ライフ イズ ストレンジ
フランスの開発スタジオDONTNODが開発したゲーム。2015年発売。日本語版は2016年発売。
(C)Square Enix Ltd 2015. All rights reserved. Life is Strange is a trademark of Square Enix Ltd. Square Enix and the Square Enix logo are trademarks or registered trademarks of Square Enix Holdings Co. Ltd. All other trademarks are property of their respective owners.
時を巻き戻す能力を手に入れた主人公が5年ぶりに再会した親友と共に,その力を使ってある女子生徒の失踪事件を調査する五日間の物語。
あらすじ
主人公はマックス・コールフィールドという18歳の女子高生。彼女は両親の都合で一度地元を離れたが,名門のブラックウェル高校で写真を学ぶために,5年ぶりに一人でアルカディア・ベイに帰ってきていた。
彼女は学校の人間関係について悩むこともあったが,好きな写真を尊敬するジェファソン先生から学べているという事もあって,何とかその学校で一か月間過ごしていた。
マックスの通う学校にはおよそ半年前にある事件が起きていた。レイチェル・アンバーという女子生徒が,突如失踪したのだ。半年たった今でも,その学校の校舎や寮のいたるところにレイチェルを探す張り紙が貼られていた。
2013年10月7日
マックスは授業中,アルカディア・ベイの街が巨大な竜巻に襲われるリアルな夢を見た。
彼女が気分を変えるために授業終了後に女子トイレに行き,そこにいた青い蝶を写真に撮っていると,そこへ学校一のお金持ちで乱暴な男 ネイサン・プレスコットが入って来た。彼の危なっかしい様子からマックスがとっさに隠れると,すぐにその女子トイレに青い髪でパンク風の恰好をした女子が入って来た。マックスはその女子がネイサンと口論した後,彼に銃で撃たれる場面を目撃してしまう。マックスが驚いてその場に飛び出すと,彼女はいつの間にかさっきの授業を再び受けていた。先生たちの言動がまったく同じだったことから,彼女は時間がまき戻ったのではないかと考えた。
マックスはこれから同じことが起こるなら,トイレで撃たれた女子を助けられると考えて行動し,無事にネイサンから彼女を逃がすことに成功した。
その後,マックスは駐車場でネイサンに絡まれるが,命を救ったパンク風の女子が車で通りかかり彼女に助けられた。変わりきった風貌から女子トイレで見た時は気付かなかったが,その女子はマックスが引っ越す前までよく遊んでいた親友のクロエだったのだ。クロエは5年間全く連絡しなかったマックスに怒っていた。しかし,外見は変わっていても心は変わっておらず,すぐに昔のように楽しく話すようになった。
離れ離れになっていた5年間のことを話していると,半年前に失踪したレイチェル・アンバーはクロエの友達で,彼女を探す張り紙をばらまいていたのがクロエだったことが分かった。
そしてマックスは再び,アルカディア・ベイの街が竜巻に襲われる夢を見た。リアルな夢で見たその日の日付は,2013年10月11日。その日からたった四日後のことだった。
マックスはその夢が自分の特殊な力によって見た夢だと考えてクロエに相談したが,彼女は簡単には信じてくれなかった。すると,そこへ季節はずれの雪が降った。常識的に起こるはずのない現象を目にしたクロエは,マックスの話を真面目に聞くことにした。
その後,マックスはクロエと共に,自分に突如備わった能力を使ってレイチェル失踪事件と異常気象について調べ始める。その行動によって彼女は五日間,とても重要な選択を迫られ続けることになるのだった。
感想(極力ネタバレなし)
ストーリーについて
失踪事件の謎を追う推理要素もあり,マックスとクロエたちの友情や感動要素もありの,とても盛りだくさんで面白いストーリーでした。時間を巻き戻す能力もうまく使っていて,本当に最後の最後まで夢中になって楽しめました。
特に,物語の前半と後半の緩急の差がすさまじいストーリーだったと思います。
前半は,5年ぶりに会った親友のクロエとのノスタルジックなシーンや,彼女との久しぶりの生活をしながら事件を捜査する二人の仲の良い姿が,とても楽しそうで良かったです。中でも,一日目の終わりの夕焼けのシーンの雰囲気が最高でした。
しかし後半はそれまでの雰囲気とは全然違って,それまで以上に激しい時間移動による予想外な展開の連続で,驚いてばかりでした。これに似たタイムトラベルもので衝撃の展開の連続だった『バタフライ・エフェクト』という有名映画があるのですけど,それに負けないくらい驚きました。
楽しそうにしていた二人の裏で起こっていた事件の真相と,異常気象の真実を知った時は,本当に心がえぐられるような気持ちでした。
それから,プレイし始めた時と,終盤でいろいろ知った後とでは,同じことが起きているシーンでも,自分がそのシーンを見て思うことがまるで違っていたことに自分で驚きました。それまでの4日間で,クロエと過ごしていろいろな体験をしたマックスの気持ちの変化や,成長具合を自分の心で体感できているように思えて,とても良くできている話だなと思いました。
