ロッキー・ザ・ファイナル
2006年公開のアメリカ映画。日本では2007年公開。監督・脚本・主演 シルヴェスター・スタローン。原題は『Rocky Balboa』。
(C) 2006 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc., Columbia Pictures Industries Inc., and Revolution Studios Distribution Company, LLC.
ロッキーシリーズの完結編。50代になったロッキーが、再びボクシングへの情熱に目覚めて、現役チャンピオンと対戦する話。亡くなったエイドリアンや息子との関係などを通して、ロッキーが前を向いて生きる様子が描かれる。
あらすじ
ロッキー・バルボアが世界ヘビー級チャンピオンとして活躍していた時代から、長い年月が過ぎた。
50代になり、『エイドリアンズ』というイタリアンレストランを経営しているロッキーは、亡くなったエイドリアンの思い出にすがって毎日を過ごしていた。
そんな時、彼はあるテレビ番組を目にする。そこでは、現世界チャンピオンのメイソン・ディクソンと現役時代のロッキーによる、コンピュータでのバーチャル試合が行われていた。結果はロッキーのKO勝ちだったが、ロッキーを過大評価だと言う声も中にはあった。それを聞いた彼は、内に秘めたボクシングへの情熱の炎を、再び燃やし始めたのだ。
ロッキーはまたプロのライセンスを取得して試合に出ることを決めたが、彼の息子のロバートはそのための協力をしてくれなかった。
ロバートは大企業に勤めるサラリーマンとしてすでに独立していたが、大きすぎるバルボアの名前を重荷に感じており、これ以上ロッキーの影響を受けたくないと考えていたのだ。
それでもロッキーは諦めず、再びリングに上がるために行動を起こした。
そして、今後マイナーなローカルマッチでの復帰戦を考えていたロッキーに、思わぬ誘いが舞い込んだ。それは現チャンピオン、ディクソンとのエキシビションマッチの申し込みだった。
チャンピオンのディクソンは、これまで33戦無敗、スピード、テクニック、パワーも揃った理想的なボクサーだったが、彼に相応しい対戦相手に恵まれなかったために、人気が落ちてきていたのだ。そこで、伝説のチャンピオンであるロッキー・バルボアと闘うことで、注目を集める算段だった。
ロッキーはあまりに突然な話で、少し躊躇した。だが、レストランの従業員であるマリーからの励ましの言葉に背中を押され、ディクソンと闘うことを決意した。
しかし、ロバートは黙っていなかった。ロッキーがチャンピオンとの試合で醜態をさらすことで、息子である自分まで馬鹿にされるのが嫌だったのだ。だが、ロッキーが彼への強い思いを伝えると、ロバートは心を入れ替えて、ロッキーに協力し始めた。
そして様々な人の力を借りて、ロッキーはディクソンとの試合に向けた激しいトレーニングを始めたのだ。
エキシビションマッチ当日
対戦相手のディクソンを含め、会場にいるほとんどの人が、年老いたロッキーと無敗の現役チャンピオンでまともな試合ができるとは思っていなかった。
史上最高に豪華なスパーリングという陰口まで言われていたが、試合開始のゴングが鳴ってしばらくすると、それを見ていた全員がその考えを改めた。不屈の精神を持ったロッキーが、ディクソンを追い込み始めたのだ。
アメリカ中が応援する中、ついに『イタリアの種馬』ロッキー・バルボアの、人生最後のラウンドが始まった。
感想(ネタバレあり)
ロッキーシリーズの完結編を作り直した映画です。私は『ロッキー5』もラスト以外は悪くないと思っていますが、やはりロッキーシリーズ完結編として相応しいのはこちらだと思います。きっとロッキーファンが待っていたのはこちらの展開です。
やっぱり、落ち込んだ後励まされて元気を取り戻し、テーマ曲を流しながらトレーニングをして、最後はリングの上で全力で試合をしてこその、このシリーズだと感じました。いつものパターンですが、体が年をとってもなお、心は変わらず必死に頑張る姿を見ると、自然に応援したくなり、最後は感動できました。
一作目の話もたくさんしてくれて、とても懐かしかったです。
シリーズについて
シリーズの完結編なので、一作目の『ロッキー』を意識したような作りになっているところが好きでした。最後の試合では、勝ち負け以外のものをかけて闘い、どちらもギリギリの状態になって勝敗が決まる展開が、一作目と同じでとても熱くてかっこよかったです。
闘う前に悩んだりしている姿や、子供たちに優しい姿も、最初のロッキーみたいでホッとしました。
年老いたロッキーがボクサーとして最後に上がったリングで、次のチャンプにその生きざまを見せるという展開も、完結編らしくて良かったです。でもすこし寂しくもなりました。
ロッキーがロバートにお説教するシーンも最高でした。自分が上手くいかないのをロッキーのせいにするロバートを、卑怯者と言うのかと思いきや、
「お前は卑怯者なんかじゃないんだ。この俺の息子だ。この先に何があろうと俺はお前を愛し続ける。俺の血が流れてるんだ。かけがえのない宝物だよ。自分を信じて生きろ。でなきゃ人生ではなくなる。」
映画『ロッキー・ザ・ファイナル』のロッキーのセリフ
ですからね。『ロッキー2』で彼が生まれてから、ずっと信じて育ててきたことが分かって感動してしまいました。
その前の
「人生はどんなパンチよりも重くお前を打ちのめす。」
映画『ロッキー・ザ・ファイナル』のロッキーのセリフ
という言葉も、これまでのシリーズで、リング上でもリングの外でも、あらゆる苦痛に耐えてきたロッキーの言葉だと考えると、いろんなことを思い出してとても重く感じました。これはシリーズを観てきた人ほど感動できるシーンだと思います。それを最後のシーンで、ボコボコにされている時に思い出す描写も最高でした。
テーマ曲が流れながらのトレーニングシーンについては、『ロッキー3』が最後だったので、盛り上がると同時に懐かしさもありました。生卵を飲むのに至っては、おそらく一作目でしかやっていなかったので、そういえばあったなという感じで見ていました。
気になった点について
ロッキーシリーズが好きな私には、満足の内容だったのですが、少し上手くいきすぎかなと思ってしまうところがいくつかありました。
今回はエイドリアンを亡くして、過去にすがりながら生きていたロッキーが、いろいろあって前を向いて進み始める話なので、当然今まで彼を励ましていたエイドリアンは出てこないんです。そこで、マリーが登場してロッキーを励ますわけですが、その言い方が長年に渡って彼を近くで見てきたような感じで、少しだけ気になりました。
エイドリアンの代わりの役割ですから、ロッキーの心に深く刺さる言い方をしなければならなかったのかもしれません。ボクサーとしてのロッキーをずっと見てきたファンの視点で言っているのだと、私は個人的に解釈して見ていました。
最初からのパターンのことを言うのはとても野暮だと思うのですが、今回のロッキーは年の割に強すぎじゃないかと感じました。
それでも、最後は盛り上がって見れたので、全部許せますけどね。やはり終わりが大事なのだと改めて思いました。
まとめ
ロッキーシリーズの完結編としては、個人的には文句なしの映画でした。一作目と似た作りでありながら、最後としてもいい終わり方でした。『ロッキー5』もそれほど悪くはないと思いますが、やはり最後は大事です。
ロッキーシリーズを観てきた人ほど感動できるものになってるなと感じました。これまでを観ていないならば、観てからもう一度これを観ると、もっと感動できると思います。『ロッキー5』は飛ばしても問題ないかもしれません。
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