ササキの映画感想日記

観た映画やおすすめの映画の感想などを書いていこうと思います。あらすじには多少のネタバレを含んでいるので未視聴の人は注意してください。twitterアカウント:@sasakimovie

映画「リリーのすべて」の感想、あらすじ

リリーのすべて

2015年公開のイギリス、アメリカ、ドイツ制作映画。原題は『The Danish Girl』。日本では2016年公開。主演 エディ・レッドメイン。監督 トム・フーパー。

(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

1920年代のデンマーク。自分の心が女性であると気づき、世界初の性別適合手術を受けた男性画家と、彼を支えた妻との愛の物語。

あらすじ

1926年 

デンマークでトップクラスの人気を誇る風景画家のアイナー・ヴェイナーと、その妻で肖像画家のゲルダ、二人には画家としての人気の差はあれど、お互いに不満もなく、コペンハーゲンで仲良く暮らしていた。

そんなある日のこと、ゲルダが描いていた絵のモデルの女性が来られなくなってしまい、彼女はアイナーにそのモデルの代わりを頼むことにした。

ゲルダは女性ものの服を身に着けたアイナーのことを、からかって「リリー」という名で呼んだ。そして軽いゲームのようなつもりで、リリーとして彼を舞踏会につれて行くことにしたのだ。

 

もともと美形であったアイナーは、リリーとして行った舞踏会で参加者の注目を集めた。そしてリリーが、舞踏会に来ていた男性と、まるで男女のように親しげに接している姿を見て、ゲルダは困惑してしまう。

次の日、自分の夫の思いもよらない行動を見てしまったゲルダは、アイナーに「もうリリーになるのはやめて」と頼んだ。

アイナーは自分の中に本物のリリーがいることに気づきながらも、「努力してみる」と答えた。

 

 

しかし、その後もアイナーがリリーとして過ごす時間が無くなることはなかった。それどころか、その時間は徐々に増えていったのだ。

ゲルダはリリーの肖像を描くことで、パリで個展ができるほどの人気の画家になったが、その隣にアイナーがいる時間はほとんどなくなっていた。

 

リリーと向き合い、彼女の本当の心を知ったゲルダは、その後何人もの医者にかけあったが、その答えは、性的倒錯や心を病んでいるといった答えばかりであった。

それでもゲルダは諦めず、アイナーとしての昔の友達などに相談をしつづけた。すると、リリーを正しいと言ってくれる、一人の医者を見つけ出したのだ。

その医者は、リリーの体を女性にする手術を勧めた。しかしそれは、前例もなければ成功する保証もなく、感染症や合併症のリスクを秘めた難しい手術だった。

危険すぎると言ってゲルダは手術を受けることを反対したが、リリーはその話を聞いて喜んでいた。

 

手術が成功すれば苦しんでいるリリーは救える。しかし、愛した夫であるアイナーはもう二度と帰ってこない。失敗すれば死んでしまうかもしれない。その状況で、愛する夫のために彼女が出した答えは……。

感想(ネタバレあり)

とにかく、アイナーからリリーに変わっていくまでの、エディ・レッドメインさんの表情の変化がものすごかったです。

アイナーとして過ごしている時と、リリーとアイナーの間で葛藤している時と、完全にリリーとして暮らし始めた時とで、受ける印象が全部違って、驚くばかりでした。

特に、葛藤している時の表情はとても繊細なもののように見えて、見ているこっちまで不安になるくらいでした。迷いとも恐怖とも喜びともとれる、何とも言えないけどいろんな感情を秘めているような顔が、すごく心に残っています。

中でも、リリーとしてキスをしているシーンで、ヘンリクに突然アイナーと呼ばれるシーンが、私にとってはとても衝撃でした。もとから女性だったみたいに嬉しそうな表情でキスをしていたと思っていたら、アイナーと呼ばれた途端に真顔になって、その表情が男性のアイナーに見えるんですから。自分が何を見ていたのか、だれを見ていたのか、少し混乱しました。

アイナーでいたシーンとリリーでいたシーンがまた、同じ人が演じているとは思えないくらい別人に見えたのもすごかったです。後半のリリーとして生きている彼女は、本当に楽しそうで良かったです。

 

 いろいろ思うところはありますが、私の個人的な感想としては、最終的に彼女はリリーとして笑顔で終わったので、アイナーとして本当の自分を抑え込んでいるよりは、良かったのではないかと思いました。

ゲルダについて

リリー目線でこの物語を見ていると、最終的に良かったと思えましたが、ゲルダとしてはそう簡単には思えないでしょうね。今まで男性として夫として接していた人が、元から女性で女性として生きていきたいと言うんですから。戸惑うのも当たり前ですし、アイナーに戻ってきてほしいと思ってしまうのも当然だと思います。

 

