クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲
2001年公開の日本のアニメーション映画。『クレヨンしんちゃん』劇場映画シリーズ第9作。監督・脚本 原恵一。演出 水島努。
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2001
春日部で20世紀の思い出を体験できる『20世紀博』が開催され、その懐かしい思いから大人たちが次々と子どもの頃の気持ちに戻っていく中、しんのすけたちがこれからの21世紀を生きるために戦っていく話。
あらすじ
日本一お騒がせな5歳児、野原しんのすけたちが住む春日部に『20世紀博』というテーマパークが開催された。
それは20世紀にあったあらゆるものを味わえる施設であり、そこに懐かしい匂いを感じた大人たちは、まるで子どものように夢中になってそこに通っていたのだ。
しんのすけの両親のひろしやみさえも例外ではなく、彼らは自分の子どもをテーマパーク内の施設に預けて、大人だけで20世紀博を楽しんでいた。そして気づいた時には、春日部中のほとんどの大人が20世紀博の影響を受けて、子供の頃の懐かしいものにハマっていたのだった。
そんな時、テレビを通して20世紀博から大人たちへのメッセージが届けられた。そしてそれを聞いた途端、ひろしとみさえは突然取り憑かれたように子供のような言動をし始めたのだ。しんのすけたちのご飯は作らず、朝ご飯にはお菓子を食べて、いつもの仕事に行く気配もなかった。
呆れたしんのすけは妹のひまわりを連れて自分で幼稚園へ行ったが、幼稚園の先生もその道中にいた大人も、みんな子どものように自由に遊んでいて、誰一人として普段通りの大人としての生活をしていなかったのだ。
そして20世紀博からの迎えの車が来ると、大人たちはみんな子どもを街に残したまま、20世紀博の会場へと行ってしまった。
その後、しんのすけは風間くんたちを集めて、かすかべ防衛隊のメンバーと共に両親に会うために20世紀博に乗り込んだ。
そして昔の匂いによって子供の心に戻ってしまったひろしとみさえに、今の匂いを嗅がせることで大人としての自分を思い出させることができたのだ。
しかし、しんのすけたちは20世紀博の騒動を首謀していたグループ『イエスタディ・ワンスモア』のリーダーのケンに出会い、彼から恐るべき企みを聞かされる。
それは、ひろしたちを子供に変えてしまった懐かしい匂いを日本中に広げ、この国を大人だけが楽しめるオトナ帝国にしてしまうという計画だった。
21世紀の未来を守りたいしんのすけと、しんのすけたちに明るい未来を歩ませたいひろしやみさえは、何としても昔の匂いの拡散を止めるために走り始めたのだが…。
感想(ネタバレあり)
過去の20世紀を生きようとしていた大人たちに対して、21世紀の未来を生きるためにボロボロになっていたしんのすけがとても健気で、その姿に感動して何度も泣かされました。
特に最後のタワーの展望台で、しんのすけが未来についてチャコに語るシーンがとても好きです。
「オラ、父ちゃんと母ちゃんやひまわりやシロともっと一緒に居たいから。喧嘩したり頭にきたりしても一緒がいいから。あと、オラ大人になりたいから。大人になってお姉さんみたいな綺麗なお姉さんといっぱいお付き合いしたいから!」
映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」のしんのすけのセリフ
現実で嫌なことがあっても今の生活を一生懸命楽しんで、未来に向けて生きようとしているしんのすけの純粋なその言葉が、私の心にとても響きました。
そしてそんな子が楽しみに思っている未来を、過去を懐かしむ大人が奪うようなことは、本当にズルくてやっちゃいけない行為だなと改めて感じました。
あんなに大人に憧れてるところを見せられたら、未来ある子供にはもっといいものを与えられるように努力すべきだなと思いました。
ひろしについて
中盤でひろしが父親としての自分を思い出すシーンもとても良かったです。
小さい頃から辛いことや嬉しいことなどのいろんな経験をして今の幸せな家庭を築いていることを見せられると、しんのすけにもそれと同じくらい素敵なことがこれから起きていくのかなと思って、しんのすけの未来がますます大事なものに感じました。
そしてひろしのそれまでの記憶の中では、楽しそうな思い出とそうでない思い出がどちらもあって、最後にはしんのすけやひまわりやみさえとの幸せそうな日常の描写で自分を思い出すのもとても良かったです。
ひろしは20世紀の匂いに惑わされて少年時代に戻っていて、その頃の記憶ももちろん幸せそうではありました。ですが、その後のみさえと出会った頃のことや、しんのすけが生まれた時、今の家族と過ごしている時の記憶なども、それに負けないくらい幸せそうでした。それを見ているとこれからの大人としての未来もそんなに悪いものではないのかなと思わされましたし、しんのすけの未来もそんな風に幸せになっていくのだろうとも思いました。
いろんなことを経験してきたひろしとみさえが、しんのすけに未来を歩ませるため、体を張って先を行かせる終盤の展開もとても良くて泣かされました。
また、ひろしが夕陽町を車で走ってる時に懐かしくて泣いてたのも印象的でした。ひろしもその時代のことが好きだけど、しんのすけたちと一緒に大人として生きる未来を選ぼうと抵抗してる感じがしてまた感動してしまいました。過去と未来のどちらも良いものとして描いているのも好きな点の一つです。
20世紀の少年時代は確かに良かった。しかし、これから先の大人としての未来もまた違った形の良いものになるかもしれないから、楽しいことばかりじゃないけど頑張って生きよう。そんな風にどの時代もプラスに思えて、前向きな感情にさせられるような良い映画だったとしみじみ感じました。20世紀が好きで敵キャラなはずのケンでさえ、21世紀を本気で生きようとしてるしんのすけを見て、優しくなる展開は熱かったです。
私もしんのすけたちのように、もう少し未来について前向きに考えてみようかなと思わされました。時代の変わり目に見るにはぴったりの映画でした。
その他について
サトーココノカドーに行く前のスナックカスカビアンで、かすかべ防衛隊が大人の真似をしていたシーンも改めて観ると良いシーンでした。
このままみんながいろんなことを経験しながら大きくなったら、本当のお酒でこんな悪ふざけすることもあるのかなと思うと、とってもかけがえがなくて可愛いシーンに見えます。
改めて見ると、テンポが凄まじく良い映画でした。特に中盤のしんのすけが20世紀博に着いてバスを抜け出してからは、すぐひろしのところに行ってて、すぐに臭いにおいを嗅がせてて、その後ケンとちょっと話したらもうタワーを登ろうとしてるところは、まったく無駄がなかったです。
まとめ
昔の20世紀で生きようとしていた大人たちに対して、未来を楽しみに生きていたしんのすけの姿にとても感動させられました。
過去の楽しかった記憶の中で生きるのは楽かもしれませんが、新しい未来はもっと幸せになるかもしれないから頑張ってみようと思わされる良い映画でした。
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