ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「マイノリティ・リポート」の感想,あらすじ

マイノリティ・リポート

2002年公開のアメリカ映画。主演 トム・クルーズ。監督 スティーヴン・スピルバーグ。

(C) 2002 FOX AND DREAMWORKS LLC. ITS RELATED ENTITIES. ALL RIGHTS RESERVED.

予知能力保持者が存在し,殺人事件の加害者が事件を起こす前に犯人を逮捕できるようになった未来の世界。そこで事件を捜査するはずの刑事が殺人をすると予知されてしまい,元同僚たちから逃げながらシステムの裏側と真実を探っていく話。

あらすじ

西暦2054年

プリコグと呼ばれる3人の予知能力保持者の力を使った犯罪予知システムの導入により,その時代の殺人事件の捜査はそれまでのものとは,全く違うものになっていた。

まずプリコグが未来に起こる殺人事件の被害者と加害者の名前を予知する。次に,彼らが見た未来のイメージの映像を,刑事がくまなく観察して場所などの詳細を推理し,事件が起きる前に加害者になるはずの人物を逮捕する。というものだった。

アイリス・ハイネマン博士が考案したそのシステムの導入後,ワシントンD.C.で殺人事件は一つも起こらなくなった。

 

犯罪予防局の刑事であるジョン・アンダートンも,そのシステムを使用して毎日殺人事件の防止に努めていた。

ある日,司法省の調査官ダニー・ウィットワーが犯罪予知システムの視察にやって来た。彼はそのシステムに欠陥が無いかを探しに来ていた。完ぺきではない人間が扱うそのシステムに疑問を持っていたのだ。

ウィットワーがいなくなった後,ジョンはプリコグの一人のアガサに抱きつかれて,過去の事件の予知映像を見せられた。恐ろしい事件の予知の場合,プリコグたちは過去の映像を何度も見ることがあるらしい。エコーと呼ばれるプリコグのデジャビュのようなもので,珍しいものではないと言われたが,その時のアガサの様子が気になったジョンは,その映像の事件を調べ始めた。

 

アガサが見せた事件は,システムが導入されたばかりの頃の相当古い事件だった。加害者の身元は不明。その人物はアン・ライブリーという女性を溺死させようとしたようだった。システムのおかげでアン・ライブリーは助かったが,その後彼女は行方不明になっていた。

ジョンはアガサの予知イメージの映像を見ようとしたが,その事件のアガサのイメージは,抜けていて見られなかった。他の二人のプリコグのイメージが存在してアガサのだけが無いことを不思議に思い,彼はそのデータを持ち出した。

 

そして次の日。

プリコグたちが新たな事件を予知し,ジョンはそれについての捜査を始めた。

被害者はリオ・クロウ,男性,拳銃による計画殺人だった。ジョンは,普段通りプリコグたちのイメージを見て現場の状況を確認していたが,そこに映っていた加害者の姿はジョン自身だったのだ。ジョンはこの予知が,システムに疑問を持っていたウィットワーの罠であると考えて,予防局から逃げ出した。

他の刑事によってジョンが殺人事件を起こす予知が見つかると,彼は元同僚たちから追われる身となった。

 

捜査に加わったウィットワーと同僚たちから逃げ切り,ジョンはシステムの考案者であるハイネマン博士のところに辿りついた。

ジョンがプリコグのイメージの改ざんについて博士に尋ねると,彼女は意外な答えを彼に返した。そして,ジョンの無実を証明するイメージがアガサの脳にあるかもしれないことを聞いた彼は,予防局に戻りアガサをさらった。

アガサの脳内のイメージから,自分の無実の証明となるものを探すジョンだったが,彼の求めるものは見つからなかった。

 

そしてアガサと共に警官から逃げているうちに,ジョンが殺人を犯すと予知された時間迫って来た。自分が会ったことも無い相手を殺すはずがないと考えるジョンだったが,彼の周りの状況は予知のイメージで見た通りのことが再現されていく。

その後,ジョンはプリコグたちに予知された通りの状況でリオ・クロウと出会い,彼のことを詳しく知ったジョンは,クロウに銃を突きつけた。

 

殺人事件を起こすと予知された時間がやって来た時,ジョンはある決断をした。その後,彼はそれまでの状況から,アン・ライブリー殺害事件の真実と,犯罪予知システムの裏側に気付いていくのだった。

感想(ネタバレあり)

ストーリーについて

未来予知から未然に殺人事件を防ぐという面白い設定に,警察官である主人公が殺人事件を予知されるというドキドキな展開もあって,最後までどうなるのか気になりながら楽しめました。それに未来要素を活かしたアクションシーンも見てて面白かったので,いろんな面から楽しめたと思います。事件の真相とそれを可能にしたトリックも,それまでの情報をうまく使ったものになってて,なるほどなと思わされました。

 

特に,ジョンがクロウを殺すと予知された時間が迫っている時の緊張感がとても良かったです。

途中までは,警察官のジョンが予知されていることを知っているのに,会ったことも無い相手を殺すわけがないと信じていました。けれど,予知されたイメージ通りのことが次々と起こっていくのを見て,もしかしたら予知が当たるのかもと思い始めて,とてもドキドキしました。