しかし、それでも彼女を避けずに、愛した旦那さんとの新しい関係を築こうとしたゲルダは、単純にすごいなと思わされました。

今の時代であれば、それができる人も割といるかもしれません。性同一性障害とか、トランスジェンダーなどの問題を、いろんなところから知ることができて、テレビなどでも有名人がそれらについて発言したりしていますから。

でも1920年代に、いろんなお医者さんから「気が変だ」とか「異常だ」とか言われ続ける中で、「あの人は正気だ」とはっきりと主張し続ける、というのは、たいていの人にはできないことだと思います。きっと多くの人は、周りの人やその時代の識者とされている人の意見に流されてしまうでしょう。

自分を愛してくれなくなるかもしれないのに、周りの意見よりもその人が望むことを信じて支え続けるなんて、私だったらとても無理です。そんなことができるゲルダがいたからこそ、リリーは最後には自分になることができたのだと思います。

 

昔は違ったけれど、今では当たり前になっている価値観、というのは山ほどあります。その一つ一つは、ゲルダのような心の強い人が必死に頑張って変えてきたものなのかもしれないなと思いました。私もゲルダほどとはいかないまでも、苦しんでいる人の力になれるような人間になれたらいいなと思います。

ハンスについて

 正直に言わせてもらうと、私はゲルダとリリーの愛には感動しましたが、彼らに共感することはあまりできませんでした。

私が一番共感できたのはハンスです。

彼はアイナーに何があったのかどうしても分からないと、彼女に言いながら、少しでも分かろうとして話を聞こうとしていました。

そして、リリーの気持ちを完全に理解などしていないとは思いますが、彼は自分なりの答えを見つけて、それを彼らに伝えていたんです。

 

「友と呼びたい人は少ないんだが、君はその二人だ」

 

自分が昔、一緒に過ごしたアイナーのことを否定はできないけれど、彼が言うリリーのことも否定せず、どちらも一人の人間として尊敬していることを、別れ際に彼女に言ったんです。

分からないことから逃げずにちゃんと考えて、自分も相手も誰も傷つけないような答えを見つけようとするその姿勢は、立派だな、かっこいいなと思いました。

さすがプーチン大統領に似てるだけあって、大きな器を持った人だなと感じました。同じ名前でも、どこぞのハンス王子とは大違いです。(この映画とはまったく関係なかったです。申し訳ない。)

マイノリティについて

「イミテーション・ゲーム」の感想でも同じようなことを書かせていただきましたが、大事だと思うことなのでもう一度書きます。

劇中で描かれていた時代に、リリーのことを「異常だ」とか言う人を見て、現代に生きる私たちは、彼らのことを悪い人だと思うかもしれません。でも時代を考えれば、仕方のない部分もあったのだと思います。

昔は今よりもずっと世界が狭かった。直接自分の足で行ける範囲、目で見える範囲、耳で聞こえる範囲でしか、基本的に判断材料が無かったうえに、迫害されるような少数派は、それを隠さなければ生きていけない状況もあったのでしょう。だから、たとえ医者でも接する機会や知る機会がないのですから、リリーのような人の心情などに気づかなくても、無理はなかったかもしれないと思います。

でも今は違います。このような映画や、インターネットからでも、世界中の自分と違う立場の意見を聞くことができますし、目にすることもできます。

世界中の情報を手にすることができるこの時代に生まれて、周りに苦しんでいる人がいるかもしれないと分かっている人ならば、そんな人をさらに苦しめないようにするために、私たちは少しでも学ぶべきなのではないかと思います。

 

おそらく、みんながみんな、ゲルダのように強い人ではないと思います。世界中の全員が彼女のような、強い心と愛を持って周りと違う考えを訴え続ける、なんてことはきっと不可能です。ですがハンスのように、相手のことを分かろうと一生懸命考えるということは、多くの人ができることだと思います。

どのみち、世間的にマイノリティと言われる人であろうとなかろうと、他人のことを完全に理解することなんてできません。しかし、それでも相手の立場になって考えて、せめて他人を傷つけないように気を付けることは大事だと思います。

そんな風に、一人でも多くの人が、目の前の相手のことを思いやる心を持って接すれば、きっとこの世界はいろんな人にとって、もう少し生きやすい社会になるのではないかと思います。

 

別の立場の人のことやその歴史を学ぶためにも、このような映画は必要だと私は思います。この映画がたくさんの人に観られているというこの環境も、時代の変化の一種なのかもしれません。

まとめ

エディ・レッドメインさんの表情の演技がとてもすごかったです。アイナーの時とリリーの時はまるで別人でした。

リリーが感じていた苦しみは、私には想像もできないくらいのものなのでしょうが、ゲルダの愛のおかげで最後には救われたのだと感じました。

彼女のような人が頑張った結果として、私たちは昔よりも少しは生きやすい社会で暮らすことができているのだと思います。ですが、さらにいろんな人が生きやすい社会にするためにも、私たちはもっと考えて生きていかなければいけないと思わされました。映画だけでなく、その他のいろんなものからでも、もっと勉強をするべきだなと反省しました。

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