最後の選択のシーンでは,それまでの5日間でいろんな人と関わって,助けたり助けられたりしてきたからこそ,本当に迷いました。結局,5分くらい考えて苦しみながら決断しました。
別の選択肢も,チャプター選択からいつでもできるような親切設計ではありますけど,やっぱり最初に見る方をどちらにするかは悩みました。私は本当に申し訳ない気持ちで月曜日に戻る方を選びましたけど,どちらも正解だと思います。
これは映画化しても面白いかもしれないと思いましたけど,映画になったら自分で選択して決めた感じが無くなって,マックスの気持ちにここまで入り込めなくなるかもしれないとも思いました。
このストーリーは,ゲームだからこそこんなに魅力的で感動できるものになったんだと思います。もしこれがVRになろうものなら,私は精神崩壊の心配をしなければいけなくなります。
ゲームシステムについて
シナリオがとてもドラマチックだった上に,それに引き込ませるようなシステムがいくつもあったおかげで,私は最後まで夢中になってプレイできたんだと思います。シナリオとゲーム部分がどちらも素晴らしかったので,まるで主人公を操作できる映画みたいなゲームでした。
マックスの行動を選んで,それによって展開が変わるというシステムによって,自分の手でこの物語を進めている感覚を感じられて,より話の続きが気になるものになっていたと思います。
それに時間を戻せる能力も,ほとんどいつでも使えてストレスを感じないものでしたし,それをプレイヤーの意思で使わせることで,ストーリーにより入り込みやすくなっていたと思います。
それと,事件の捜査をするのがとても面白かったです。
探偵ごっこのように事件を調べていくマックスとクロエは,とても楽しそうで見ていて飽きませんし,それを見ている自分も紙にメモをしながら事件の話を聞いて,その先を推理するのが楽しかったです。実際はメモなんて取らなくても,以前の伏線を使う場面になればキャラクターたちが言葉にしてくれたりするんですけど,自分でメモしていれば,前の話と繋がった時の嬉しさをより感じられて面白いと思います。
そして,いろんなところで作りが細かいなと思わされました。
マックスの周りにあるもので怪しく見えるほとんどの物は,怪しくなくても調べられますし,それについてマックスが全て心の声を出してコメントしてくれます。それにチラシや新聞記事もしっかり日本語訳が出てきますし,名前が無いキャラクターなどのガヤの声もすべて吹き替えがしてあって,あらゆる場面で丁寧に作られているのを感じさせられました。
マックスの選択肢やクラスメイト達との会話の量も,膨大な多さでどれもこれも伏線に見えました。情報が多いだけに,最初はみんな怪しく見えました。
そしてその膨大な選択の一つ一つがマックスの人生を左右するようなとても大切なものにも感じました。実際に私が選んでいたのは,マックスという一人の人間の5日間の選択として作られたものですから,当然なのかもしれませんけど。
キャラクターについて
マックスとクロエの仲の良さは見ていてとても微笑ましかったですし,彼女たちの周りの人間関係も一筋縄ではいかないものでとても興味を引かれました。私の選択でこれから彼女の周りを,どう良くしていこうかなと最初に思わされました。
それで実際に,彼女の行動を選択した5日間の中で,周りの人間の言動が変わってくるのがまた良かったです。自分がしたことが周りの役に立ったんだと思うと良い気分になりました。
自分がしてきた今までの選択に後悔しているキャラクターばかりで,少し見ていて苦しい場面もありました。やり直したいという気持ちも分かるけれど,巻き戻せる能力がない以上,自分が下した選択の未来しかないから,それが正解だと言い聞かせるしかないのかなと,私は彼らを見て思いました。
でもウォーレンは,その中でもとっても優しくていいやつだなと思いました。映画や科学など特定のことに対する知識がすごいオタク男子ですけど,恋に勉強に趣味に,自分が好きなことに全力で生きているのは,ちょっと憧れるなと思いました。
彼はきっと他の人ほど自分の行動に後悔してないと思います。だから多分,マックスの巻き戻し能力を手に入れても使わない。もしくは,使っても怖くなってすぐに戻すと思います。彼はこのゲームの脇役として100点満点の活躍をしたんじゃないかと思います。
主人公がカメラ好きのオタク女子で人気者の動向を追うストーリーだったので,私は日本映画の『桐島、部活やめるってよ』を思い出しました。あの作品を推理ゲーム化したら,似たような雰囲気になると思います。
まとめ
とても引き込まれるストーリーな上に,システムもそれを引き立たせるように丁寧に作ってあって,最後まで夢中でプレイできました。主人公の一つ一つの選択が重くて印象的でした。特に最後の選択は忘れられません。
自分で展開を決められる映画のようなゲームだったので,映画好きの人でも楽しめると思います。
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