです。
タイムマシンは実際には無いものなので,タイムスリップをする映画はどうしても矛盾が生まれるものです。
この映画はタイムマシンを使うことを含めたすべての時間が決まったもので,それを変えないことによって目立つ矛盾を無くしているんだと思いました。
ただしその代わり,思った通りに未来を変えられるという,バック・トゥ・ザ・フューチャーのようなロマンあふれる展開は無くなりますけどね。
でも,普通の仲がいい大学生の彼らには合っていると思います。
最後にタイムマシンをホセが見ている場面がありましたけど,この映画の時間の考え方だと,きっと彼がタイムマシンを発明するのではないですね。
彼が発明するのだとしたら,彼が見たタイムマシンの元の構造はだれが考えたのかという話になって,それこそ矛盾してしまいますから。
彼のこれまでの経歴を知ると,発明してほしいとは思いましたけど,きっと違います。
まとめ
タイムマシンがあってもなくても楽しそうに過ごすSF研のみんなは,見ていて楽しいです。そして,終盤にそれまでの伏線が一気に回収されて,気持ちが良かったです。
嫌なところが1つもない映画だったので,楽に楽しく見れる映画だと思います。
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