テルマエ・ロマエ
2012年公開の日本映画。出演 阿部寛、上戸彩。監督 武内英樹。
(C) 2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会
古代ローマの浴場設計技師の男が、21世紀の日本にタイムスリップして、その文化を取り入れながら、古代ローマの浴場事情を改善していく話。
あらすじ
紀元128年。
ローマ帝国が戦争や謀略を繰り返しながら他民族を制圧することで、世界最大の帝国として繁栄を極めていた時代。
民衆は『テルマエ』と呼ばれる浴場を愛し、皇帝は巨大なテルマエを建設することで民衆の支持を集めていた。
そんなローマに住むテルマエ技師のルシウス・モデストゥスは、自分が設計した古き良きテルマエが評価してもらえないことに頭を抱えていた。民衆の多くは、くつろげる空間であるはずのテルマエに、派手なことばかりを期待していたのだ。
そんな状況を打破できるような斬新な発想が浮かばないかと、ルシウスが公衆浴場の湯船の中で考え込んでいると、彼は浴槽の中に空いていた穴に吸い込まれて溺れてしまった。
そして必死に水面に上がると、彼がいたのは21世紀の日本の銭湯だった。
古代ローマ人のルシウスにとって、そこは初めて見るものばかりだった。衣服を入れるかごや、フルーツ牛乳、イベントのポスターまで、彼は目に入る物すべてに驚き、それを観察していった。
そこにいた平たい顔の人間が使っているテルマエは、豪華さが重視されるローマのテルマエよりも、よりシンプルで機能的なものだったのだ。
ルシウスがローマ文明の敗北を悟って悔し涙を流していると、気づけば彼は溺れる前の古代ローマのテルマエに戻って来ていた。
その数か月後。
ルシウスが未来の技術をまねて作ったテルマエは、これまでになかった斬新なものとして、古代ローマ人に大人気のテルマエになった。
その後、彼は古代ローマのテルマエの問題点などについて考えているたびに溺れて、何度も未来の日本へタイムスリップしてしまう。
そして、未来の家庭の風呂や展示場のトイレなどを見て、それを古代ローマのテルマエに取り入れているうちに、彼はローマ帝国皇帝のハドリアヌスに信頼されるほどの地位にまで上り詰めたのだ。
その一方で、紀元2012年でも、山越真実という女性がその現状に頭を抱えていた。彼女は漫画家を目指していたが、どうしてもインパクトのある主人公が描けなかったため、漫画家の先生に諦めろと言われていたのだ。
しかし彼女には、インパクトのある主人公のモデルにしたい人物がいた。
行きつけの銭湯、漫画家の先生の仕事場のお風呂、働いていた展示場のお風呂など、最近彼女がいる場所に突然姿を現しては消えていった、名前も知らない筋肉隆々の外国人である。
真実は実家の温泉宿で、その男性をモデルにした主人公の漫画を描きながら、次に彼に出くわした時にちゃんと話せるよう、ラテン語の勉強をしていた。
そしてついに、真実がいる温泉宿に古代ローマからルシウスがやって来た。彼女は猛勉強したラテン語で彼と話すことができたが、その後ルシウスに巻き込まれて、自分も古代ローマにタイムスリップしてしまった。
真実はしばらく憧れのルシウスと古代ローマで過ごしたが、すぐに自分が来たせいで歴史が大きく変わり始めていることに気づく。
ルシウスと真実は、協力して新しいテルマエを作ることで、歴史を修正しようとするのだが…。
感想(ネタバレあり)
古代ローマ人のルシウスがとても真面目に現代の文化を観察して、毎回驚く姿がいちいち面白かったです。
ルシウスが少しもふざけていなくて、すっごく真面目にテルマエのことを考えているからこそ、現代では当たり前になっていることとのズレがはっきりと見えて面白かったです。
原理がよく分からないものは何でも奴隷がやっている理論は、再現する奴隷が大変そうでしたけど、バカバカしくてすごく好きです。
ルシウスについて
ルシウスを演じていた阿部寛さんは、陽に当たっている時の顔の影の付き方が、本当に北斗の拳のキャラクターみたいに濃くて驚きました。本当のヨーロッパ人と思われる周りのエキストラの人よりも、ずっと濃いように感じました。
阿部さんの低い声も良かったと思います。迫力がある低い声で、現代の価値観では的外れに思うことを言うあべこべ感は、聞いていて笑ってしまいました。
阿部さんが驚く演技は十分すぎるくらいに見られてどれも面白かったですが、私はトイレの便座が自動で上がった時の『衝撃』としか表せられないような顔が好きでした。
さすがに古代ローマ人のルシウスに共感するポイントはあまりありませんでしたが、そのトイレの場面だけは、驚く気持ちがよく分かりました。自動で便座が上がるトイレを最初に見た時は、自分も同じようなリアクションをしていたと思います。
そして最後の真実との別れのシーンのルシウスはとてもかっこよく見えました。
真面目な顔でテルマエ作りばかりやっていて、ほとんど優しい言葉をかけたりしなかったルシウスが、最後に笑顔で言った真実への言葉がとても良かったです。それまで全然見せなかった面だからこそ響くものがありました。中盤までのバカバカしい流れからは、こんなドキッとするような展開は全く予想できませんでした。
真実について
上戸彩さんが演じていた真実さんは、原作には登場しないキャラクターだそうなので、必要ないという意見もあったそうですが、原作を読んでいない私は普通に必要なキャラクターだと思いました。
真実たちがローマに来るまではルシウスが未来に行って驚くパターンだけだったのが、真実たちが来てからは、一緒にお風呂を作って、直接ルシウスが元気づけられるという違う展開が見られて楽しめました。
真実がいなければ、ルシウスの最後の笑顔と優しい言葉が無かったかと思うと、それだけでも彼女がいた意味があると思います。
ルシウスも真実も、二人ともすごく真剣なのが私にとっては良かったです。
コメディなので多少の強引な設定もありましたけれど、ルシウスはテルマエ作り、真実はルシウスのことを知るための勉強を、真剣にやっていたのが印象的でした。
特に、日本でルシウスに会いたがっていて、実際に会えた時の上戸彩さんは本当に嬉しそうな表情をしていて可愛かったです。
私にとっては主人公の二人がどちらも努力家で、嫌な感じがせず好きになれたので、とても見やすくて楽しい映画でした。
真実のことを好きになったのは、私がキャラクターに感情移入したいタイプだからかもしれません。古代ローマ人のルシウスよりは、ムキムキの古代ローマ人のことが気になる現代人の気持ちの方が、まだ分かる気がしました。
まとめ
古代ローマ目線の真面目なトーンで現代文化を観察して、毎回驚くルシウスの反応がとても面白かったです。阿部寛さんは本当に古代ローマ人みたいでかっこよかったですし、上戸彩さんも可愛かったです。
真実がいらないという意見もあったそうですが、私は目の前のことを真剣に取り組む二人のことが好きになれたので、必要だったと思いました。
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