そしてクロウの部屋の写真に気付いたジョンを見て,予知通りになってもおかしくないなと思ってからの,ジョンの時計のカウントダウンの時の緊張感はすごかったです。最後の一秒までどっちなんだろうと思わされました。最終的には警官としての心を持っていたみたいで良かったです。

 

それから,未来技術の演出もかっこよかったです。

空中のディスプレイを手で動かして操作する動きは劇中に何度も出てきましたけど,出てくる度にかっこいいなと思いました。それと,工場で警官と戦ったときに,ジョンが使った衝撃波みたいなものを出す銃もとてもかっこ良かったです。

でも,一番印象に残ったのは工場でジョンがウィットワーたちから逃げる場面です。自動で自動車を作っている工場だったので,ジョンとウィットワーは自動車を作る機械から避けながら戦っていて,さすがに危険なのでウィットワーはラインから逃げるんですよね。ラインに残ったジョンは,出来たての車の中に入ったままそれを運転して逃げるという方法が,とても斬新かつスタイリッシュで面白かったです。あまりにスタイリッシュすぎたので,逆にふざけているのかとも思いました。つい笑ってしまいました。

キャラクターについて

この映画では私はジョンより,ウィットワーがとても魅力的なキャラクターだなと思いました。

司法局の役人なのに警官のジョンとその仲間たちよりも,現場の状況からしっかり推理できていましたし,ジョンとも互角に戦えていました。完ぺき超人というやつです。

彼が推理の面で優秀な理由は,多分ジョンを含めた他のみんながシステムを信用しすぎていて,システムを無視した推理をしなくなっていたからなんでしょうね。だからシステムの信頼性を疑っていたウィットワーだけが,まともに推理できる状況だったんだと思います。しかし,ウィットワーが一番初めに事件の真相に気付くとは思いませんでした。

でも彼の凄いところは,信頼性を疑っていながらもジョンを追う時には便利だからそれを使っているところだと思うんです。完ぺきに信用はしていないけれど便利なものは使う,しかしそれを使わずに解決する手段も持っているという彼のやり方は,便利なものがいっぱいある世の中で必要なものだろうなと感じました。

みんなが当たり前に思っていることを,一人だけでも疑って真相を知ろうとしていた彼の姿勢はとてもかっこよかったです。見た目はジョンの方がかっこいいと思いますけれど,行動はウィットワーの方が私は好きです。

ジョンは最後のシーンで追いつめるところだけはしっかりしていましたけど,他は行き当たりばったりで,身体能力と行き先で出会った人に助けられている印象があります。

偉い人がイメージを利用したと分かっていながら,最初に長官に真相を話したウィットワーはすごくアホだと思いますけれど,あれは脚本上の都合だと思います。警察側にいながら真相に辿りつくぐらいの有能な奴を生かしていたら,きっと主役のジョンが活躍する必要が無くなって,ウィットワーだけで事件が終わってしまいますから。

主役以上に優秀なキャラクターだったと思いますけど,優秀過ぎたせいで映画製作側に殺された人間だなと感じました。

 

それと,聖域でプリコグ三人の世話をしていたウォリーは,物語の前半と後半でかなりイメージが変わりました。最初のシーンでは,まともな意識が無い彼らに優しく声をかけていたので,思いやりのある人なのかなと思っていました。けど,アガサが普通の女の子で薬を使って無理矢理予知をさせられていたと知ってから,彼を見ると本当に気持ち悪かったです。もしかしたら,アガサのことをよく知らない可能性も無くはないですけど,薬をうっているのは彼なのできっと知ってるんですよ。だから,後半の薬をうちながらアガサに声をかけているウォリーは,気持ち悪かったです。

 

あと,目を移植する医者の吹き替えの言い回しが良かったです。『目が無い』とか『新しい道に開眼できた』とか目に関連付けた言葉を使っていて,おしゃれだなと思いました。

でもこの世界は網膜スキャンに頼り過ぎだと思います。本気で監視社会にしたいのであれば他の認証方式も組み合わせればいいのに,と少し思いました。

設定について

劇中でジョンは,犯罪予知システムが無実の人を有罪にするかもしれないという事を知って焦っていましたけど,序盤でジョンがやっていたように,ギリギリで止められるのであれば未遂として捕まえられるんじゃないかなと思いました。そうしたら仮に予知の間違いが起きても殺人は起きないですよ。アガサたちに負担をかけるという面は確かに良くないですけど。

 

でもプリコグたちのことを除いても,私はこのシステムの社会は健全ではないと思います。このシステムで監視された社会で生きる人は,殺人事件の計画は立てないかもしれませんけど,それは考えただけで捕まるから考えないし実行しないというだけなんですよね。

でも本来多くの人が殺人事件を起こさない理由は,それを少しでも考えた時にそれによって悲しむ人や,迷惑を掛ける人がいるからやめておこうと考えるんだと思います。

他人のことを考えずに自分が捕まるかどうかしか考えられない社会というのは,私は健全だとは思わないですし,好きじゃないです。

まとめ

分かりやすい設定と緊張感のある展開によって,最後までどうなるか分からずにドキドキしながら楽しめる映画でした。事件の真相もそれまでの要素をうまく使ったもので推理していて,良くできていたと思います。

これからの便利になっていく社会のこととか犯罪のこととかも,登場人物から少し考えさせられました。

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