ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の感想、あらすじ

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

2019年公開の日本のアニメーション映画。2016年公開の「この世界の片隅に」にシーンを追加した長尺版。監督・脚本 片渕須直。原作 こうの史代。声の出演 のん、岩井七世、細谷佳正、花澤香菜、小野大輔。英題「In This Corner (and Other Corners) of the World」。


(C) 2019こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

戦争中に軍港のあった街の呉に嫁いだ女の子が、新たに出会った人たちと触れ合いながら、戦時中の日常を頑張って生きていく話。

あらすじ

昭和19年(1944年)。

広島市の江波に住んでいた少女、浦野すずは不思議な縁からおよそ20キロ離れた軍港のある街、呉の北條家に嫁ぐことになった。

ボーっとしていて絵を描くのが好きだったすずは、知らない土地での生活に戸惑うこともあったが、夫になった周作とその家族たちに優しく気遣われながら、そこでの新たな生活を始めていったのだ。

 

その後、呉の遊郭で働く女性リンやテルなどの新たな出会いもあったおかげで、物資が不足する戦時中でも、すずは周りの人と助け合いながら、楽しく普通の生活を過ごしていった。だがその中で、すずは夫の周作とリンの過去の関係に気づいてしまい、誰にも言えない悩みを抱えてしまう。

 

そして昭和20年(1945年)。

戦況の変化によって、楽しく過ごしていたすずたちの普通の生活も、大きく変化していく。呉への度重なる空襲で、すずは大切なものをいくつも失ってしまうのだが…。

感想(ネタバレあり)

前作「この世界の片隅に」では、戦時中で健気に工夫しながら暮らすすずさんの姿や、周作さんとの仲睦まじい関係に癒され、すずさんたちのそんな普通の生活が戦争によって変わってしまう様子を見ることで、笑ったり怒ったりできる普通の生活が、実はとてもありがたいものなのだと気付かされました。

そして今作でも、すずさんたちと同じ時代でいろんなことを考えていたキャラクターたちを見て、自分が生きている現代の生活についてさらに深く考えさせられました。

 

前作も明るく見られるシーンから辛いシーンの振り幅がとても大きい映画だと感じましたが、今作で追加されたシーンによってそれがより強調された気がしました。加えて、リンさんをはじめとしたキャラクターの魅力を感じるシーンもたくさんあって割と感情が忙しかったので、一つ一つの場面について見終えた後に落ち着いてしっかり考えたい映画になっていました。

リンさんについて

追加されたシーンによっていろんなキャラクターの魅力が前作以上に引き出されていましたが、私はその中でもリンさんに関する場面が心に残りました。

前作でも

「この世界にそうそう居場所はなくなりゃせんよ」

映画「この世界の片隅に」のリンさんのセリフ

と言ってすずさんを優しく励ますシーンが印象的で好きでしたが、今回はさらに彼女の背景が追加されたことで、もっと良いところを感じられました。

恵まれた環境で育つことができなかったかもしれませんが、屋根裏で隠れて暮らしていた時も、遊郭に売られた後も、すずさんや周作さんたちに親切にされていたことを知ると、上の台詞は彼女のこれまでの人生経験から出た、より深いもののように思えました。

 

普段は今で言うサバサバ系女子のように見えますが、周作さんに名前や住所を書いてもらった紙を常に持っていて、嬉しそうにそれをすずさんに見せていたところは、意外な可愛い一面が見られてとても良かったです。その後、亡くなったテルちゃんを思って桜の木の上ですずさんに口紅を塗ってあげる場面での、アネゴ的なかっこいい優しさとのギャップに、私は完全にやられてしまいました。周作さんが彼女を好きになったのも分かりましたし、すずさんがリンさんには敵わないんじゃないかと言っていたところも、共感しかなかったです。

 

ノートの切れ端に住所を書いて渡していたのは周作さんの優しさも分かる良いエピソードだった上に、すずさんとのやり取りではすずさんの新たな一面まで見られました。長尺版になって、リンさん自身だけでなくて他人も活かせる本当に魅力的なキャラクターになったように思います。

 

すずさんたちに優しくされたリンさんが、それを知らずにすずさんに優しくして彼女の新たな居場所を作る手伝いをしていたという関係もとても素敵でした。劇中のキャラクターだけでなく現実の私まで、彼女によって他人に対して少し前向きにさせられた気がしました。

