映画 あたしンち
2003年公開の日本のアニメーション映画。テレビアニメ『あたしンち』の劇場版第一作。
テレビアニメ『あたしンち』の劇場版。母と娘の体が入れ替わり、元に戻るために奮闘しながら、お互いのことを理解して仲を深めていく話。
あらすじ
東京に住む一般家庭のタチバナ家。主婦の母とサラリーマンの父、そして娘のみかんと、息子のユズヒコ、四人家族の彼らの話。
みかんと母は、ピアスの穴を開けてもいいかどうかで、その日もいつものように言い争いをしていた。だがその後、彼ら家族のそんな日常をひっくり返すような大事件が起きたのだ。
大雨と雷が落ちる天気の中で、買い物に行った母とみかんが歩道橋の上で足を滑らせ、お互いの頭をぶつけてしまった。そしてその結果、二人の意識が相手の体に移り、入れ替わってしまったのだ。
それから彼女たちは、お互いの体と生活に馴染むために、苦労しながら暮らし始めた。母はみかんとして高校に通い、みかんは母として家で家事を始めたのだ。
二人が入れ替わりの生活に慣れてきたころ、新たな問題があることに気づいた。それはみかんの高校の修学旅行だった。みかんがとても楽しみにしていた行事であったため、母も彼女を家に置いて行くということはできなかったのだ。
そのため、二人はみかんの友達のしみちゃんに協力してもらい、母娘一緒に修学旅行に行くことにしたのだ。
その後、二人はお互いの大事なイベントを共にすることによって、相手の本当の気持ちに気づいていく。
それと同時に、タチバナ家は全員一丸となって、母とみかんを元に戻す計画を立てていくのだが…。
感想(ネタバレあり)
テレビシリーズでは日常系のギャグアニメですが、この劇場版ではお母さんとみかんの体が入れ替わるという非日常の中で、テレビでは見られないようなタチバナ家の良いところが見られました。
面白いところもありましたが、入れ替わったことでのみかんやお母さんの悩みを、ギャグではなくまじめに描いていたところがとても印象的でした。高校生のみかんはもちろんですが、普段はガサツに見えるお母さんにも、娘と同じように大事に思えるものがあって、二人がお互いにそれを理解して、協力して楽しもうとしていく姿がとても優しくて好きでした。
特にみかんが、入れ替わった生活になったことでお母さんの苦労を知って、お母さんに対してすごく優しくなるところが好きでした。終盤のシーンの、みかんがお母さん目線で自分の行動を振り返って、
「そんなにいい子じゃないんじゃないかな。親の気持ちなんか何にも考えてない。」
「映画 あたしンち」のお母さんの体に入ったみかんのセリフ
と言う場面は、いい子過ぎるみかんの成長を感じて感動しました。その一連の会話をこっそり聞いて泣いていたお母さんもとても良かったです。
子供のみかんと親のお母さん、どちらの気持ちもまじめに丁寧に描かれていて、共感できる対象の幅が広いので、本当に子供から大人まで楽しめる映画になっていたと思います。
日常のテレビシリーズでは描かれないようなタチバナ家の強い絆が見られましたし、普段の雰囲気も蔑ろにしているわけではなかったので、テレビアニメの表現を広げた劇場版として、とても良い映画だと感じました。
タチバナ家のキャラクターについて
お母さんとお父さんについては、漫画やテレビでは子供たちの視点で語られることが多かった気がするので、私の中ではとても変な人というイメージの方が強かったです。ですが、第三者視点で描かれている劇場版では、普通にとても良いお母さんとお父さんでした。
お母さんは最初から、高校生のみかんの生活を崩さないように一生懸命頑張っていましたし、最後のシーンで、
「お母さんはお父さんに出会えて、みかんを産めて、ユズヒコを産めて、それで満足。」
「映画 あたしンち」のみかんの体に入ったお母さんのセリフ
と言って、雷に打たれたみかんと入れ替わろうとしたときには、その家族への思いやりに感動しました。その時に、お母さんの気持ちを察して、その様子を屋上から無言で見つめていたお父さんもかっこよかったです。
お父さんは無口でマイペースな感じがありましたが、みかんとお母さんが入れ替わって、少し戸惑っている家族に
「しばらくちょっと不便かも知らんが、誰かが欠けたわけでもなし。見た目は変わらん四人家族だ。」
「映画 あたしンち」のお父さんセリフ
とみんなをまとめた時には、普段は見られないような頼りになる感じがありました。その他のシーンでも、無言で行う行動の中に優しさを感じる場面がいくつもあって良かったです。
ユズヒコも普段はクールな感じですが、みかんたちを助けるためにいろいろ調べて頑張っているところや、最後の場面で『姉ちゃん!』と叫んでみかんを心配するところは、とても一生懸命で心を打たれました。そのギャップがとても良かったです。
その他の細かな点について
上に書いた以外にも、いろんなキャラクターの優しさであふれているような映画だったので、私は好きになったシーンがたくさんありました。
一番は、京都を観光していたみかんとお母さんが、相手の体のために長寿の水と美人の水を飲んであげるところです。自分自身の体であればそのまま飲んでしまいそうなところですが、体が入れ替わっているので、『お母さんのために飲んであげるね』『じゃあ私はみかんのために』となるところが、とても微笑ましかったです。劇場版ならではのやり取りなので、すごく良かったです。
みかんの友達のしみちゃんも、信じられないくらい優しかったです。お母さんの見た目のみかんが言うことを、ちゃんと信じて『大変だったね』と優しい声をかけていたところや、修学旅行中には当たり前のように母娘まとめて面倒を見ていたところが、とても優しくて驚きました。たらこ唇の女神かと思いました。
みかんの好きな人の岩木くんも、テレビシリーズ以上にかっこいい男子でした。中身がみかんのお母さんは、岩木くんにとってはただのおデブのおばさんなはずなのに、とても親切に接していて好感を持てました。みかんが惚れる男の子なだけあるなという感じでした。
まとめ
テレビや漫画では見られないような状況で、普段は出さないキャラクターの良いところや成長が描かれていました。テレビからの劇場版として良い映画になっていたと思います。タチバナ家はもちろんですが、みかんの友達やお母さんの友達までみんな優しくて温かい物語でした。
母娘の気持ちが丁寧に描かれているので、大人から子供まで楽しめる話になっていると思います。
半魚人みたいなお母さんの見た目からみかんの可愛い声が出てくるのが、私は全編を通して面白かったです。マッチョオーレ彗星に感謝です。
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