LIFE!
2013年公開アメリカ映画。日本では2014年公開。監督・主演 ベン・スティラー。出演 クリステン・ウィグ、ショーン・ペン。原題は『The Secret Life of Walter Mitty』。
(C) 2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
アメリカのグラフ誌『ライフ』で長年働いてきた冴えない男性が、最終号の表紙に使う写真を見つけるために、カメラマンの足取りを追って世界中を旅する話。旅の中でさまざまな体験をしていくうちに、自信を取り戻して人生の真髄を見つけ出す様子が描かれる。
あらすじ
主人公は、アメリカの伝統的なグラフ誌『ライフ』の編集部で、写真管理を16年勤めてきたウォルター・ミティという男性。
ウォルターは日常の中で、映画スターのようなかっこいい自分を想像する癖があったが、実際の彼はそれとはかけ離れた人物だった。彼は、他人に自慢できるような体験談が何一つ無く、気になっている同僚の女性に声をかける勇気も出せないような、冴えない男性だったのだ。
そしてある日、ウォルターが働く会社が突然買収され、歴史あるライフ誌が休刊になることが決まった。
気を落とすウォルターのもとには、それまでライフ誌の写真を撮ってきたカメラマン、ショーン・オコンネルからの手紙と贈り物が届いていた。贈り物の中身は、ショーンが最終号の表紙として載せる予定で撮った写真フィルムと、ウォルターの確実な仕事を評価していた彼からの財布のプレゼントだった。
ショーンからの手紙には、中にある写真の25番フィルムが彼の最高傑作であり、人生の真髄とも記されていたのだが、送られていたフィルムには、なんとその25番だけが抜けていた。
ウォルターは、ショーンが送り忘れているのではないかと考え、彼と連絡を取ろうとした。だが、世界中を旅しながら写真を撮るショーンのはっきりした居場所は誰にも分からなかった。
そうしてウォルターは、ライフ誌の最終号を最高のものにするため、ショーンのほかの写真から読み取れるわずかな手がかりを頼りに、彼の足取りを辿る旅に出たのだった。
ショーンを追うその旅はウォルターにとって過酷で危険なものになるが、同時に彼がそれまで想像すらしなかった、刺激的で貴重な体験にもなっていくのだった。
ウォルターの旅の最後に待ち受ける体験とは…。そして、ショーンが人生の真髄と評した最高の写真に写されていたものとは…。
感想(ネタバレあり)
これまで大した体験談が無いと思い込んで自信を無くしていたウォルターが、旅の中ですごい体験をしていくうちに、自分の人生に自信を持って、いろんなことを楽しむようになっていく様子が、とても幸せそうで印象的でした。
人生について深く考えさせられるようなところもありましたが、それまでの要素を生かした最後の意外な展開もあり、娯楽映画としても楽しめて前向きにもなれる素晴らしい映画でした。
人生の真髄について
ウォルターが探していた、人生の真髄の写真があった場所やその内容が、意外と身近にあるけれど、しっかり見ないと分からないものだったというところが、とても好きでした。地道なことでもしっかりと続けていれば、見てくれる人はいるかもと安心するのと同時に、私も身近にあって目立たないようなものでも、ちゃんと見て良いところを見つけるべきだなと感じました。
ウォルターやショーンが身近にあるものの素晴らしさを見つけられたのは、それまでの経緯でいろんな体験をして、その瞬間を心から楽しんでいたからなのでしょう。
劇中でショーンは、『美しいものは注目を嫌う』と言っていました。彼がユキヒョウを撮るためにいろんな体験をして学んでいたように、人生の真髄や他人の素晴らしさなどの美しいものを見つけるためには、あらゆる経験を積まなければならないのだと思います。
それは、今の私には簡単に見つけられるようなものではないのかもしれません。ですが、これから自分の人生の良さを実感するためにも、他人の素晴らしさを見つけるためにも、私もいろんな新しい体験をして、その瞬間を楽しんでいかねばと思わされました。
そして、冴えない男だったウォルターが旅立つきっかけになったのは、ショーンと彼のネガフィルムが見つからなかったことでしたが、私はそのように大きく変わるきっかけになり得ることは、誰の日常にも溢れているのではないかと思います。
『世界を見よう。お互いを知ろう。それが人生の目的だから』
映画「LIFE!」のライフ誌のスローガン
というのは、ウォルターが働いていたライフ誌のスローガンでしたが、日常の中の世界に当たり前にあるものをしっかり見つめて、知ろうとする勇気さえ持てば、新しいことはいつでも見つかるのではないかと改めて思いました。一番大事なのは想像ではなくて、現実での最初の一歩を踏み出す勇気だと私は思います。
とりあえず、グリーンランドで酔っ払いが操縦するヘリに飛び乗るところから始めるのがいいのかもしれません。
空想のシーンについて
ウォルターはよく現実とはかけ離れた空想をする人物だったので、序盤は特に迫力のある空想シーンがたくさんあったのが印象的でした。
それらはやはり、彼の自信のなさを表したものだと思います。現実で目を背けたくなるようなことが起こった時や、考えたくないことを聞かれた時などに、ウォルターは現実から空想の世界に逃げ込んでいました。
なので、空想のシーンについては、私は迫力がある映像や楽しい描写であっても少しマイナスなイメージを感じていました。
しかし、中盤にあったヘリコプターに飛び乗るシーンはとても良くて好きになりました。
それまでは現実から逃げるために使っていた空想を、新しい世界に踏み出すための勇気を出すために使っていたところに、彼の前向きな変化を感じられた気がしました。
そして、その生き方を変えるためのイメージが、歌を歌うシェリルだったというのも、ウォルターが彼女のことを特別に思っている感じがして良かったです。
ウォルターが描いていた空想の世界は、どれも楽しそうでワクワクさせられるようなものでしたが、彼が現実に旅していたグリーンランドやアイスランドやヒマラヤの景色なども、それと同じくらいか、それ以上に綺麗だったり壮大に思えて感動させられました。
空想の世界は面白くて、一歩踏み出すために背中を押してくれることもありますが、同じくらい現実の世界も綺麗で感動させられるところもあるので、どちらも大事だと実感させられました。
荒んだ心で生きていれば、悪いところばかり目に付く現実の世の中ですが、もっと世界をよく見て、良さを知ろうとする勇気を持てば、いずれは人生の真髄を見つけてもっと楽しめるのかなと、深く考えさせられるような映画でした。
まとめ
ショーンが撮った人生の真髄を写した写真を追いかけて、ウォルターがあらゆる貴重な体験をするうちに、自分の人生に自信を持っていろんなことを楽しむようになる様子が、見ていてとても前向きな気持ちになれて良かったです。
深い面もありましたが、彼が探していた写真の中身などの娯楽性がある描写も多くて、意外と気楽に楽しめる映画でした。
想像の世界も楽しいですし、役に立つこともあって素晴らしいですが、現実で体験して初めて見えてくる素晴らしいものもあるのだなと改めて思わされました。結局、知らないことを知るためには、一歩踏み出して現実をよく見る勇気が大事だと思います。
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