ビッグ・フィッシュ
2003年公開のアメリカ映画。日本では2004年公開。出演 ユアン・マクレガー。監督 ティム・バートン。
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ホラ話をして他人を楽しませることが得意な男性の人生を描いたファンタジー映画。その男の作り話にうんざりしていた息子が、改めて夢のようなホラ話を聞いていくことでそれまで気づかなかったことを見つけていく。
あらすじ
エドワード・ブルームは社交性が服を着て歩いているような男だった。エドワードが語るドラマチックな人生の昔話はこれまで多くの人々を喜ばせ、たくさんの人に好かれてきたのだ。
しかし彼の息子のウィルは違っていた。彼はエドワードの面白い話を幼い頃から飽きるほど聞かされ、ほとんどが作り話のそれらにうんざりしていたのだ。
エドワードはウィルの結婚式の場でさえ、大きな魚についての自身の冒険話を客に聞かせて、場を盛り上げていた。自分のことが添え物のように扱われたウィルは、それに怒ったきり、その後の三年間父親と口をきかなくなったのだ。
そして三年後、ウィルのもとにエドワードの死期が近いという知らせが届いた。
ウィルは作り話ではない本当の父親の姿を亡くなる前に知っておくため、すぐに妊娠中の妻ジョセフィーンとともに、エドワードたちのもとに戻った。だが久しぶりに会っても、エドワードがする話は昔と変わらない荒唐無稽な作り話だった。
エドワードはその後、ジョセフィーンにそれまでの人生についてのエピソードを語り始めた。
それは故郷に住んでいた魔女や巨人のこと、人を襲う森を冒険したことや、妻とのロマンチックな馴れ初めについてなど、初めて聞くジョセフィーンにとってはとても面白い話ばかりだった。
その後、エドワードの話を聞いて彼の人生を改めて振り返ったウィルは、それまでは気づくことがなかった彼についての事実に気づいていく。そして、彼がしていたホラ話に隠された意外な思いを知っていくことになるのだった。
父親のホラ話が嫌いだったウィルが、彼の最期にかけた言葉とは…。
感想(ネタバレあり)
エドワードが語る昔話の展開が予想外なことばかりでとても面白かったです。作り話だと分かっていても、いつのまにか夢中になって観ていました。
現実ではあり得ないような綺麗な光景や不思議な場面、ロマンチックな描写などのいろんな面があるホラ話の楽しさを、とことん感じられる優しい映画でした。
私は大げさに話をする人にはこれまであまり良いイメージがありませんでしたが、エドワードが多くの人を楽しませていた様子を見ていると、他人を傷つけたり迷惑をかけたりしないのなら、少しの嘘も悪くないかもと思わされました。
演出ついて
最初はウィルの目線で見ていたのでエドワードが話す嘘の話には少しうんざりする部分もあったのですが、途中からは自然に若いエドワードのことを応援していました。
それは意外で面白い展開のおかげでもあると思いますが、私の中ではエドワードがとても優しくて一生懸命な人だったのが一番のポイントでした。
みんなからバケモノだと言われて嫌われていた巨人に優しい言葉をかけてあげていたり、運命を感じた女性と結婚するためにひたむきに頑張っていた姿が、ハンサムで爽やかなユアン・マクレガーさんの見た目と合わさってとてもかっこよく見えました。
特に、サンドラの情報を得るためにサーカスで働くところが好きでした。
ひどい環境で1ヶ月間働いた結果、花が好きとか音楽が好きとかの、全然労力に見合っていない小さな情報しかもらえないのに、その情報を聞いて彼女に会うのを楽しみにして微笑むエドワードがとても前向きで良かったです。
その後、花が好きという情報を使って結婚することができた展開は、努力が報われて良かったなと単純に思わされました。
映像的に面白い描写があったのも好きでした。
サンドラを初めて見た時に、周りの時間が止まってエドワードだけが動いているところや、スイセンの花畑の中で二人が結婚を決める場面は、とてもロマンチックで印象的でした。
ホラ話について
中盤で、エドワードが語るホラ話に一部本当のことが入っていると分かった時は、どこまでが本当の話だったのかが気になりました。
しかしその後、彼がその話でいろんな人を楽しませていたのだと分かると、相手が楽しめたのなら何が本当で何が嘘とか、どうでもいいなと思わされました。
ウィルが最後エドワードを安心させるために、嫌っていたホラ話の続きをするところもとても優しくて良かったです。
ウィルが生まれた時についての話はほとんど完全なホラ話でしたが、私はウィルのことを大事に思っているからそんな話を作ったのだと感じました。大事な息子が生まれたことを少しでも他人に覚えてもらえるように、話をより印象的に面白く作り変えたんじゃないかなと思いました。
ほかのエピソードについても、きっといろんな人に覚えてもらいたいほど大事に思っているから、同じように印象的に作り変えていたのだと私は思います。
そんなエドワード自身が、その後魚の形のホラ話となって永遠に生き続けるというのも、綺麗にまとまっていて良かったです。
大切な人が亡くなるのは間違いなく悲しいことなので、そんな人が忘れられないように語り継ぐための嘘は良いものかもしれないと最後に感じました。
私は吹き替え版で観ましたが、ジョセフィーンがエドワードと話すシーンの
「お父さんの話はヒレつき?」
映画「ビッグ・フィッシュ」のジョセフィーンのセリフ
というセリフの訳が、ホラ話とも魚ともかかっていてすごいなと感じました。
まとめ
不思議で楽しくてロマンチックな雰囲気のホラ話の世界が、優しくて一生懸命なエドワードのキャラクターと合わさってとても引き込まれました。
ハンサムで爽やかな笑顔を見せるユアン・マクレガーさんが、子供やみんなを楽しませるためにホラ話をする様子がとても優しくて良かったです。
他人を傷つける嘘は良くないですが、他人を楽しませるための嘘は良いものかもしれないと感じられました。
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