追加シーンについて

微笑ましいものから辛いものまで、新たな場面がたくさん増えていましたが、追加シーンによって前作にもあった場面がより印象的になっていたところが良かったです。

私はすずさんが絵を描くシーンが増えたのが好きでした。前作でも水原さんやすみちゃんなどに絵を描いてあげて彼らの心を癒していましたが、今回はリンさんとテルちゃんに描いてあげるシーンも加わり、すずさんの優しさと後半の幸せを与えていた手段を失う虚無感みたいなものをより強く感じました。

 

新キャラクターのテルちゃんについては、前作に出てきたキャラクターたちとは少し違ったタイプの人物だったので、また前作とは違った風に自分の生活について考えさせられました。

すずさんやお姉さんの径子さんは自分で居たい場所を選んで生きていましたが、テルちゃんは最期まで行きたいと思っていた場所に行けず、時代や周りの都合で好きなことができないままでいた女性でした。彼女のような生き方をしていた人が、つい数十年前まで珍しくなかったと思うと、ある程度好きなことができる今の社会は、私が思っているよりも有難くて大切にするべきものなのかなと思いました。

そして、戦争を経た今の時代をそれなりに楽しく過ごしている私が、より良い時代を次の世代に残すために何かできることはないかと真面目に考えてしまいました。

 

その他にも最初から最後までちょこちょこと追加のシーンがあったので、思っていたよりも新鮮な気持ちで楽しめましたが、やはり大筋は同じなので、新作として見てしまうと物足りない感じはどうしてもありました。しかし、「さらにいくつも」を観た後に、前作を観るとどうしてもリンさんの部分が物足りなく感じてしまうだろうとも思います。

前作以上にとてもキャラクターの魅力を引き出した映画だったので、観られてよかったです。

声優さんについて

前作よりも複雑で大人な感じを見せてくれたすずさん役ののんさんも、かっこよくて可愛いリンさん役の岩井七世さんも、優しい周作さん役の細谷佳正さんも、みなさん良かったですが、私は声優の花澤香菜さんの声がずっと前から大好きなので、花澤香菜さんが演じていたテルちゃんの演技が心に残りました。

 

私は戦闘機や戦艦にあまり興味がないので、戦闘機の音の響きの素晴らしさなどを言われてもあまりピンと来なかったのですが、テルちゃん役の花澤香菜さんの咳をする時の音を聞いた時は驚きました。

これまでに私が見てきた、花澤香菜さんが演じたキャラクターの中にも咳をしていたキャラクターはいたと思いますが、テルちゃんはアニメーション的な表現ではなく、本気で体調が悪い人がするような咳の音を出していて、テルちゃんと同時に花澤香菜さんの体調まで心配してしまいそうになるくらいにリアルでした。普通に話す時は穏やかでとても可愛い声なので、余計に心配になりましたし、結末は悲しくなりました。

 

思えば、大好きな花澤香菜さんの声を当たり前のようにテレビやラジオや映画館で聞くことができる今の状況も、私の世界の片隅にある、ありがたくてかけがえのない幸せの一つです。

少しでも長く、そして次の世代の少しでも多くの人が花澤さんの素敵な声を聞ける社会を作るために、私はこれからも花澤香菜さんを応援し続けようと心に決めました。

 

水原さん役の小野大輔さんの広島弁も前作同様にかっこよかったです。豪快に笑う時の声と、寂しそうな時や優しい時の声のギャップが相変わらず最高でした。

まとめ

ただの長尺版ではなく、追加シーンによって前作にあったシーンもより印象的になっていたので、前作を何度も観た私でも思っていたより楽しめました。リンさんをはじめとした前作からのキャラクターも、より魅力的に感じて良かったです。

また、テルちゃんなどの戦時中のキャラクターを深く見られたことで、今の世界をより良く次に残すために何ができるのかなどを、真面目に考えさせられました。とりあえず私は、大好きな花澤香菜さんの声を、自分を含めたたくさんの人が少しでも長く聞けるように、これからも花澤さんを応援し続けようと思います。

私の好きなことは、日本で花澤さんの素敵な声をもっと聞きたいという簡単なことですが、世界のどこにいるどんな人でも、好きなことがさらにやりやすい社会に、これからなっていけばいいなと思いました。

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