容疑者Xの献身
2008年公開の日本映画。出演 福山雅治、堤真一、松雪泰子。監督 西谷弘。原作 東野圭吾「容疑者Xの献身」。
(C)2008 フジテレビジョン/アミューズ/S・D・P/FNS27社
TVドラマ「ガリレオ」の劇場版。天才物理学者のガリレオこと湯川学が、大学の同期の天才数学者が隠蔽しようとする殺人事件の真相を明らかにしていく話。
あらすじ
ある日、顔が潰され指紋と衣服が焼かれて放置されていた身元不明の遺体が発見された。
担当になった貝塚北署の女性刑事、内海薫らは、遺体の所持品と乗り捨てられていた盗難自転車などの証拠により、被害者を富樫慎二という名の男性と断定した。
事件の最も有力な容疑者として名前が挙がったのは、冨樫の別れた妻である花岡靖子。中学生の娘がおり、弁当屋を経営している女性だった。
内海たちはすぐに花岡の家に行き彼女から事件発生時の話を聞いたが、その場で彼女が犯人だと決めつけることは不可能だった。花岡靖子にはその日、完璧すぎるアリバイがあったのだ。
警察はその出来過ぎなアリバイを聞いて怪しんだ。だが、彼らが彼女のことを調べれば調べるほど、逆にその完璧さを示すような証拠が次々に出てきたのだ。
一人の人間が別々の場所で同時に存在したとしか考えられない。
そんなあり得ないような状況を前にした内海は、以前から何度も捜査協力を頼み共に事件を解決してきた天才物理学者、通称『ガリレオ』の湯川学に再び協力を依頼した。
アリバイと科学に何も関係が無いことを理由に湯川は捜査協力を断っていたが、花岡の家の隣に石神哲哉という名の数学教師が住んでいることが分かると、彼は突然興味を示し始めた。石神は湯川の大学の同期で、湯川が天才と認めるほどの数学の才能の持ち主だったのだ。
湯川は石神と話し、彼の言動の中のある変化を感じ取ったことにより、石神が事件に関わっていることに気づく。
彼は石神の考えていた計画とトリックの全貌を明らかにしていくのだが、事件はその後、誰もが予想外の方向へ向かっていくのだった…。
感想(ネタバレあり)
石神の緻密で巧妙で意外な犯罪隠蔽の手段にとにかく驚かされました。私が予想していたよりもずっと悪いことをしていましたが、その計画はとても良くできていて、その完成度には感動すらさせられました。
最初から観直すと、序盤からちゃんと石神の本音や本当のトリックに繋がるような描写も伏線として描かれていたので、それを楽しみながら何度でも観られる話だと思います。
最後は複雑で悲しい展開もありましたが、湯川先生と石神の天才同士の頭脳バトルという意味で、熱く楽しめる部分もあって良かったです。
石神について
石神が立てていた思い込みの盲点を突く計画には最後まですっかり騙されました。計画的なアリバイと遺体のトリックはもちろんですが、ストーカー行為などの石神の全ての行動が結末に繋がるためにあったのを理解した時はとても驚きました。
石神が殺人事件を隠蔽しようとしたのは、捕まって当然の悪いことだと思いました。しかしどれだけ自分が悪く思われても、愛する人に幸せになってもらうためだけにあれだけの計画を実行していたのだと思うと、その献身的な姿勢に感動させられるところもあって複雑な思いでした。
最後に湯川先生が事実を暴くことでそれが無駄になってしまうのは切なかったです。
やはり愛は人を変えるのだというのを改めて感じました。湯川先生のように合理的に行動する人であれば、あそこまでして花岡親子を助けることはしないだろうと思います。
そんなにも彼女たちのことを大事に思っていた愛は感動的でしたが、巻き込まれたホームレスの人が可哀想なので、私はあまり良いことでもないなと思ってしまいました。
湯川先生が
「残念だ。その素晴らしい頭脳をこんなことに使わなければならなかったとは。」
映画「容疑者Xの献身」の湯川先生のセリフ
と最後に言っていましたが、私はどちらかと言えばその意見の方が共感できました。
湯川先生について
湯川先生と石神の、天才同士でお互いを認め合っている関係が好きでした。天才という設定の二人が、相手が見ていないところでお互いを頭が良いと褒め合っていたところは、頂上決戦みたいな感じがしてワクワクしました。
二人のシーンの中では、隣人を殺人犯にしないために起こした石神の行動を、隣同士が同じ色になってはいけない四色問題に関連づけて、別々の場所で同時に考えていたところも、ロマンチックで良かったです。
大切な人のためにいろんなことを犠牲にしようとした石神も良かったですが、私は常に真実を求めて冷静に判断していた湯川先生の方が好きでした。顔も堤真一さんより福山雅治さんの方が私はかっこいいと思います。
しかし、この事件では冷静で論理的な湯川先生がいたから解決できましたが、本当に頭が良い人が本気で一つの事件を隠そうと思えば、こんな風に裏技的な方法で隠せるのかもと思うと少し怖くもなりました。湯川先生が石神のようになってしまったら、誰にも止められないと思います。
現在では監視カメラの映像などからもう少し関係者がはっきりするのでしょうけれど、これからは自分でも他人の行動をしっかり見ていられるように、冷静でいたいと思わされました。
その他について
主人公が警察以外の推理ものでは、警察が頼りにならなくなるものが多いイメージが私の中ではありますが、この作品では割と活躍していたのも良かったです。
トリックについては石神が頭良すぎたので湯川先生に頼りきりになっていましたが、花岡親子のできすぎたアリバイを疑ったり、湯川先生を信じて取り調べをさせていた草薙刑事がかっこよかったです。北村一輝さんの濃い顔と合わさって、本物の刑事みたいに見えました。辛い真実を前にした先生を支えるような内海刑事も優しくて良かったです。
その二人の警察官が、事件の真相を解明させるためにちゃんと動いていた感じが好きでした。
まとめ
石神が立てていたとても緻密な計画に、私はまんまと騙されて驚かされました。しかし、よく見ると序盤から伏線は描かれていたので、何度観ても楽しめると思います。
切ない展開もありましたが、石神と湯川先生の天才同士の頭脳バトルの部分は、天才ゆえの熱い友情も感じられました。
大切なもののために全てを投げ出そうとしていた石神も感動的で良かったですが、私は冷静でハンサムな湯川先生の方が好きでした。
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